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前回の記事の続きになりますが、仕事でも育児でも、『しっかり丁寧に集中してやるべき部分=ミスが許されないところ』と『少し手を抜いてゆったりやってもよい部分=完璧でなくても良い部分』との区別をつけて毎日の行動にメリハリをつけることが大切です。周囲の人に協力してもらってほんの短い時間であっても、自分の身体と気持ちを休められる時間を作れるようにすると、『大変な時には夫(家族)が手伝ってくれる』という安心感を持つことができます。反対に、夫が自分の問題(仕事・趣味)にしか関心がなく育児の全てを妻に丸投げしてしまうと、『どんなに大変でも自分ひとりでやらなければいけない』という孤独感が強まり、育児に対する過度のプレッシャーに晒されてしまいます。 この育児におけるプレッシャーは、『夫には仕事が忙しかったから子どもに十分な手を掛けて上げられなかったという逃げ道があるけど、育児に一日の大部分を費やしている自分には子どもの健康・安全・発達に対する大きな責任がある』という認知によって生まれるもので、実際の社会世論でも夫よりも妻(主婦)に育児上の問題の責任を押し付けやすいという傾向が見られます。性別役割分担のジェンダーや発達心理学的な母性神話、妊娠・授乳の可能性など生理学的要因の影響によって、『母親の愛情』を『父親の愛情』よりも重要であると評価する人が少なくないからですが、最近は夫と同等に働く女性も増えているので単純接触時間に限定すれば夫婦で余り差がない家庭も増えていると思われます。 とはいえ、社会的に母親の愛情の重要性を押し付けられるという側面だけではなくて、『自分が出産の痛みに耐えてこの子を産んだ』という実感や『家事を女性と同等にこなせる男性がまだ依然として少ない』という状況などによって、母親が自分自身で母性愛に伴う育児の責任を強く実感するという部分もあります。育児ストレスをどのくらい強く感じるのかは、『周囲の人たちからの理解・協力』の要因以外にも、『母親としての役割や愛情』をどれくらい違和感なく受容できるかということや『出産時の感動の強さ(子どもを持つことへの期待の強さ)』などに影響を受けます。そのため、配偶者や周囲から『あるべき母親像(妻像)』を押し付けられているという思いが強い人ほど育児に対する負担感や抵抗感が強くなるわけで、内発的(自発的)に『このような母親になりたい』という目的意識を持って育児に臨むことでストレスを緩和することができます。 虐待や育児放棄(ネグレクト)など緊急性のある問題がある場合を除いて、配偶者や親族は自分が『理想的・標準的と考える母親像』を批判的に押し付けるのではなくて、本人が模索している母親としての役割(アイデンティティ)を支持的に受け止めていくことが必要であり、夫との父親としての役割(アイデンティティ)と合わせて子どもに対する愛情や責任を相応に分担することが大切だと言えます。シングルマザーや離婚者などで周囲の親族の積極的な育児の協力が得られない場合は、一人でこなす仕事の分量・責任が増えるので大変ですが、心理的なケアとは別に、行政施策による入所希望者が多い地域への保育所の増設や低所得世帯への経済支援の増加、小児医療体制の充実など公的な育児支援の拡充が臨まれます。保育所を利用する家庭のライフスタイルの多様化に対応するためには、公立の保育所だけではなく就労の有無に関わりなく子どもを預けられる私立の託児所(認可外施設)も必要になってきます。 少子化の進展で『将来の保育ニーズの高まり』がどれくらいあるのか予測し辛い面がありますが、終身雇用制・標準世帯(会社員の夫・専業主婦・子ども二人)が当てはまらない家庭が増えた現在の日本と80年代以前の日本とでは『子どもの教育・保育に求めるニーズの多様化』という大きな違いがあり、家庭での保育・教育機能が時間的制約により低下する傾向にあります。この保育施設拡充の問題は、少子化の時代になぜ学校教員の数を増やさなければならないのかという問題とも相似形であり、保育士や教師の増員の要請には『家族構成・家庭機能の変化』や『教育・保育に求められる質(水準)の向上』が関係しています。 国も地方自治体も財政赤字が拡大しているので、教育・保育・育児支援に十分な予算を割くことが難しい状況がありますが、夫婦が働いて子どもを育てるDEWKS(Double Employed With KidS)が増大している現状に対応する保育体制の再整備が必要です。教育政策では、両親の経済力(教育投資)によって子どもの学力に大きな格差が生まれないように、民間の学習塾(進学塾)と同等な教科指導力を基準とした『公教育の再生』を進めて欲しいと思います。学習指導に限って言えば、『本人の学習能力・教科別の特性を個別的に伸ばす』という教育の原点に立ち返ると、習熟度別授業や飛び級、教員の増員などの問題が出てきますが、『教育機会の平等性』というものが生徒の理解度と無関係に同じ授業をみんなで受けることを指すのか、生徒の理解度・適性に応じた柔軟な授業を受けられるようにすることを指すのかを教育行政(文部科学省)で議論すべきでしょう。 学校教育には集団生活への適応や基本的な社会規範の習得という課題もあるので、『学習指導・集団活動・生活指導』のバランスを取りながら子どもの将来の生活・仕事・人間関係に役立つ教育改革を行っていって欲しいと思います。幼稚園の入園者数の減少と保育所の入所者数の増大というアンバランスを改善して地方自治体の財政支出を削減するための政策として『幼保一元化』の提案もなされていますが、幼児教育(幼稚園)と児童福祉(保育所)の役割分担と子どもの安全性確保を強調する立場から、子どもの生活(保育)の場と幼児教育の場を統合する幼保一元化には根強い反対意見も多くあります。この問題には、資格制度によって職掌分担がなされている幼稚園教諭と保育士の仕事の本質的な差異は何なのかという位相と、子どもを幼稚園・保育所に預けるニーズ・目的の違いを一元化した児童福祉(児童教育)施設で十分に達成できるのかという位相があります。 ■関連URI “子に対する親の保護・支援”の過大評価と子どもの独自性の尊重:家族・個人の“生きるという前提” 結婚生活・子どもの育児に対する過度のセキュリティ意識と完全主義欲求:自己責任原理によるストレスの増大 ■書籍紹介 子育ては、いま―変わる保育園、これからの子育て支援
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育児・子どもへの苦手意識に対する母性神話の影響:母親アイデンティティの受容と間接的な承認欲求
保育・教育政策の話から育児不安の話題に戻りますが、もし子どもに何かあったら私の責任(自分の育て方の間違い)にされてしまうのではないかという母親の養育責任に対する不安は、夫が育児に関与せずに『お前に全部子どものことは任せている』というような態度を取るほど強くなります。子どもに何か問題が起きたらという不安は、子どもが乳幼児の時には『健康上(病気や事故)・発達上(言語や知能の発達)・しつけ上(マナーや行儀)の問題』について感じ、子どもが児童期以上の年齢になってくると『学校の成績や不登校・友達との... ...続きを見る |
カウンセリングルーム:Es Discov... 2008/02/26 23:38 |
家庭生活(夫婦・育児)と仕事の両立に関係する多重役割の受容とポジティブ・スピルオーバー
現代的な核家族における母親の育児不安について、過去の記事でワーク・ライフバランスの観点から書きました。一般的に、育児不安を構成する要素は以下の6点に集約されますが、子どもを持つDEWKS(double employed with kids)の世帯では特に『母親・父親の多重役割(multiple role)の受容』の問題が立ち上がってくることがあります。 ...続きを見る |
カウンセリングルーム:Es Discov... 2008/03/05 07:08 |
勝間和代のクロストーク『早婚の勧め』に関する雑感:現代日本における晩婚化・少子化・社会保障の問題
『少子化・晩婚化・社会保障制度の維持』などの諸問題を解決する一つの方策として、勝間和代氏が『早婚の勧め』を提唱されていますが、読者から多数のコメントが寄せられているので、現代日本の婚姻や少子高齢化の事象を多角的に考察する視点を得ることができます。 ...続きを見る |
カウンセリングルーム:Es Discov... 2009/06/05 01:09 |
先進国での少子化問題・人口減少と世界全体における人口増加問題:社会保障制度と相互扶助の道徳
『晩婚化‐少子化の問題』というのは、漸進的な『人口減少問題』として認識されがちであるが、正確には人口が減ることが問題であるというよりも、世代別人口(人口ピラミッド)の人口比が偏ることが問題となっている。日本の少子高齢化問題については、その進行を非常に心配して急いで少子化対策を強化すべきという主流派の意見がある一方で、少子化そのものを人口増加を抑制するある種の自然の摂理と見て余り問題視しない意見もある。 ...続きを見る |
カウンセリングルーム:Es Discov... 2009/06/18 03:14 |
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