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自民党が12日の東京都議選で民主党に惨敗を喫する結果となり、麻生政権はいよいよ進退が窮まったという観があるが、自民党幹部が麻生首相に説得していたという『衆院選の先送り』を実施したとしても自民党の劣勢を挽回することは困難ではないだろうか。幾ら先延ばしをしても衆院の任期切れそのものが2ヵ月後に迫っており、この政情においてアドホックな対応を取ることは有権者から『責任回避・逃げの姿勢』の悪印象をもたれる恐れのほうが強い。 その意味では、麻生首相が衆院の解散を7月21日、衆院選の投開票を8月30日と明確に予告したことは一つの決断であり、表層的に『首相の首の挿げ替え(すげかえ)』をするよりは誠実な政治判断と評価できる。『辞職して政権を放り出さず、逃げずに戦わなければならない』という麻生首相の気概は、安倍・福田元首相と比較すれば必ずしも悪いものではないし、現在の自民党に麻生首相を遥かに上回るだけの瞬間風速的な支持を取り付けられる人材(首相候補)が見当たらない。 民主党・社民党・共産党など野党は13日午後に、内閣不信任決議案を衆院に、首相問責決議案を参院に提出して審議を拒否しているが、今日の国会で内閣不信任案は衆院で否決されて問責決議案のほうは参院で可決されることになる。衆参の国会のねじれを考えると、次の総選挙で自民党・公明党は現在と同じ『2/3以上の議席』を確保しなければ政権運営ができず、その議席数のハードルは相当に高い。一方、民主党をはじめとする野党連合のほうは、既に参院の過半数を握っているので、衆院で過半数の議席さえ確保できれば良いという意味で政権交代のハードルは低くなっていると言える。 自公政権内部では、支持率の低い麻生首相を辞任させる『麻生降ろし』によって起死回生の選挙準備態勢を再建できるという意見もあるようだが、現在の自民党に吹いている逆風の原因が『麻生首相の失政・民意の見誤り・不人気』だけにあるとは言えないと思う。 自公政権の支持率低下の主因は、世界的な景気悪化と国民生活の困窮(雇用・所得の減少)に対して実効性のある政策を打ち出せなかったことにあると思うが、社会保障制度の継続性などに関わる『抜本的な改革のビジョン』についても弱い部分があり、将来不安を緩和しようとする『改革ビジョンの期待値』が民主党よりも低いと見積もられている。 民主党の政権担当能力は未知数で『国民の福祉向上・負担軽減』ばかりを強調した政策には『財源の裏づけ』が乏しいとも言われるが、自民党は民主党のマニフェストに真っ向から対峙する『マニフェスト(政権公約)』さえまだまとめられていないというのは大きなビハインドとなっている。 民主党が非現実的な理想論ばかり主張してその財源や政策プロセスの裏づけがないから責任政党として不適格だという批判はあるが、自民党・公明党に更に政権を任せればどういった抜本的な改革や将来の希望のビジョンを示してくれるのかが、国民に伝わってこないことが問題なのではないかと思う。 北朝鮮の核開発やミサイル発射の問題、ソマリア沖の海賊対策など『外交・安全保障の分野』に関しては、民主党は自民党に対する『反対のための反対』に終始してきた観があり、外交政策と国家安全保障については民主党はもっと国民の安心と支持を得られる『防衛政策の基本軸』を明確にすべきだろう。民主党の小沢一郎前代表は、日米地位協定の改定や米軍基地負担(思いやり予算)の軽減といった『米軍との距離を置く外交路線』を打ち出していたが、本当に日米同盟のあり方を見直すような大枠の安全保障改革に着手するということになれば、日本独自の防衛力の総点検など新たな課題が山積することにもなる。 自公政権を再任したら、また今まで通りの官僚主導政治や派閥政治が続くだけなのではないかという不信感が国民に根強くあり、『政権交代の潮流』は過去の歴史的・利権的なしがらみが少なく見える方向に流れている。 自民党は戦後64年のほとんどの期間、政権を運営してきたという『顕著な実績』があるが、この実績がかえって『旧弊(今までのしがらみ・慣習的な利権構造)』を改められないのではないかという先入見を国民に与えてしまっているので、過去の自民党のイメージを鮮やかに刷新するような戦略を講じなければ、党政衰退の難局を乗り越えるのは難しい。 民主党の支持母体は労働組合や一般消費者にあり、自民党の支持母体は大企業や自営業者層などにあるが、従来、自民党支持に回っていた第一次産業層が、民主党の農家に対する最低所得保障制度によって民主党に鞍替えする可能性も高い。民主党が訴える農家の最低所得保障の制度そのものは、『農業の自由化・産業化』を阻害して生産力の小さな零細農家を保護する政策であるため、手離しで評価することはできないが民主党の支持基盤固めという戦略的判断にとっては奏功するものと思われる。 また、総体的には民主党の経済政策の多くは、平均所得以下の労働者や子育て世帯を強くバックアップするものが多い。その実現可能性やマクロ経済学的な影響はともかくとして、大半の国民にとってメリットになりそうに見える政策が多いということが、衆院選での集票につながるだろう。ただ長期的に政権を運営できるか否かは、公約した各種の生活支援政策・制度改革を実際に実現できるかどうかということが厳しく問われることになるし、行政コストの節約だけでどこまで予算を捻出できるか分からない部分はある。無理やりに行政コストを切り詰めることは可能かもしれないが、それで霞ヶ関の官僚が民主党の政策実現のために積極的に動いてくれるかどうかという点にも不安を残す。 知名度と支持率の高い『政党の顔』を立てて選挙戦を戦おうとして、自民党の古賀選対委員長は圧倒的な知名度と改革イメージを持つ宮崎県の東国原知事に出馬を要請した。しかし、国民側の反応はいまいち否定的なものであり、東国原知事自身も国民的賛同が得られない中で、ビートたけし氏の忠告を受けて国政進出を思い留まろうとしている気持ちの揺れが報道されている。 民主党は行政コスト(特別会計予算)の無駄と不要不急な政府事業、天下りの公的負担を削減していけば、差し当たっての財源を十分に工面できると強く主張し続けている。それに対し自公政権は、人事院・会計監査院の報告によればそれほど莫大な予算を埋蔵金として捻出することはできないと反論している。民主党の鳩山由紀夫代表は4年間に限っては消費税を据え置くとしているが、自民党は消費税の早期の引き上げは社会保障などの財源確保のために回避できないとしている。 生活支援・社会保障の政策やその財源を巡る自民党と民主党の対立点は明らかであり、民主党はたとえ政権を勝ち取ったとしても、今打ち出している社会保障制度の改革や国民生活の再建政策に実現のロードマップを描けなければ政権を維持することはできない。 民主党が兼ねてから強く主張している『特別会計(官のサイフ)の使途の無駄=埋蔵金の存在』をどこまで明らかにできるのか、この問題は民主党が標榜する『脱官僚政治・霞ヶ関の抜本改革・国民負担を最小化する行財政改革』に直結するテーマである。 国民の目線が届きにくい『200兆円規模の特別会計』の改革には自民党はほとんど手をつけてこなかっただけに、民主党政権が『官とのしがらみ・利権的つながり』の弱さを印象付ける最大のチャンスともなる。逆に、官僚の抵抗が予想される特別会計改革に民主党が挫折すれば、予算を確保できずに民主党が掲げた生活支援政策・社会保障制度改革は画餅に終わり、有権者の支持をも失うことになる恐れが強い。 政権交代そのものよりも、民主党がマニフェストに掲げている数々の政策を実現できるかどうかが重要なのだが、民主党でなくても自民党であっても『内需主導経済への転換(可処分所得の引き上げ)・公立高等学校の実質的な無償化(家計の不利に影響されない教育機会の平等)・セーフティネットの充実(失業者や困窮者の生活再建の支援)』などの政策は取り込んでいくべきだと思う。 アルバイトの最低時給を1,000円に引き上げるなどの政策は、一見すると経済原則に反して中小企業を追い詰める荒唐無稽な政策のようにも見えるが、数年間単位の段階的な最低時給の引き上げや雇用保険の拡充と合わせて考えると、『同一労働・同一賃金の原則』に接近するための布石的な政策とも解釈できる。 所得水準がこのまま低いレベルで抑えられると、デフレ基調や非正規雇用者の生活不安が強まる恐れもあり、時給1,000円の実現は短期では無理だとしても段階的に人件費を引き上げる必要性はあるのではないか。物価と人件費の下落傾向に歯止めをかけることにもつながる。 本来的には、安ければ安いほど良いという価格競争の激化に『生産者(従業員)でもある消費者』が一定の抑制をかけられる状況が好ましいが、そのためには非正規雇用の消費者を購買力が無い貧困レベルに追いやらずに可処分所得を少しでも底上げしなければならない。 生産拠点の海外移転などもあるので一概には断定できないが、従業員の生活・給料を犠牲にして売られる極端に安い商品・サービスはやはり問題があるように思う。可処分所得が低い人が更に安いモノを求めることにより、自分自身の給与も下がっていくという悪循環はどこかで断ち切らなければ終わりがない。ただ不安定で低賃金な雇用さえ量産すれば、将来不安が無くなるというわけではなく、最低ラインの賃金や社会保障を確保しなければ、正規雇用の椅子に座れなかった労働者の不安や不満は和らがないだろう。能力や努力、運が不足していたのだから、将来の生活設計も立たない最低ラインの賃金で我慢すべきという立論は、日本社会の安定性や秩序維持の観点からも賛同しにくいものがある。 投資判断には社会的貢献度の高い企業に投資していく『社会的責任投資(SRI)』という考え方があるが、消費者が商品を購入する場合にも、従業員の生活保障など社会的貢献度の高い企業・店舗で積極的に消費するという『社会的責任消費』の考え方がもてるようになれれば良いと考えたりもする。大多数の人は、『消費者』であるだけではなくて『生産者(サービス提供者)』でもあるのだから、『適正価格の商品・モノ』を購入することによって一人でも多くの人の幸せや安心につながるような経済の仕組みが出来ることが望ましいが、グローバル経済の競争環境の中でどのようにして少しでも最低賃金を底上げできるかは非常に重い課題である。 『8月30日の総選挙』で国民のどのような判断が政治に下されるのかに注視したいが、民主党が政権を取っても自民党・公明党が政権を維持しても、国民に長期的な展望や明るい希望を感じさせるような政治改革・政策ビジョンの方向性を示して欲しい。 ■関連URI 自民・民主の大連立の失敗と二大政党制、小沢一郎の国連中心主義的な外交理念の問題:1 自民・民主の大連立の失敗と二大政党制、小沢一郎の国連中心主義的な外交理念の問題:2 正社員の解雇規制を緩和することによって、雇用問題は改善するか2:企業の年功賃金と人件費のコスト 鳩山由紀夫と岡田克也の民主党代表選挙と民主党・政策方針のオルタナティブ性:公開討論の雑感 ■書籍紹介 民主党政権は日本をどう変えるのか (家族で読める family book series 004) (家族で読めるfamily book series?たちまちわかる最新時事解説) 飛鳥新社 上杉 隆 ユーザレビュー: Amazonアソシエイト by ウェブリブログ |
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民主党と自民党のマニフェスト(政権公約)を読んでの雑感1:育児支援・生活再建・経済政策と財源の問題
自民党と民主党をはじめとする各党のマニフェストが出揃いましたが、自民党が『経済成長・責任力(政権与党の安定感)』を強調しているのに対し、民主党は『生活防衛・霞ヶ関改革(特別会計の歳出削減)』を強調しているところに特徴があるようです。マニフェスト(政権公約)に記載した育児支援や雇用対策、社会保障改革などの政策を実現するための『財源』の確保についても、自民党は『消費税増税』に言及して、政策実現に必要な増税について明言しない民主党のマニフェストを無責任なバラマキだと批判しています。 ...続きを見る |
カウンセリングルーム:Es Discov... 2009/08/03 13:25 |
菅首相と野党・小沢グループの政局と震災対応2:早期退陣に追い込まれた菅政権とトロイカ体制終焉
自民党をはじめとする野党は『菅首相の下では法案審議に応じず、与野党一体の復興協力の体制にも参加しない』と明言しているので、菅首相が政権を長く続投しても喫緊の震災復興のための重要法案が議会を通らない危険性は高い。自民党・公明党は復興基本法以外の法案通過には協力しない政治対決の姿勢を見せており、第二次補正予算案や特例公債法案には賛成しないと言っているので、菅首相が早期に退陣しない限りは震災復興に必要不可欠な立法措置を講じることもできない状況なのである。 ...続きを見る |
カウンセリングルーム:Es Discov... 2011/06/06 06:41 |
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