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help RSS “働かない・働けない子ども”に親はどう向き合い、どのようなメッセージを伝えるべきか?:就業困難の要因

<<   作成日時 : 2010/04/14 05:31   >>

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12日の深夜、北海道北見市で23歳の青年が、両親を刃物で殺傷する事件が起こった。両親を殺傷した理由について青年は『日ごろから親から働けと言われ、うっぷんがたまっていた』と供述しており、現代社会における『ニート・働かない若者(働けない若者)の問題』が事件になってしまった事例であるが、この種の『働いていない子の就労を巡る親子間の殺傷事件』は子の年齢を問わず時折発生している。

学生時代を終えた子どもが働いていない状況にあると、親はショックを受けたり怠惰に見える生活状況に怒ったりするものだが、『子どもとの信頼関係・コミュニケーションの可能性』が断絶しているような状態で、頭ごなしに怒鳴ったりとにかく働かせようとして闇雲にプレッシャーを掛けてしまうと、逆効果であると同時に行動化(事件化)の危険が高まる。この記事では、親子関係の心理と子の就労問題・労働意欲をテーマにするため、20歳以上の子であっても“親”との関係を分かりやすくするため“子ども”という表記を用いることにする。

子が親を傷つけたり、親が子を傷つけたりする事件は、何の前触れも予兆もなく突然発生するものではなく、その前段階にほぼ必ず『親子間の緊張関係の高まり・コミュニケーションが不可能な相互拒絶』が見られる。子どもがニートになってしまったり働く意志・行動を見せなくなってしまったりした時に、親が子にどのような対応を取れば良いのかは、全ての親子に共通する画一的な方法論はなく、『働かなくなる前の親子関係のあり方や信頼性・対話の可能性・子のパーソナリティや知的水準』によって対応の取り方はかなり変わってくるのではないかと思う。

子どもが働かなくなる、働けなくなる理由はさまざまだが、一般的な就業困難のリスクファクターには以下のような要素を挙げることができるだろう。

1.高校・大学の中退によるモラトリアムの遷延(学校から就業へのキャリア移行の断絶)

2.不登校・学校不適応による社会状況や対人関係への不安(自信の無さ)の遷延

3.本人のパーソナリティ(性格構造)におけるストレス耐性や社会適応力の低さ・完全主義を生む自尊心の高さなどの要因

4.職業・労働と自己アイデンティティとの相関に対する価値観の持ち方や社会認識の硬直化

5.人間関係の貧困化や社会環境からの離脱による孤立感・焦燥感。

6.長期のひきこもり及びうつ病・社交不安障害など各種の精神障害。


北海道で事件を起こした23歳の青年も大学中退後に仕事をしていなかったようだが、学校を中退すると卒業した人と比べれば、統計的には『就業困難になるリスク・フリーター化する確率』が格段に高まるとされている。その理由の第一は、『新卒採用の機会』を得られないことや中退者に対する『採用面接での評価の厳しさ』であるが、現在はやる気のある新卒者でも就職が難しくなっていることから分かるように、中途半端な目的意識で望む中退者が、正社員として就職するためのハードルはかなり高くなっている。

学校を中退していても、特定分野におけるオーバースペックな人材や大学の勉強のレベルが低くて辞めたというような潜在能力が高い人は確かにいるが、一般的には中退した時点では企業で即戦力として採用されるような資格・スキル・実務経験を持っている人は少ないので、その多くはフリーターやモラトリアムな求職活動に流れやすくなるだろう。中退後に何もしないままに時間が流れれば流れるほど、企業に採用されるためのハードルは高くなっていき、中退の理由や履歴の空白に対する質問に圧迫感を感じる人も出てくるので、次第に正規雇用の採用面接からは足が遠のきやすくなる問題がある。

もう一つの要因としては、途中で学校を辞めると学生時代の友人関係から切れやすくなるので(あるいは初めから学校適応が良くなかったので)、就職活動のモチベーションを高めにくくなり、新卒採用のように学生と社会人の区切りの意識を持ちにくい(時間感覚がぼんやりして曖昧になる)ことも影響するだろう。

常識的には、出席義務や拘束時間・上下関係の制約が弱い『大学』にも適応しにくかったということは、大学よりも出社義務・拘束時間・上司との関係の制約が強くなりやすい『企業』にもそれほど適応能力が高くないと推測することができる。『学校で勉強するのは苦痛だがお金を稼げる仕事ならば苦にならない』という風に考えられる人でない限りは、中退した人がモラトリアムに陥ったりニートになったりするリスクは比較的高いように思う。

真面目な人であればあるほど、『学校を中退したことで正規のキャリアからは外れてしまった・きちんとした企業の社員にはもう就職できないかもしれない(ずっとバイトや派遣で単純作業しかできないのではないか)』という挫折感・自己嫌悪が強くなりやすい。

そういった挫折感をどう自分なりに消化して次の『新たな目的』に意識を転換できるかというのが、就業困難を解決するプロセスの一歩になってくるので、頭ごなしに『とにかく何でもいいから働け・働いていないお前はダメな奴だ』と叱責する行為が、子どもの自己否定感を強めて逆に『働こうとする意欲・目的を再設定するプロセス』に水を差す可能性もある。

自分で自分のことを『このままではダメだ・どういった職業ならばきちんと勤まるのだろうか』と認識して悩んでいるところに、親や周囲から『働けないお前はダメだ・どんな仕事でも選ばずにやれ』と追い討ちを掛けられると、『切迫感・焦燥感・自己嫌悪』が急速に高まる割には、実際の職業選択や仕事のための準備には意識が向かいにくくなる。

働いていない子の多くは、初めから社会的・経済的に劣等コンプレックスを強めている状況にあるので、そこに親が『否定的・攻撃的メッセージ』を毎日のように加えてしまうと、子は自分自身の存在意義や居場所を更に見失ってどうすれば良いのか分からなくなり、『仕事をすること・働くための準備』よりも『親との敵対=自己防衛』にばかり意識が囚われる問題が出てきやすい。










■関連URI
人間はどうして働くのか?1:近代産業社会における労働・定職と道徳規範(正しい生き方)との結合

青年期のモラトリアムや中年期のアイデンティティの危機と関連するアパシー・シンドローム(選択的退却)

少子化時代の母親の育児ストレス(育児不安)と社会成員の子育てに対する認識・協力の多様化

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