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日米欧のGDPがマイナス成長に転じることになり、世界経済の急速な悪化(金融危機・需要減速・雇用減少)は深刻さの度合いを増している。主要企業の業績の落ち込みを受けて、各国が自国産業と雇用を守るために関税障壁を高くして輸入規制を強化する『保護主義』を発動する懸念も依然として残っている。保護主義は自由貿易と対置する経済政策であり、外国の輸入品ができるだけ国内に入らないような貿易障壁(関税引き上げ・輸入数量規制のセーフガード)を設けて、国内企業(特定の貿易協定のある国の企業)の製品だけを国内に流通させ消費させようとするものである。 ローマで開かれたG7(主要7カ国財務相・中央銀行総裁会議)の共同声明では、各国が自国産業のみを優先する保護主義を回避して自由貿易の発展に努め、WTO(世界貿易機関)の多角的貿易交渉を推進するということで合意が得られている。しかし、アメリカのオバマ政権が連邦政府が購入する工業製品などについて『バイアメリカン条項(米国製品の購入条項)』を景気対策法案に盛り込んでいるように、金融機能が低下してくると各国は保護主義の誘惑にどうしても駆られやすくなる。 貿易障壁を強化して外国製品を締め出す『ブロック経済』にまでなると、世界経済の成長率を低下させて軍事的緊張を引き起こしやすいという副作用が大きくなるが、限定的な保護主義政策は、日本でもアメリカでもロシアでもEUでも途上国でも多く採用されている。貿易規制を撤廃した『自由貿易』を過度に推進すると、自国産業が衰退して国内雇用が奪われるという認識を持っている国民は多いし、実際に『衰退産業・高コスト産業』であれば外国の安価な輸入製品の流入によって市場から駆逐される恐れがある。 自由貿易を肯定する立場では、非効率的な『衰退産業・高コスト産業』が市場から駆逐されることは好ましく、その結果として国内産業において『比較優位な産業(国内の他産業と比較して生産効率と付加価値の高い産業)』に資本と労働力が集積することになると仮定する。自由貿易の市場競争によって、産業構造の転換とイノベーション(技術革新)が促進するというわけである。自由貿易体制において、各国が比較優位な財(製品)の生産に特化することによって世界全体の富が増大するというモデルは現在でも有効であり、自由貿易が保護主義によって過度に抑制されれば、世界経済の生産性(最適な財の分配)を維持することは不可能である。 貿易赤字が累積していたアメリカでも、自動車産業の低迷などを受けて1980年代には痛烈なジャパンバッシングが起こっている。日本車をハンマーで粉々に破壊するパフォーマンスが行われ、牛肉・オレンジの関税引き下げを強硬に求めて、1988年のスーパー301条で日本に圧力を掛けたりもした。自由貿易によって貿易摩擦が強くなると『自国の産業・雇用が奪われる』という被害感が強まりやすい傾向は今でもあるが、2000年代からは『市場経済のグローバリズム(世界経済の統合)によって自国の産業・雇用が奪われるのではないか』という強い被害感に置き換わってきたようである。 その被害感は、高賃金国(先進国)が低賃金国(途上国)と競争する際の『負の側面(賃金の抑制・仕事の流出)』に焦点を当てたものであり、『国内産業の海外移転(産業の空洞化)』という事象に端的に表されている。第三世界とされた開発途上国が経済成長して製品を輸出することが、先進国にとってマイナスになるのかプラスになるのかと言えば、総合的には新規市場の開拓を可能とする数十億人以上の消費者創出によってプラスになる可能性のほうが高い。しかし、個別の労働者の場合には、それぞれの『職業・産業分野・熟練度・企業の需要』によって外国(途上国)との自由競争から不利益を受ける恐れが十分にあるし、農業・製造業にかかる競争圧力は特に厳しいものになってくる。 政府に対する保護主義(貿易規制)の要請は、国際競争に耐えられない産業構造(高コスト体質・コモディティ化した商品)を持つ業界から出されることが多いが、自由貿易の過剰な規制は経済全体のパイを縮小して産業構造の転換(労働力の最適配分)を抑止するという弊害も併せ持っている。自動車・電機・機械など輸出企業の業績悪化・雇用調整(リストラ)などは確かにインパクトがあるが、これらの日本企業の商品そのものが競争力を致命的に喪失したわけではなく、円高による為替差損と金融危機による資金調達能力の低下、アメリカ市場の需要減少というのが業績悪化に大きく影響している側面が強い。 国内外の金融機能が正常化して、日本企業が需要を生み出すための新技術・新商品の開発を継続できていれば、輸出産業の巻き返しというのは十分可能性があるし、中国・インドなどの経済成長に合わせて市場を広げられるチャンスが無いわけではない。現在の世界不況・金融麻痺の異常な状況下における短期の業績悪化だけを見て、日本の自動車・電機・機械の輸出型産業(外需依存の多国籍企業)が沈没したと判断するのは時期尚早のように思うし、環境技術・エネルギー技術(燃料電池)の分野では日本企業にかなりのアドバンテージがあるはずである。 数年以上のスパンで見れば、トヨタやソニーなどの日本企業が現在の失地を再び回復する可能性があるし、それらの企業の利益を支えてきたアメリカ経済がこのままどん底に落ち込んで二度と立ち上がれないということも考えにくい。アメリカの国力の源泉は、モノを製造するハードにあるのではなく、高度な教育研究機関に世界中の人材を集積するソフトにあり、アメリカの大学教育や科学技術、資本力は現在の不況下にあっても世界のトップレベルを維持している。 『貿易収支(外需による貿易黒字)』は日本の経済活動の一部分に過ぎず、GDP全体に占める割合も小さいので、景気回復や産業振興の政策では保護主義よりも自由貿易寄りのスタンスを取ったほうが全体の利益や成長の可能性が大きくなる。今後の日本経済の抱える最大の課題は、中小零細企業で働く従業員を中心とした『賃金水準の底上げ(冷え込んだ国内市場の再構築)』と失業者の再就職を容易にする『労働市場の流動性の向上・就業に特化した教育訓練の機会増進』である。 また、各企業が国内市場から十分な利益を上げていくためには、高齢化社会に対応した『高齢者の需要がある商品・サービスの開発』を進める必要がある。少子化社会・労働条件の要因によって、日本人からは十分な労働供給を集められない経済部門(医療・看護介護・農業・飲食サービス業など)も増えているが、この問題に関しては経済連携協定(EPA)を活用して、日本に友好的で働く意欲のある外国人を積極的に受け容れていく必要が高まってくると予測される。 現在でも、看護師・介護福祉士に関してはEPAによってフィリピンやインドネシアなど東南アジアの人材を中心に、看護師候補・介護士候補の外国人の試験的な受け入れが進められているが、職責に見合う公正な待遇を保障すれば、医療・介護系の資格を取得して日本で真面目に働きたいという外国人の人材を多く集めることが可能だろう(このケースでは、高齢者介護・看護分野などで日本人の労働供給が慢性的に不足しているので、外国人労働者を導入してもその分野で働きたい日本人の雇用を奪うという問題は生じてこないと考えられる)。 各国が一体となって財政出動と雇用創出に取り組むというG7の決定は歓迎できるものであるが、米国オバマ政権が提出した『民間資本の投資』との相乗効果を期待する約7870億ドル(約72兆5000億円)の景気対策修正法案によって、アメリカの景気を十分に牽引できるかは微妙という判断も根強くある。オバマ大統領が雇用回復の確信を持って断行する『グリーン・ニューディール政策』によって本当に350万人以上の雇用をダイレクトに創出できるのか、アメリカ経済の終わりが見えない金融機関の巨額の不良債権処理と合わせて、オバマ政権の厳しい経済運営は入り口に立ったばかりである。 ■関連URI バラク・オバマ大統領の誕生とアメリカ国民の熱狂:経済・外交の試練を超えてアメリカ再生の契機を掴めるか リーマン・ブラザーズの経営破綻とアメリカ金融の業界再編:複雑化・高度化する金融商品と金融危機のリスク アメリカの新聞社が『紙媒体』から『ウェブ中心』に業態転換:成長するネット広告に新聞はどう立ち向かう? アメリカの『双子の赤字』の拡大の深刻化:好調な日本経済の抱える格差の問題 ■書籍紹介 |
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シティやAIGの経営悪化を受けた金融危機再燃と世界同時株安。金融の本質と不良債権処理の問題
金融危機後の世界経済の落ち込みに終わりが見えない、依然として厳しい経済状況が続いている。サブプライムローンの焦げ付きやリーマン・ブラザーズの経営破たんから世界的な金融危機(信用収縮)が急速に深刻化していったのだが、現在では日米欧の先進諸国すべてで金融危機と実体経済の悪化がリンケージしており、泥沼の不況から抜け出すことができない。非正規雇用(契約社員)の解雇だけではなく正社員のリストラも始まっており、設備投資が必要な製造業(自動車・電機・機械)や信用力が低迷した金融業を中心にして雇用は大幅に... ...続きを見る |
カウンセリングルーム:Es Discov... 2009/03/05 09:53 |
日本「介護士が足りない。でも給料は上げたくない。そうだ!東南アジアの人たちに働いてもらおう!」
1 :番組の途中ですがアフィサイトへの転載は禁止です:2012/05/03(木) 23:34:38.21 ID:lSPF5uHE0 ?PLT(12000) ポイント特典厚生労働省は3月28日、EPA(経済連携協定)に基づいてインドネシアとフィリピン... ...続きを見る |
【嫌】 ニュー速 【儲】 2012/05/04 09:01 |
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