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Google日本法人の社長である村上憲郎さんが書いたシンプルな英語勉強法の本ですが、本書は『実用的な英語を身に付けるにはどうすれば良いのか?』という具体的な方法論のみに焦点を当てた本です。実際の英会話では良く『習うより慣れろ』と言われますが、本書も『試験のための語学』ではなく『実用のための語力』を伸ばすためにはどのようなトレーニングをすれば良いのかという視点を取っています。 外国語の勉強法や日本の英語教育については、過去に太田雄三『英語と日本人』の書評でも触れたのですが、もっとも効果的な英語教育は日常生活の会話や他の授業科目においても英語を使うような『正則の英語教育』です。 早い段階から英語の話し言葉(おしゃべり)や書き言葉に触れる時間の絶対量と英語でのコミュニケーションの必要性(外国人教師しかいない学校に通うなど)を増やせば、必ず英語の語学力・会話力は高まります。しかし、既に学校を卒業している人や日本国内の公教育を受ける生徒がそのような言語環境を手に入れることは通常困難です。また、ある程度の年齢になって『第二言語』としての英語を学ぶことと幼少期から母語に近い形で英語を身に付けること(バイリンガルになること)とは全くその意味合いと目的が異なります。 『村上式シンプル英語勉強法』に書かれている勉強法の本質を一言で言えば、スクールにも高額教材にも頼らずに『目的意識をもって英語環境(英語の文字と音)に触れる時間の絶対量を増やせ』ということになります。本書はページ数が少ないので短時間で読み終えることができますが、これから本気で『実用的な英語』を習得したいと思う人に役立つ勉強法のヒントや学習の目標が分かりやすく提示されています。 ビジネスや対人コミュニケーションに使える実用英語をどんな方法で勉強していけば良いのか分からないという人や外資系企業に転職して英語習得に苦戦した村上憲郎さんのちょっとしたエピソードを読みたいという人におすすめの内容になっています。本書のシンプル英語勉強法は英語の学習課題を『英語を読む』『単語を覚える』『英語を聴く』『英語を書く』『英語を話す』の5つに分けて、それぞれの具体的なトレーニング法と目標設定について書いています。 「Chapter1 英語を読む」では英語を日本語に逐一、訳しながら読むのではなく、英語を英語のままでストレートに一気に読んでいくという方法が勧められていますが、英語の実力を高めるためには『英語の内容』を英語で無理なく理解できるということが重要になってきます。その為には、学習用の辞典として『英英辞典(英単語の意味を英語で説明した辞典)』を用いて、どうしても意味が分からないときにだけ『英和辞典』を使うという方法が良いと思いますが、最近は英英辞典と英和辞典を融合させたような『英英和辞典』というものもあるようです。 著者の村上さんは、英語を英語のままでナチュラルに読みこなせるようになるためには、単語にして『300万語』を読むことが必要であると語っていますが、実現しやすい目標としてまずは『100万語』を読み切ってみてはどうかと提唱しています。100万語は小説にして約10冊、ノンフィクションならば約5冊ということですが、自分の専門分野の書籍や興味のある作家の小説などを洋書で読んでみたいという人であれば、このくらいの分量は比較的短期間で読めるように思えます。余談ですが、本書を読んで『どうして、AmazonでRobert P.Parkerという作家の小説が売れているんだろう?』という疑問が解けました。村上さんが『英語を読む』の中で初学者が読みやすい小説として、ロバート・P・パーカーのスペンサーシリーズ(探偵小説)を上げていたからということのようです。 ビジネスマンの読書家の場合には、どうしてもノンフィクションや教養書・実用書を中心に読むという人の比率が高くなりますが、『日常生活やコミュニケーションで使える英語』を勉強したいという時には、会話文の言い回しに多く触れるために『小説』を読んだほうがいいと思います。専門書・教養書の場合にはどうしても日常会話の中であまり使わないような難解で特殊な単語が多くなりますし、『説明口調の文体』と『会話口調の文体』は全く異なるものですから、普段の生活場面や対人関係における会話が頻繁にでてくる小説を読んだほうが実用英語の勉強には役立つと思います。『英語を聴く』という面においても、恋愛映画やビジネスものの映画を字幕なしである程度理解できるくらいのレベルになれば、日常的な会話のヒアリングで困ることは余り無いのではないでしょうか。 「Chapter2 単語を覚える」では、ネイティブの外国人が記憶している英単語が約7万語であり、日本人の英語学習者が目標とするのは「1万語」で良い、1万語をしっかり覚えられればビジネス英語ではまず困らないとしています。村上式の英単語の覚え方は、一語一語を丁寧に暗記していくのではなく、とにかく沢山の英語を毎日「ひたすら眺める」ことが大切としていますが、最終的には毎日1万語を見ることを目標にするように勧めています。「英語を読む」と「英単語を覚える」に共通する勉強のポイントは、『完全に理解できるまで前に進まない』という完全主義の勉強法を捨てて、『多少分からない部分があってもとにかく前に進め』ということです。 せっかく英単語集や英語の学習教材を買っても、完全主義に陥って前半の途中で教材を使わなくなってしまうことが多いという人は、ぜひ村上式の英語勉強法を採用してみてはどうでしょうか。一つ一つを完璧にマスターしようとして前半で挫折するのであれば、一つ一つが多少いい加減であってもとりあえず最後のページにまで目を通すことが『やり遂げたという実感』につながりやすく、何度も何度も初めから終わりまでざっと読み続けることで『単語の理解力・文脈の把握力』が上がってきます。 「Chapter3 英語を聴く」では、英語のヒアリングを語力向上の筋肉トレーニングになぞらえて、『英語が聴こえるようになるには、耳を鍛えて高周波を聴き取る力をつけるしかない』と結論付けています。『英語を聴く』の当面の目標設定は生の英語を『1日1時間×3年』で1000時間以上は聴くということであり、村上さんによると1000時間以上ネイティブの普通のスピードの言葉(会話)を聴いていれば自然にヒアリングできるようになるということです。また、『英語を聴く』でも『英語を読む・英単語を覚える』と同じように、すべての言葉を完全に聴き取ることを求めずに、まずはざざっと全体を聴き終えてしまうことを勧めています。 「Chapter4 英語を書く」では、ネイティブのような巧緻な英作文や英語圏の作家のような文学的な英語表現をすることは初めから無理だと割り切ろうと語っています。つまり、ビジネス場面で使える英語表現のテンプレートを用意して「英作文」よりも「英借文」をするようにしたほうが実用的であり、それ以上のレベルの複雑かつ高度な英作文は英語圏で執筆業(作家業)などをするのでない限り、一般のビジネスには必要ないということのようです。 また、英語圏の教育方針としても英語では『個性的な表現手法』よりも『共通のフォーマット(形式)』のほうが重要であり、文学的・哲学的な表現やメタファーを駆使した表現は日常生活ではほとんど必要ないということみたいですね。いろいろと意味を考え込まなければならないひねった表現よりも、すぐに誰にでも意味が分かるシンプルな表現のほうが使い勝手が良いよという当たり前といえば当たり前のことですね。しかし、普段、母語を使って複雑な思考内容や文学的な表現をすることが好きな人ほど『こういった複雑な内容や主観的な感情を英語で表現するにはどうしたら良いんだろう』と考え込んでなかなか英文が書けないのかもしれません。 「Chapter5 英語を話す」でも、日常の英会話で頻繁に使うのは『あいさつ』『依頼する』『質問する』『意思を伝える』『相手の意向を聞く』の5項目だけなのだから、この5項目についてある程度パターン化した表現でいいからそれなりに話せるようになればまず大丈夫という感じで話が進められていきます。日本語を母語として使いこなしていても『知らない日本語の単語・漢字』が数多くあるように、外国語としての英語の勉強というのはそれ以上に終わりが無いものです。 今ではGoogle日本法人のトップを務める村上さんでさえ、『外国人と話して知的水準が低いと思われるのが不満だった』という内容のエピソードがあるようなのですが、基本的に日本語で話して考えている時の知的水準を外国人相手にそのまま伝達することはおよそ不可能なことだと割り切ったほうが良いと思います。元々、日本語圏で頭が良い人(知識量が多い人)ほど、本当はもっと自分には知識があるのに、世界の政治経済や歴史・宗教についても日本語でならもっと流暢に深いレベルで話せるのにという不満が英会話には伴いがちですが、まずはパターン化した表現形式をしっかりとマスターして『自分についての簡単なスピーチ』ができるというレベルを目指すというのが結果として英語習得の早道になりそうです。 『村上式シンプル英語勉強法』は、英語の勉強法についてのガイドブックであり英語学習の参考書ではありませんが、巻末には英語学習に役立つ『おすすめの教材』も紹介されています。本書はさらりと気持ちよく読み終えられる分量のコンパクトな本ですが、『非現実的な完全主義欲求にとらわれずに、着実に英語に触れる時間(英語を使う時間)を増やす』という認知療法のエッセンスにもつながる英語学習のスタンダードな正攻法が示されていると感じました。 ■関連URI 太田雄三『英語と日本人』の書評2:“教養・知識としての英語”と“実用・道具としての英語” “道具としての外国語(英語)”の学習とL.S.ヴィゴツキーの内言・外言による言語の発達観 乳幼児期の言語発達(ことばの発達)と“話し言葉・書き言葉”の学習プロセスの違い “記憶力・集中力・モチベーションのアップ”と“仕事・勉強の効率的な進め方” ■書籍紹介 村上式シンプル英語勉強法―使える英語を、本気で身につける ダイヤモンド社 村上 憲郎 ユーザレビュー: 具体的・実践的で、や ... 高校までの英語が完璧 ... 評判がよかったので、 ...Amazonアソシエイト by ウェブリブログ |
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高校の学習指導要領の改定と“英語で英語を教える授業”・全国学力テストの結果の公開と競争の問題
義務教育過程の学力向上問題については、大阪府の橋下徹知事が『全国学力テスト』の結果の公開を求めて文部科学省と対立していたが、本格的な学問に至る以前の基礎学力養成の段階において、どのくらい競争原理を持ち込むべきなのかは判断が難しい。『学校間・地域間の学力競争』と『個人間の学力競争』とではその目的も意味合いも全く異なるものだが、『学校別・地域別のテスト結果』を公表する場合にはその相対的な成績(点数)の差が何に由来しているのかまで踏み込んで分析しなければ余り意味がないだろう。 ...続きを見る |
カウンセリングルーム:Es Discov... 2008/12/24 09:30 |
本田直之『レバレッジ英語勉強法』の書評:“完璧な英語”ではなく“使える英語”を学ぶ勉強法
日本の学校教育における英語の授業は『リーディング(読むこと)・文法と構文』に力を入れているので、『ライティング(書くこと)・ヒアリングとスピーキング(聴いて話すこと)』が得意な日本人は少ないと言われます。受験英語やTOEICのペーパーテストが得意であっても『英会話・英作文』が苦手な人は多く、英語のスキルが『自分のレベルに合った英文が読める』ということに特化されやすくなっています。 ...続きを見る |
カウンセリングルーム:Es Discov... 2010/06/17 07:00 |
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