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help RSS カウンセリングの基本技術としての『傾聴・中立性』:相手の話を引き出し自己洞察を深める傾聴の難しさ

<<   作成日時 : 2008/10/31 02:54   >>

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カウンセリングや心理療法にはさまざまな理論や技法があるが、その最も基本的な技術は『傾聴・観察』『クライアントの問題への興味の表示』である。カウンセリングの目的には大きく分けると『客観的な問題の解決(症状の緩和)』『主観的な心理の変容(安定や成長の促進)』というものがあるが、初回面接(受理面接)では『相手の話したい内容を聴く』ということに最も重点を置く他はない。専門的な対人援助技術に関わらず、良好な相互性のある人間関係の基盤には『相手の話をお互いに良く聴く』ということがあるが、対人援助場面における対話では『クライアントの話と経験を良く聴く』ということに重要なプライオリティがある。

指示的技法であるか非指示的技法であるかによっても異なってくるが、クライアントにやるべき課題や効果的な対応・情報を提示する形式を取る指示的技法(心理教育)であっても、『クライアントの悩みの中核・本質』を的確に聞き取ってその内容をクライアントに分かりやすく伝えていくことになる。こういったクライアントの抱えている問題や悩みに沿って素直に応答していくことを『クライアントの鏡』『分析家の中立性』といった概念で表現することもあるが、クライアントの問題や価値判断に柔軟に対応するためには『カウンセラー側の固定的な思考・価値のフレームワーク』をある程度崩しておく必要がある。

一般的なコミュニケーションでもカウンセリングでも、相手の話を聞くや否や『自分の道徳観・経験則・社会常識』に照らし合わせて相手の行動・発言や人間関係の是非善悪を判断したのでは、相手がそれ以上の考えや感情を話そうとする意志を挫いてしまう。分析家(カウンセラー)の中立性とは、自分個人の人生経験や人間関係、知識学習によって培ってきた『人間・考え方の好き嫌い』『行動の善悪の分別・社会的な常識感覚』を通して相手を見るというところから一旦遠ざかって、中立的あるいは共感的なスタンスでクライアントの問題状況を観察し『思考・認知の枠組み』をできるだけクライアント側の枠組みに置き換えるということである。

誰でも他者から相談を受けるとまずは自分の人生経験や常識感覚のスタンスから『自分ならこうする・私ならこういう風に考える・それは社会一般的にはどうなのだろうか』という方向に話の流れを持っていきたくなるし、自分の『思考・認知の枠組み』を保持していたほうが自分自身のアイデンティティや価値認識のぶれがなくなって安定した回答を与えられそうな気がしてくる。『自分はその問題や悩みについては既に克服した人間である・経験者(成熟した大人)である自分が未経験者(未熟な精神状態)である相手に正しい考え方を教えて上げる』という態度は、恋愛・結婚・育児・親子関係などの人生相談で往々にして見られやすい態度であるが、『自分は答えを知っている・相手は答えを知っていない』という立場の非対称性は、医学的な診断面接では有効であるがカウンセリングのような対人援助プロセスでは余り有効ではない。

非対称的な関係性をカウンセリングや相談で前面に押し出してしまうと、相談に乗る側の承認欲求や自己顕示が反映されやすく、『相談している側の利益・満足感』『相談を受けている側の利益・満足感』が逆転してしまうことがある。一般的な人生相談の中で『相談したのに何となくすっきりしない・一方的な説教を受けたようで何となく気分が滅入る・自分の悪いところや間違いばかりを指摘されて話は余り聴いてもらえない・相手の経験や思い出話を長い時間にわたって聴かされた』というような状況もあり得るが、相手の立場や感情に沿って話をゆっくり聴くというのは精神的に疲弊することでもあるので、多くの人は『自分の意見・経験』をぶつけながら『相手の心情・考え』を常識的な方向に誘導するという相談形式を採用することになる。

しかし、相談を受ける側が優位な立場(教える立場)に立つ『立場の非対称性・聴き手の価値判断』が影響し過ぎると、相談している側が精神的に萎縮してしまって話したいことを思い通りに話せない遠慮が生まれてしまうので、専門的な対人援助(カウンセリング)では『カウンセラーの中立性』を意識しながら相手の話したい話題や感情のほうに自分が合わせるようにするのが基本である。クライアントが自分の話したい内容や考えを自由に遠慮なく話すためには、『この人はこういう考え方を嫌っているみたいだ・こういう人間や行動に対して不快感を感じるようだ・こんな話をしても大丈夫なのだろうか』といった価値判断の先入観をカウンセラーに対して抱かないで済むようにすることが重要である。

一般的な人間関係では『この相手に対してはこの種の話題や嗜好、価値観はタブー』というような相手ごとの話しづらい話題や考えというのが存在するものだが、カウンセリング場面では『分析家(カウンセラー)の中立性』『自己分析によるカウンセラーの安定性』によって可能な限りタブーの領域が縮減されている。社会常識に照らし合わせて特殊な悩みや嗜好、症状、想像(観念)を持っているほど、こんな話をしたら自分が否定(批判)されたり軽蔑されるのではないかという対人評価や自尊心にまつわる不安を持つものであり、『かくあるべき理想の自分・守らなければならない常識的規範・恥辱や非難を恐れる自尊心』によって誰にも自分の悩みや問題を話せないという状況に陥りやすい。家族や恋人、友人(同僚)といった親しい人にも『自分の深刻な悩み』を話せないという状況には、大きく分けて二つのケースを想定することができる。

『家族や恋人との関係そのものが悩みの要因になっているケース』『家族や恋人といった親しい人だからこそ聴かれたくない悩みを持っているケース(あるいは、家族などに話しても基本的性格の違いなどから自分の内面や嗜好の悩みを理解してもらうことは難しいと自分で予測しているケース)』である。そういったケースを中心にして対応するカウンセリング場面の特殊性は、時間・場所・料金など『面接の枠組み』が設定されていることと『中立的な態度(タブーや審判性の排除)・作業同盟による共感性』が前提されているということにあるが、制約的なカウンセリングの枠組みがあることと無条件的な共感や受容を示せることには強い相関がある。ある程度熟達した心理臨床家(カウンセラー)であっても、日常的に無制限に接触して会話する家族(配偶者)・恋人・友人に対して絶えず共感的・受容的・中立的な対応を取り続けることは不可能であり、カウンセリングのセッションという枠組み設定に守られることで『一人のクライアント』に集中的な関心と配慮を注ぐことができるのである。

相手の話や行動を受容的に受け止めて共感的に支持するカウンセリングマインドはあらゆる人間関係を安定させるという意味で有効な側面を持つが、相互の役割関係が定まっていない通常の社会生活ではカウンセリングマインドだけでコミュニケーションを行ったり職務活動を遂行したりすることは難しい。自分の価値観や感受性、好き嫌いとかけ離れた『相手の思考・認知の枠組み』に自分の意識を合わせて調律させることは精神的ストレスや負担感を強めるので、いつも相手の立場や心情に立って物事を考え行動するというのも現実的ではない部分がある。カウンセリングマインドや対人援助技術というのは、限定された時間や人間関係の枠組みの中で『精神発達の促進・人格構造の変容・問題状況の解決』といった効果を最大限に発揮するが、カウンセリングの効果を導き出す重要な要素は『洞察(気づき)の発生』『認知(解釈)の変容』であり、獲得された洞察や認知が実際の行動試行と結びついた時に問題が解決に近づくことになる。

カウンセラーとクライアントの間の相互的信頼関係であるラポールを築くためにも前半で書いた『共感的な傾聴』が必要になってくるが、対人援助プロセスが順調に進んでいくと『自己探索(過去から現在までの自分の内面や行動の探索)』『自己理解(今まで抑圧した内容への気づきを伴う自分に対する理解の深化と明瞭化)』へと発展していき、自己アイデンティティの再構築や問題状況の解決といった効果につながる可能性が高まってくる。精神分析的な技法では自己理解の深化のプロセスにおいて、過去の重要な人間関係(家族関係)を振り返ってその時々の感情や問題点を明確化していく『転移分析(転移感情の再体験・情的理解)』が重要視されるが、自己アイデンティティの混乱や家族関係を伴う問題では必然的に『内面や過去の探索による転移感情の取り扱い』が課題になってくることが多い。

カウンセリングで特定の目標設定を定めているケースでは、『自己探索の拡大』と『自己理解の深化』に加えて、問題解決を目指す行動計画の立案と実践というのが大きな課題になってくる。行動計画を実践していく段階では、『適応的な行動・クライアントに役立つ行動』をより多く引き出すために『クライアントの行動・発言の結果』に適切なフィードバック(賞賛・助言)を与えていく。クライアントの話したい内容を丁寧に『傾聴』することはカウンセリングの基本であるが、効果的に『傾聴+共感的な応答』を用いることによってクライアントの内面的な洞察を引き出すことができ、これからの人生の方向性や実行しやすい(納得のできる)問題の解決法を明確化しやすくなる。






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