カウンセリングルーム:Es Discovery

アクセスカウンタ

help RSS ワンルームマンションでの隣人関係とセキュリティについての雑感:地域社会におけるコミュニケーション

<<   作成日時 : 2008/06/02 12:21   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 1 / トラックバック 0 / コメント 0

東京都江東区潮見のマンションで起きた事件について書きましたが、その後に警察の捜査・聴取が進み犯行の具体的な時系列も明らかになっているので追記しておきます。女性がピアスと血痕を残して行方不明になった当日(4月18日)の午後11時、警察が初めて星島容疑者の部屋を訪問した時には、女性はまだ生存していたという自供が為されていますが、再度、翌19日の午前2時頃に警察が訪問した時には亡くなられていた可能性が高いようです。マンションの防犯カメラの解析が終わっていない段階での任意の事情聴取(家宅捜索)だったので限界はあったと思いますが、その後の捜査手法では、容疑者含むマンション住民が外部に持ち出す手荷物・ゴミ袋を厳しくチェックしていなかったという捜査上の問題点が指摘されています。

21日の深夜0時頃に、容疑者がビジネスバッグと筒状の入れ物を持ってマンションを抜け出した時にノーマークだったというのは不可解な感じがしますが……近くのコンビニで容疑者がゴミ袋を購入した際に、コンビニ店員がレジ台においたバッグから漏れ出す血液について指摘しており、さらに容疑者はコンビニのゴミ出しの曜日を店員に質問したといいます。本来であればこの目撃情報から厳しい追及があってもおかしくないと思うのですが、この段階では複数回の家宅捜索と事情聴取でマンション住民は捜査対象からかなり外れていたのかもしれません。

一般的な国民のイメージとしては、マンション内部で犯罪が行われた可能性が高い時には、マンション住民の持ち出すゴミ袋や手荷物はかなり厳しくチェックされるというイメージがありますが、行方不明後の具体的な犯行内容が不明であったことや一通り複数回の任意の家宅捜索を行ったことで、マンション住民に対するチェック体制(懐疑)に甘さが出て警察の意識がマンション内部と外部に分散してしまっていたのではないかと推測します。外部犯によるマンション外部への連れ出しの可能性が僅かであれ残っていたこと、常識的に考えてすぐにばれるような内部犯による自室への拉致が行われるとは想定しがたいことが盲点になっていたように感じました。

後付けで論理的に考えれば、4月18日の女性が行方不明になった同時間帯に容疑者と被害女性しか9階にいなかったこと、防犯カメラに女性がマンション外部に出た映像が残っていないこと(内部犯であることがほぼ確実であること)、違う階の住人が非常階段を使うというリスクを犯してまで9階で女性を襲うとは考えにくいこと(違う階の住人であればマンション外部で行うであろうこと)を考えると、必然的に容疑者以外の人間が犯行を行う可能性は極めて低い(ほとんどない)という結論に辿りつかざるを得ませんが……防犯カメラに映らない僅かな死角があったことと家宅捜査・事情聴取で不審点を発見できなかったことで捜査の方向性が混乱したようです。

このショッキングな事件の余波として、都会部のマンション・アパートといった集合住宅におけるセキュリティや隣人とのコミュニケーションも話題になっていましたが、都会のマンション・アパートの利点の一つが『親密な隣人関係(近隣住民との付き合い)』『自分のプライバシーに対するご近所の視線』を意識しなくても済むという点にありますからこの問題の解決は簡単ではないでしょう。そもそも、都会部のマンション・アパートには家族世帯か一人暮らしかにも拠りますが、私生活(プライベート)にまで密着したコミュニティ機能・交遊関係というのは通常求められていませんから、『(最低限の安心のために)隣人とお互いを知り合う』にしてもその距離感を適切な距離に保つことが極めて難しい状況にあります。

マンションの自室での生活行動はそのままプライベートですから、会社のオフィス(職場)にいる時のように『仕事とプライベートの切り替え・役割行動的なその場だけの対応』をすることも難しく、必要以上に相手から好意や興味を持たれてしまうと自室でのプライベートな時間・空間を保ちにくくなったり、自分が望まないコミュニケーションのコストが大きくなったりします。家族世帯の多いマンションのゴミ出しの日に時折見かける光景でも、話し好きで地域コミュニティでの面倒見のよい中年女性が何人かいたりして、マンション住民の一人一人に世間話や家族の話をしたりしますが、大半の人は自分の話は余りしたくないようですし話しかけられるのが面倒なのかその人がいない頃合を見計らってゴミ出しを済ませてしまう人もいます。地域コミュニティで話し好きな人に若い世代の人というのは余りいないものですが、定年退職した夫がいて生活と時間に余裕がある専業主婦であったり、安定した生活をしていて町内会やPTAなど地域活動に興味を持っているような人であったりすると、地域コミュニティでのコミュニケーションを積極的に求めていることも少なくないのではないかと思います。

地域コミュニティで隣人とのコミュニケーションや人間関係を求める欲求の強さというのは、『その地域にどれくらい長く住むつもりか(どれくらい長く住んでいるか)・親同士の情報交換が必要になる子どもがいるか・地域コミュニティ外部でのプライベートなコミュニケーションに費やす時間が少ないか・コミュニティ的な固定した人間関係(自分への関心)を煩わしく感じないか』などに比例します。反対に、『地域コミュニティ外部におけるコミュニケーション・人間関係・趣味娯楽の重要度(それに費やす時間と労力の大きさ)』が高くて、更に子どもを介した親同士の付き合いなどがなければ、地域コミュニティでのコミュニケーション欲求とその必要性は極めて低くなります。それらのことから、独身者の若者(10代〜30代)が多いワンルームマンション・アパートでは、隣人とのコミュニケーションやご近所関係が自発的に発生するとは考えにくく、若者でなくても地縁・血縁・職業上の利害などがない匿名性の高い集合住宅ではなかなか自発的なコミュニケーションを取ろうとする人はいないでしょう。

翻って防犯上の観点から考えてみても、『ワンルームマンションでの密接なコミュニケーション(自分からの声かけ)』が一人暮らしの女性の防犯上の利益になるのかというと微妙ですし、江東区のマンションのような特殊性の高い事件を、現代社会におけるコミュニケーション(近隣関係)の希薄化の問題一般に置き換えるというのは的外れのように思います。早朝に『めざましテレビ』のニュースで、マンションで一人暮らしをする女性へのアンケートを行っていましたが、『マンションの隣人のある程度詳しい情報(顔・名前・家族構成・職業など)を知りたい』という女性が大半であるものの、『自分については“自分の顔”と“名前(名字)”以外の個人情報は一切知られたくない』という女性がほとんどでした。男女間の犯罪の殆どが面識者との間や恋愛感情のもつれ(あるいは一方的な好意やストーカー)で起こっていることを考えると、統計的には『自分のことをあまり知らず自分に特別な興味・欲求を持っていない人』のほうが安全であることになりますから、中途半端に隣人の男性に愛想良く話しかけて『相手の関心・好意』を自分に引き付けたくないという判断は合理的なものだと思います。

インターネットでの『個人情報のコントロール』というのもよく問題になりますが、自分が実際に一人で住んでいるマンション・アパートでは、自分の“私生活の平穏”にとって極めて重要な個人情報である『住所』が相手に対して既に分かっていますから、インターネット以上に個人情報の開示には慎重であるべきでしょうね。家族世帯・夫婦世帯の多いマンション・アパートであれば、一人暮らしの男女が混じっているワンルームマンションよりも個人情報を開示する抵抗は少なくなると思いますが、ワンルームマンションの場合には相手の性格特性だけでなく相手に配偶者や恋人がいるのか否かも分からないので、『自分への関心の持たれ方(異性として見られる可能性)』が既婚者や子持ちの人よりも予測しにくい不安があります。近所づきあいや地域コミュニティが大切だといっても、ワンルームマンション(単身世帯が多い賃貸物件)と家族連れの多い分譲マンションとのコミュニケーションのあり方は必然的に違ってくるわけで、余り頻繁に話し掛けていても、女性の場合は余計な勘違い(望まない好意)やトラブルを引き寄せるリスクのほうが高くなります。

家族世帯と違う一人暮らし世帯の近隣関係の難しさは、隣人から一方的に好意を持たれる不安というのもありますが、隣人と一定以上に親しくなりすぎると家族世帯と違って『プライベートな時間・空間』を維持しにくくなる(もうすぐ家族が帰ってくるから長話できないなどのその場を去る理由がつけにくい)というのもあります。基本的に、一人暮らしのさまざまな属性を持つ男女(匿名性の高い個人)が生活するワンルームマンションのような形態では、『相互的なプライバシーへの無関心』『相互に危害を加えない漠然とした信頼感』がないと逆に安心して住めないという逆説的な結果に辿りつきます。一人暮らしの女性の多くが『自分の個人情報は知られたくないけれど、相手の個人情報はある程度把握しておきたい』というアンケートの回答を出していたことが印象的ですが、『絶対に他人を傷つけない・他人に対する悪意を持っていない』という確実な保証ができるのは自分自身だけなので、こういった非対称的な個人情報に対するセキュリティ意識(他人についてだけ一定の情報を知っておきたい)というのは男女を問わず普遍的なものなのかもしれません。

しかし、更に踏み込んで考えるならば、一般的な個人の属性として示される『氏名・年齢・家族構成や婚姻関係・職業・年収・周囲の評価(職場での印象)』を知ったとしても、江東区のマンションで起きたような特殊な人格・衝動・動機に基づく事件は未然に予防することはできないでしょうし、星島容疑者の一般的な個人情報を事前に知っていても、彼がこのような事件を起こす人物だとはとても予測できません。また賃貸マンションを借りている時点で、最低限の職業・収入といった属性は不動産会社・オーナーによって確認されていることが殆どですので、属性的な個人情報を知ったとしても防犯上のメリットは乏しいように思います。仮に、隣人が暴力団構成員や無職者であっても自分の住むマンションで押し込み事件を起こす蓋然性と有意な相関を持っているとは思えませんし、通常は累犯者であっても自分の住んでいるマンション・アパート内部で犯行を実施するような人はまずいないでしょう。

一般的に確認可能な個人情報をすべて入手したとしても多くの重大事件の容疑者が、周囲の人や職場の上司・同僚から『そんなことをするような人にはとても見えなかった』と評されているように、事前の属性・情報からその人の行動を十分に予測することは難しいと思います。犯罪統計的には自分の住むマンション内(集合住宅内)で重大事件に巻き込まれる可能性というのは低いですが、部屋の出入りの際の個人的なセキュリティ対策の心がけと合わせて、女性が多いワンルームマンションでは部屋前の通路にも防犯カメラをつけたり、男女が住む階を分けたりなどのシステム的な対応を進めることでセキュリティ上の安心感を高めることができるのではないでしょうか。






■関連URI
個人主義的なプライバシーの尊重と結婚制度を巡る認識の多様化:コミュニティの社会的圧力の観点から

現実社会とウェブ世界におけるコミュニケーションの特性と差異:ウェブ・リテラシー教育の必要性

“贈与―応答の原理”によって維持されるコミュニケーション:贈与(パロール)と人間関係の距離感の調整

■書籍紹介
よくわかるコミュニティ心理学 (やわらかアカデミズム・わかるシリーズ)
よくわかるコミュニティ心理学 (やわらかアカデミズム・わかるシリーズ)

テーマ

関連テーマ 一覧

月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 1
なるほど(納得、参考になった、ヘー)

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コンテンツ&本の紹介

Es Discovery's Encyclopedia(百科事典的なアーカイブ)

ESD ブックストア(インスタントストアで色々なジャンルの本を紹介しています!)

心理学の事典や臨床心理学の概説書

S.フロイトとC.G.ユングの書籍
ブログアーカイヴ
2005年
3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
2006年
1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
2007年
1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
2008年
1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
2009年
1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
2010年
1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
ワンルームマンションでの隣人関係とセキュリティについての雑感:地域社会におけるコミュニケーション カウンセリングルーム:Es Discovery/BIGLOBEウェブリブログ