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help RSS 現代日本における“女性のアイデンティティの錯綜”と“仕事・結婚・消費の価値認識”:1

<<   作成日時 : 2010/09/03 22:49   >>

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現代日本では『肉食女子・草食男子』などのキーワードで、女性のバイタリティの高さと比較した男性の元気の無さが強調されたりするが、戦争のない平和で安定した時代には女性原理が優位になりやすい。自由で民主的な近代社会が成熟してくると、高等教育を受けた大多数の人がサラリーマンとして企業・組織に雇用されるようになり、市場に供給される商品やサービスが等比級数的に増大して『消費社会』が到来する。

成熟した近代社会と市場経済では、『戦争・身分制度・暴力(一方向的な支配)』といった古代社会から続いた男性原理的な秩序形成の働きが倫理的に禁圧されることになり、『平和・平等主義・魅力(双方向的なコミュニケーション)』といった女性原理との親和性を持つ理念の影響力が極めて強くなってくる。

競争による勝ち負けや個人の立場の格差というものは現代社会にもあるが、それは『軍事・暴力による競争』ではなくて、『経済行動・学力・魅力(コミュニケーション)による競争』がメインとなっている。

戦後間もなくまで残っていた家庭で父親が家長として力を持つ『家父長制』の慣習も衰退し、家庭(夫・子)への献身や夫唱婦随を前提とした『良妻賢母』のロールモデルも女性の社会進出と共に通用しないケースが増えてきた。

男女平等主義が普及して当たり前になっていく中で、『女性としての役割・男性としての役割』を固定的な規範性を持つものとして考えることが難しくなり、慣習的な男性らしさと女性らしさを懐疑して『中性的な個人』を仮定するジェンダーフリーのような思想も生まれてきた。

社会的・経済的・慣習的な要因によって規定される性差のことを『ジェンダー(gender)』というが、ジェンダーは後天的な経験や学習によって形成されていくので修正が可能だとされている。その一方で、『子どもを産む女性の身体・女性ホルモン』『筋力の強い男性の身体・男性ホルモン』といった生物学的な性差であるセックスによって、男らしさや女らしさが規定される部分もあるので、ジェンダーを全て中性化できるとするジェンダーフリーには一定の限界がある。

また、異性としての魅力や家庭生活における男女(夫婦・父母)の相互補完性などもあるので、男女平等を肯定する人でも『ジェンダーのない社会・自意識や仕草が中性化された個人』まで望むという人は少数派ではないかと思う。

ジェンダーフリーといった極端なジェンダー否定にまでいかなくても、『女性でも自立して働いたほうが良い・男性でも育児や家事を手伝ったほうが良い』とする価値観は急速に拡大していて、“イクメン(育児を楽しくする家庭的な夫・父)”“カツマー(勝間和代のような職業キャリアの上昇を目指す女性)”といった言葉も生まれている。

しかし、こういった役割分担も突き詰めれば、その夫婦間(男女間)が自由な話し合いや同意を通して決めるというのが前提なので、中には家事育児は私がするからあなたは給料をしっかり稼ぐことだけを頑張って欲しいという女性もいるだろうし、家事育児はそこそこでいいからお前も正社員で働いて稼いで欲しいという男性もいるだろう。

男女どちらもが遣り甲斐のある仕事を見つけて意欲的に働き、家事育児も気持ちよく分担して行えるというのが現代社会の理想的な家庭生活のプロトタイプかもしれないが、実際には『労働(仕事)・結婚・家庭(育児)』に対してどのような価値観(常識感覚)を持っているのかには個人差が大きい。そのため、男女がそれぞれ相手に求める行動や役割の条件が食い違うことも多くなり、経済生活に深入りしない恋愛段階ではともかく、結婚となるとミスマッチが増えてくる。

こういった結婚相手に求める要素や役割が合致しないミスマッチは『未婚化・晩婚化の要因』となっているが、その背景にあるのは『雇用構造・給与水準の変化』『規範的なジェンダーの衰退』だろう。男性の平均給与が低下して女性の社会進出が増加し、安定した正規雇用が減ってフリーター・派遣といった非正規雇用が増えたというのが『社会状況・雇用構造の変化』であり、ジェンダーの相対化と相まって妻子を養える男性の絶対数も減っていった。










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東京大学出版会
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