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警視庁が公開しているストーカー被害の件数は毎年約1,000件で推移していますが、実際には警察に届け出ない暗数としてのストーカーもあるので実際にはもう少し多いでしょう。統計では全く知らない相手が『ストーカーの加害者』になることは余り無く、『交際相手が577人(元交際相手を含む、54%)・知人152人(14%)・職場関係151人(14%)』が上位の内訳になっており、面識のある人物が加害者になっています。 離婚したり不仲になったりした配偶者(元配偶者)が、別れの事実を受け容れられずにつきまとったり脅迫・嫌がらせをしたりしてストーカーになる事例も起こっていますので、『ストーカーになるような人と付き合わなければ良いのに・相手の人格や行動をよく見極めればストーカーは防げるはず』という被害者に“異性選択の責任の一部”を求める言説は的外れであることが多いと思います。全く知らない相手から勝手に妄想的な思い込み(片思い)をされて、ストーカー被害に遭うようなケースもあるので、どれだけ注意していても未然に防ぎきれないことも多くあります。 確かに、付き合う前から顕著にストーカーのような執念深さ(しつこさ)や異常な嫉妬心、妄想的な思い込み、つきまとうような様子が観察できれば、その相手とは付き合わないと思いますが、実際には付き合う前の段階では『普通に見える相手(異常性を察知できない相手)』のほうが多いのではないかと推測されます。なぜなら、ストーカーになりやすい『性格的・認知的な素因』がある人でも、交際している相手がある程度自分の思い通りの行動や反応を取ってくれていればストーカーになる必要性が無いからであり、そういった危険な素因が現れてくるのは『別離・拒絶・否定』などの意志や行動を相手がはっきりと示した時だけだからです。 どうして人がストーカーになるのかの要因には、『気質・性格・環境・信念(認知傾向)』など各種の要因が関係しています。パーソナリティ障害という位相で見ると、全く知らない相手(顔見知り程度の相手)に思い込みだけでストーカーをする人は妄想性パーソナリティ障害との親和性があり、一度交際した相手に執着して離れられないストーカーでは自己愛性パーソナリティ障害や境界性パーソナリティ障害との親和性があると想定されますが、相手に傷害・殺人などの甚大な危害まで加える人はストーカー全体の比率ではそれほど多くありません。 ストーカーの目的の多くは、相手に直接的に危害を加えたり困らせたりすることではなく、つきまといや嫌がらせで『相手の注意・関心』を自分にひきつけることにあり、自分が絶対に諦めず引き下がらないことを示すことで『相手が根負け(妥協)して自分を直接・間接に受け容れること』を期待しているからです。中には、相手との関係がどうしようもならないと分かっていて、つきまとったり嫌がらせをしたり不安にさせたりすることそのものが自己目的化しているケースもあるとは思いますが、そこには『一方的で自己中心的な好意・関心・要求』を何とかして受け容れてもらいたいという欲求が介在しています。 相手を傷つけたり困らせたりすれば、相手が自分の思い通りの反応をしてくれるようになるという信念は、メラニー・クラインの早期発達論や精神分析のリビドー発達論に照らし合わせると、『妄想−分裂ポジションにおける幼児的全能』への退行現象として理解することができます。男性には誰にでも多かれ少なかれマザー・コンプレックスがあるという解釈は成り立ちますが、そのマザー・コンプレックス(異性に自分の幼児的全能を受け容れて欲しいという思い)を自分の恋愛関係や配偶者・恋人にどのくらい転移して依存するかには個人差があります。 このマザー・コンプレックスは、母親との距離感が近すぎて過度に甘やかされている時でも、母親との距離感が遠すぎて母親の愛情(乳幼児期から青年期までの家族に守られている感覚)を実感できなかった時でも、どちらでも病的に強まって異性関係にさまざまなトラブルの原因をもたらすことがあります。仲田容疑者と家族(母親)との関係性は見えてきませんが、ストーカー気質の人は異性に『母親の理想的な元型(最終的には自分を絶対的に保護してくれる女性像)』を投影する傾向が強いと言えます。 ここでいう母親の元型というのは、『実在する自分の母親』と直接の相関を持つものではなく、発達過程の母子関係や異性関係の影響を受けながら、人間一般の意識に形成されてくる『ステロタイプな理想像・女性像(女性にこうあって欲しいというようなイメージ)』に近いものであり、それを外部の実在する女性に過剰に転移することによって、『現実と理想の乖離(ギャップ)』に耐えられないという人が出てきます。 つまり、相手が本当に嫌がっていて困っていても、最後には自分のわがままを受け止めてくれるような『母親の元型(絶対に切れない関係性)』を一方的に投影することによって、『表面的な嫌悪』の背後に『自分に対する愛情・保護』を妄想的に見出しその徴候を見逃すまいとするわけです。実際には相手は本気で自分を嫌ったり迷惑に感じたりしているわけですから、『自分への好意・関心の徴候』など見出せるはずもないのですが、母親(理想像)の元型の投影と妄想的な確信によってその徴候が見えるまで攻撃や嫌がらせを続けるので、最終的にはストーカー規制法や刑法に違反する危険性が高くなります。 自分の要求や不満を『暴力・嫌がらせ』で訴えて無理強いすれば、いつかは受け容れてくれるはずというような『精神の退行』を起こすことが少なくありませんが、これは『子どもと母親の関係=一方的な甘えの容認』では通用することがあっても、成長した『男性と女性の関係=双方向的な甘えの承認』では多くの場合通用しなくなりますから様々なトラブルの原因になります。 異性関係(夫婦関係)における『暴力・脅迫・嫌がらせ』によって、支配−服従の『共依存的な関係』が構築されることがありますが、こういった異性間の加害行為は『依存性・甘え』の転換であることが多く、『相手の暴力(嫌がらせ)の受容』によって自分が見捨てられないことを確認するというような意味合いもでてきます。 『暴力(威圧)と懐柔(謝罪)の使い分け』によって自分の行動がコントロールされてなかなか別れられないという状態に落ち込まないためには、付き合い始めの初期の段階で『暴力・威圧による要求を絶対に受け容れないという態度』を毅然と示すことが重要になります。思い通りにならない時に、怒って暴れれば相手が言うことを聞いてくれるという『関係性のパターン』が構築されると、そこから逃れるには相当な苦労と覚悟が必要になりますので、関係性が浅い内に決断を下したほうが解決を図りやすいと言えます。 相手と何の係わり合いもない『妄想性=無根拠な思い込み・決め付け』の強いストーカーでは、関連妄想が関係するのでかなり心理状態が変わってきます。相手と一度は恋愛関係や夫婦関係になっていたストーカーでは、『粘り強く自分の気持ちを訴えていれば、いつかは相手も心変わりして復縁できるのではないか』という退行的な依存性や甘えに根ざした『妄想的な確信・しがみつき』が見られやすくなります。 ■関連URI 千葉市花見川区の『女性殺害・次女連れ去り事件』の容疑者が沖縄県那覇市で逮捕、次女は無事に保護 自尊心を求めるH・コフートの自己愛の発達理論とS・フロイトの病的なナルシシズム 配偶者間・恋人間のDV(ドメスティック・バイオレンス)と共依存的なパートナー選択の問題 S.フロイトの“エディプス・コンプレックス”とM.クラインの“原始的防衛機制”に基づく発達的な病因論 ■書籍紹介 ストーカーの心理―治療と問題の解決に向けて サイエンス社 ポール・E. ミューレン ユーザレビュー: 驚きの事実!日本で色 ... ストーカーに怯えるな ... 精神の捻じ曲がった輩 ...Amazonアソシエイト by ウェブリブログ |
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ストーカーと異性間暴力の心理2:対象恒常性の確立の失敗と孤独耐性の低下・自己愛の過剰
一般的な精神発達のプロセスでは、『母子分離不安』を乗り越えて孤独(心細さ)を感じる自我が萌芽した時に、自己と他者の境界線が引かれて『自分の思い通りにならない他者の存在』を認めていくようになります。幻想的な母子一体感のような『自己の延長(自分の一部)としての他者』を否定して、『自己』と『他者』の独立性を承認し相手に配慮した共感的なコミュニケーションができるようになれば、行き過ぎたストーカー行為を行うリスクは低くなりやすいと言えますが、恋愛関係(異性関係)のあり方についてバランスのとれた価値認... ...続きを見る |
カウンセリングルーム:Es Discov... 2009/07/29 07:11 |
ストーカーと異性間暴力の心理1:精神的な退行と依存性・内的な女性像(異性像)の投影
ストーカーと異性間暴力の心理1:精神的な退行と依存性・内的な女性像(異性像)の投影 http://charm.at.webry.info/200907/article_16.html カウンセリングルーム:Es Discovery より引用。 警視庁が公開しているストーカー被害の件数は毎年約1,000件で推移していますが、実際には警察に届け出ない暗数としてのストーカーもあるので実際にはもう少し多いでしょう。統計では全く知らない相手が『ストーカーの加害者』になることは余り無く、『交際相手が57... ...続きを見る |
ひとりごと 2011/03/04 22:22 |
“長崎県西海市2女性殺害事件・台湾留学生殺害事件”とストーカー・恋愛感情にまつわるトラブル:1
昨年12月に、三女(23)にストーカー行為を続けて『脅迫・逮捕監禁・暴行』などを行って、警察から事情聴取・警告を複数回にわたって受けていた筒井郷太(27)容疑者が、交際に反対して警察に被害を相談した三女の家族がいる『長崎県西海市の実家』にまで押し掛け、三女の母親(56)・祖母(77)の二人を殺害するという凄惨な事件が起こった。警察が介入してもストーカー事件の安全を確保した上での解決ができなかった事件であり、理由をはっきりと告げずに父親に対して『(監禁・暴行の時点で容疑者を逮捕することなく)... ...続きを見る |
カウンセリングルーム:Es Discov... 2012/01/12 06:53 |
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