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help RSS PTSDの発症に関係する神経系・内分泌系の『闘争‐逃走反応』と罪悪感・自責感を生む“凍りつき”の問題

<<   作成日時 : 2009/07/01 00:38   >>

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強烈なストレスやトラウマ事態に対する『生理的・身体的な防衛反応(ストレス反応)』は以下のようなメカニズムになっていますが、PTSDでは交感神経系の過剰興奮やコルチゾール(ヒドロコルチゾン)の減少によって『闘争‐逃走反応』の緊張状態を解除することが難しくなります。


視床下部‐下垂体‐副腎の内分泌系の軸(HPA軸)と身体的な防衛反応・PTSDの発症

1.危険・脅威の認知(知覚)

2.『大脳辺縁系』の情動的評価(危険性のレベルの評価)

3.大脳辺縁系にある『扁桃体』の本能的な情動反応(恐怖感・緊張感・怒りを感じる)

4.『扁桃体』から『視床下部』に危険情報が伝達される。

5.『視床下部』から『交感神経系』に情報伝達される。『視床下部』が『コルチコトロピン放出ホルモン(CRH)』を分泌

6‐1.『交感神経系』から『副腎』に情報伝達され、副腎髄質ホルモンとして興奮性・活動性のアドレナリン(エピネフリン)やノルアドレナリン(ノルエピネフリン)が分泌される。

6−2.アドレナリンやノルアドレナリンの興奮性の作用によって、『闘争‐逃走反応』の身体的防衛反応が準備される。

6−3.この『闘争‐逃走反応』が解除されないほどの強烈なストレス(トラウマ)を受けた時にPTSDが発症することがある。

7−1.『コルチコトロピン放出ホルモン(CRH)』が『脳下垂体』を刺激して『副腎皮質刺激ホルモン』を分泌する。

7−2.『副腎皮質刺激ホルモン』によって、副腎から副腎皮質ホルモンの『コルチゾール(ヒドロコルチゾン)』が適量に分泌されれば、アドレナリンやノルアドレナリンが抑制されて『闘争‐逃走反応』が解除される。その結果、PTSDの発症は回避される。


ストレスホルモンとも呼ばれるコルチゾール(ヒドロコルチゾン)は、活動性・興奮性を高めるアドレナリン(エピネフリン)やノルアドレナリンの分泌を抑制して、過剰な緊張状態を緩和して身体の正常なホメオスタシスを回復しようとします。ストレスに対する防衛反応として自律神経系が作用する『闘争‐逃走反応』が形成されますが、危険を回避できない時や外敵による死の恐怖が間近に迫っている時には、全く身動きできずに固まってしまう『凍りつき(緊張性静止)』が起こることがあります。

『逃走・闘争・凍りつき』というのは人間にも動物にも共通する身体的(生理的)な防衛反応ですが、この中で自分の生命を守るために最も優先されるのは『逃走』であり、逃げられる可能性が低いと判断した時にはその場に留まって『闘争』を選択することになります。『逃げる時間的余裕・逃げ出す空間(場所)・逃げ切る体力』があると判断すれば、大半の動物は危険・脅威からの『逃走』を図るのですが、それらの条件が揃っておらず『戦う体力・勝って敵を撃退する見込み』があれば『闘争』をしようとします。

逃走できる可能性がなく、闘争で敵を撃退することも難しい時には、反射的に『死・負け』を覚悟した人間(動物)は、最後のチャンスに賭けて『凍りつき(緊張性静止)』の防衛反応を示します。これは意識的・選択的なものではなくて、本能的な防衛反応なので、『凍りつき』が起こる時には自分の意志や努力でそれを回避することは通常できません。『凍りつき(緊張性静止)』というのは交感神経と副交感神経の極度の緊張によって、身動きできないほどに身体が緊張・硬直してしまう状態で、口の中がカラカラに乾いて大量の冷や汗を出すことが多くなります。

一切の抵抗ができない『凍りつき』がなぜ自己防衛につながるのかということですが、それは『身体感覚・感情状態の麻痺』を誘発することで、死や暴行の恐怖感・苦痛を大幅に緩和することができるということです。あるいは、外見上の『仮死状態』を作り出すことによって、相手の攻撃性や嗜虐性を和らげられる可能性があるということもあり、人間はともかく動物同士(ネコと小鳥・ネズミのような小動物など)の争いではこういった仮死状態が有効に機能することもあります。

圧倒的な力の差がある人間の場合にも、相手をひるませる撃退効果が全く期待できない非力な抵抗(反撃)を繰り出すよりかは、何も反応しない『凍りつき』で仮死状態を作り出していたほうが、相手の攻撃性や欲望を萎えさせられることがあります。しかし、前述したように身体が硬直・麻痺して動けなくなる『凍りつき』は意識的に選択される防衛反応ではなく、万策尽きてどうしようもなくなったと大脳辺縁系(扁桃体)が判断する時に反射的・自動的に出現する防衛反応です。

PTSDの症状でも、トラウマと関連する事象・場所に直面した時にこの『凍りつき(緊張性静止)』の反応が『大量発汗・口の渇き・心悸亢進』といった自律神経症状と一緒に出現することがあります。この『凍りつき』はPTSDの『自己嫌悪・自信の欠如の問題』を悪化させる要因にもなるのですが、それは『なぜあの時に、私はもっと抵抗したり必死に逃げたりしなかったのだろうか?自分にあと少しの勇気や強さが無かったばかりにあんな被害に遭ってしまったのだ』という罪悪感や羞恥心を強化しやすいからです。

しかし、極限的な脅威・危機を体験している時に起こる『凍りつき(緊張性静止)』というのは、本人の意志や選択とは無関係に起こる『生理学的な防衛反応』であり、自分の生命だけは何とか守ろうとする『仮死状態の形成』ですから、そこには自己責任や自分の落ち度を問われる余地は一切無いということをしっかりと理解しておく必要があります。

身体と感情が固まって身動きできなくなる『凍りつき』は、PTSDの罪悪感・自己嫌悪の問題と関係していますが、特にレイプなどの性犯罪や大切な人が殺傷される暴力事件においてこういった罪悪感・羞恥心や自己嫌悪が強まる危険があります。その為、性犯罪・暴力犯罪のトラウマを原因とするPTSDの心理療法(カウンセリング)では、『凍りつきのメカニズムに基づく不可避性』『抵抗・逃走できなかったことに何も責任を感じなくても良いこと』を共感的・支持的に何度も説明することが重要になってきます。

『自分が悪かったから・油断していたから・十分に抵抗できなかったから』という原因帰属による罪悪感や自己嫌悪が残っていると、PTSDの心身症状が悪化しやすくなったり、気分が落ち込んで自分の存在意義を見失いやすくなります。その為、認知療法的なアプローチを使って『自分に落ち度があるのではなく加害者が悪い・身動きできない凍りつきは生物学的な反射であり自己責任を問えるようなものではない・永遠に取り返しのつかない精神的ダメージを受けたわけではない(今からの人生を前向きに再建することは十分に可能である)』という合理的な原因帰属ができるようにフォローして上げることが、自己信頼感や自尊心を回復するとっかかりになってくると言えます。






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