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誰でも若い頃には『何のために働くのか?』という仕事についての疑問を抱き、『お金を稼ぐこと以外の動機づけ』を探すものだと思う。生きていくためには、仕事を通して『生活の糧』となるお金を稼がなければならないが、どうせならば他人(顧客)や社会の役に立ったり誰かに感謝されたりする仕事をしながら収入を得たいという人も多いだろう。 どんな仕事(事業)であっても、直接的・間接的に社会貢献や他人の利便性(問題解決)につながっているという見方もできるが、需要と供給によって成り立つ市場経済では『利幅の大きな儲かる事業・最先端の技術やコンセプトが応用される分野』にマネーと人材が流れ込みやすい構造がある。 ビジネスとしての起業や仕事の優先的な価値は、『社会問題の解決・社会的ニーズの充足』よりも『IPOなど経済的成功・事業規模の拡大』にあるが、社会起業としての起業や仕事では『社会問題の解決・社会的ニーズの充足』が先にあって、その目的に向かうプロセスで売上・利益を上げていこうとするところに違いがある。 もちろん、『需要のある商品・サービス』を幅広く流通(普及)させていくビジネスは、それ自体が社会にとって必要不可欠で有益な仕事としての側面があり、利益優先であっても結果として『大きな社会貢献』をしている企業はたくさん存在しているので、まっとうなビジネスであれば社会起業との間に優劣があるわけではない。社会起業の利点は『社会貢献・社会問題の解決』と『自分自身がやりたいこと』を融合させられるということもあり、働く人自身が義務的に嫌々ながら働くのではなく、主体的にやりたいことに取り組めるということも魅力なのだろう。 『無償のボランティア』であっても、そこに精神的対価(慈善活動のやりがい・感謝される嬉しさ・貢献する満足感)が伴っているように、社会起業も全面的に利他的・社会的な事業であるわけではなく、そこには『自分がやりたいと思うこと・社会的に有益と信じる仕事』に納得して取り組めるという精神的メリット(自己肯定感)が伴っているのは暗黙の了解としてある。そして、それは必ずしも悪いことではなく、一般的な営利企業やビジネスにやりがいを見出しにくい人材(納得の上で働くという精神的対価を重視する人材)の雇用を生み出すなど副次的効果も期待できるのではないかと思う。 営利企業のビジネスは『利潤の拡大』という利益・顧客の至上主義が前提になりやすく、中にはCSR(企業の社会的責任)を無視して、利益増大のために安全性や品質基準、社会貢献の意図を二の次にしてしまうような会社もでてくる。そういった営利事業のマイナス面をカバーしながら、行政機能(社会福祉・行政サービス)の一部を代替する特性も社会起業は持っているので、上手く事業化することができれば、『社会政策・福祉事業にかかる税負担』を軽減する効果も生み出すことができる。 本書は、社会貢献と収益事業を両立させる『社会起業(ソーシャル・アントレプレナー)』に目ざめた駒崎弘樹さんが、病児保育事業を手がける『フローレンス』を立ち上げるまでの経緯がエッセイ風の読みやすい文体で書かれている。 学生時代にITベンチャー企業の社長をしていた駒崎氏が、『会社としての成功(株式上場)』に疑問を感じ始め、『自分のやりたいことと仕事の一致』について思い迷う中で、NPO・社会起業という働き方に出会うわけだが、日記ブログのような体裁で書かれているので興味を持って読み進めやすい。 ITベンチャー社長という肩書きを失うことに対する葛藤や社会一般の価値観としてある『良い大学から大企業・公務員へと行くキャリア』から外れる不安など、さまざまな感情を交えながら『病児保育の事業化』へ向けた行動を始めていく。人から羨望されるブランド価値へのこだわりとか、大金を稼いで多くの女性にモテたい欲求とか、彼女と別れる時の虚しさ・つらさとか、そういった誰もが持つ“俗な気持ち”もオープンに語られており、自伝的な読み物としても興味深い内容になっている。 『社会起業をしたい』という漠然とした思いがあっても、どんな社会問題や社会的ニーズに対応する事業を始めれば良いのか分からないという人は多いが、著者は母親との会話で『病気をした双子の子どもの看病をして、仕事をクビになったワーキングマザー』のことを聞き、その問題に対する義憤から“病児保育”に関心を持ち始めたようである。病児保育のサービスネットワークを充実させることで、子どもを持つ母親が安心して働ける社会を作りたい、病気の子どもを理由に仕事ができなくなるような不条理を無くしたいという思いから、NPO法人フローレンスの病児保育事業は始められている。 そういった日常生活の中にあるちょっとした問題意識や表に出てきにくい人々のニーズに気づくことが『社会起業の契機』になるとも言えるが、本書の第3章以降にあるようにそういった『社会問題に対する意識・熱意』を、実際に利益の出せる事業にしていくことは相当に困難な道のりである。 著者の駒崎氏も『病児保育のアイデア』を伝えるために、保育・幼児教育の関係者や行政の関連部署を回っているが、『95%の人は批判的・否定的な対応を返す』という経験を書いている。『新しいこと・リスクのあること』で、それほど儲かりそうにもないことを始めようとするときには、積極的に賛成して支持的な対応を返してくれる人は相当に少ない。日本は『ダメだし社会』と書かれているが、ビジネスの起業にしても社会起業にしても、『周囲からダメだしされて諦めるというメンタリティの人』ではとても起業にまで漕ぎ着けることはできないし、起業してもその後のストレスや問題状況に耐え切ることができないだろう。 世の中の大多数の人は、仕事といえば『企業・役所への就職』をイメージして勧めるし、何か新しいことを始めようとすれば『リスク・無意味さ』のほうを『メリット・有益性』よりも強調するものだ。それは自分が他人の人生の責任を取れないことを知っているからであり、相手の人生やプランに自分が深くコミットしないのであれば、『もっとも低リスクで常識的な選択(多数派の意見に合致する安全そうな選択)』を勧めるのは当たり前といえば当たり前だからである。 各分野(福祉・教育・育児・医療補助)における社会起業のアイデアにしても、多くの人は『新規の事業化・サービス開発』よりも『既存の社会福祉・行政サービスの利用』でいいではないかという意見に傾くし、当該分野で長年公務員や専門職として働いている人から見れば『自分たちの役割や権益を否定するような活動』として煙たがられる可能性もある。そういった幾多の障害や抵抗、ストレスをはねのけて、自分が『社会・他人の役に立つと信じる事業化のプラン』に熱心に取り組んでいけるかどうか、そういった仲間に恵まれるかどうかが、社会起業家としての適性を左右するように感じた。 社会起業は『社会貢献・社会変革』を優位に置きながら、ビジネスとしての継続や拡大も目指すという事業活動であり、『起業家の社会問題への意識』が起業のスタートラインに置かれている。 とはいえ、社会起業はボランティア(慈善活動)ではないので、お金を儲けたり事業規模を拡大することをタブーとするわけではなく、株式会社など営利事業の形態をとって社会起業をすることも可能である。社会・人間の役に立つまっとうな社会起業であれば、事業規模が拡大すればするほど、サービスの普及や納税額の増大を通して社会貢献の度合いも大きくなるからである。 社会起業の理想のひとつは、税金によって運営されている『公的部門(行政)の非効率的な社会政策・福祉的事業』の一部を代替することではないかと思うが、『社会的ニーズ』と『(ニーズを持つ人が利用しやすい)適正価格のサービス』が結びついた時に持続可能な社会起業が成り立つのだろう。 行政が実施する『無料の行政サービス・福祉政策』でなければ解決できない問題も多いし、生活保護世帯や貧困世帯のように元々有料のサービスを利用するだけの資金を持っていないというケースもあるが、『適正価格のサービス』を通して社会問題の解決を図ることができれば、サービスの改善(ニーズの取り入れ)や事業としての継続性が実現しやすくなる。 本書では、企業・役所の助成金獲得にまつわる話、行政の補助金による活動内容の規制の話、社会起業関連の仕事が増えることを嫌がる公務員の話など、『社会起業の資金面・活動面の具体的な問題状況』が伝わってくるエピソードも多く収載されている。一方で、『社会を変える仕事=社会問題解決に直接コミットする仕事』の実現可能性が上がってきている現在の社会状況・ウェブ環境の興奮や魅力も伝わってくる構成になっている。社会起業の意識や活動の広がりによって、新たな社会参加意識やワークスタイルが生まれるような期待も感じ取ることができる一冊。 ■関連URI 新人は“仕事で分からないこと”をどのように質問したら良いのか?:新人教育と疑問解決の質問力 仕事や勉強に対するモチベーション向上のポイントと経済的・心理的インセンティブ:仕事のやる気と人間関係 仕事中だけ鬱になるという“新型うつ病”についての雑感1:一般的なうつ病とストレス反応の異同 ■書籍紹介 「社会を変える」を仕事にする 社会起業家という生き方 英治出版 駒崎弘樹 ユーザレビュー: 自分なら同じことが出 ... 自分が一歩を踏み出せ ... 読んで損はないです。 ...Amazonアソシエイト by ![]() |
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やる気を生む内的モチベーションと外的インセンティブ2:ヒューリスティックな仕事と意識の自由度
外部的な報酬や自己利益の最大化にこだわらない活動は、ウェブ上のオープンソースやQ&Aの回答に留まるものではなく、近年では『利潤の最大化』を追求する営利企業とは異なる、『良い社会変化の促進・社会貢献の最大化』を追求する社会起業(ソーシャル・アントレプレナーシップ)のコンセプトもでてきています。社会起業家の活動や概念は、途上国で低所得者向けの融資を行う『グラミン銀行』を創設したムハマド・ユヌスの登場によって更に広まりましたが、国際的な規模を持つNGO・NPOから、地域社会に根ざした草の根的な家... ...続きを見る |
カウンセリングルーム:Es Discov... 2011/04/09 19:44 |
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