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help RSS 他者(社会)からの影響を拒絶するA群(クラスターA)の人格障害:現実と想像の境界線で孤立しやすい人

<<   作成日時 : 2007/11/02 20:55   >>

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過去の記事でクラスターBの人格障害について解説したが、クラスターAの妄想性・分裂病質・分裂病型の人格障害に共通する精神力動は『自己の主観的かつ妄想的な世界像』を懸命に維持するために、現実社会や対人関係を無視して拒絶することである。自分の都合のいい現実解釈や世界認識に執着してその妄想を修正することが困難であり、『自己の内面世界のイメージ及び悲観的な物語』を絶えず外界に投影しようとする特徴を持つ。何故、このように自分の想像力や無意識的欲求が作り上げた『非現実的な世界像』にこだわるのかというと、A群の人たちは『他者の自己に対する影響(自分の生活行動パターンの変化)』を非常に嫌っており自分の人生や自分が生きる世界を内面的な表象操作(妄想・空想)によって完全にコントロールしたいと考えているからである。

A群の人たちが最も希望する状態とは『変化のない日常の繰り返し(妄想や空想の内容を維持できる自閉的な生活)』であり、その為に非社会的な問題状況が深刻化して他人との接触が一切なくなったり、家族が居なくなると経済的に困窮してしまうこともある。A群(クラスターA)の人格障害とB群の人格障害の最大の違いとして『A群=過度の内向性と外的刺激の拒絶・B群=過度の外向性と外的刺激の欲求』があり、A群は内面世界に閉じこもるがB群は内面世界を無視する傾向がある。B群はA群以上に一まとめにするのが難しいが、特に、境界性人格障害では『現実の他人への執着(見捨てられ不安)』が強く、大切な他者の対象恒常性が形成されていないので、愛情や安心感を与えてくれる他者にいつも関わろうとする。

演技性人格障害では『内面世界の空虚さ』が顕著であり、自己アイデンティティが拡散していて『他人の要求・願望・流行を反映した定型的な行動』しかほとんどできない。B群の演技性人格障害は、過度に外向的なパーソナリティで『他人からの愛情と承認(注目)』に非常に高い価値を置き、『内面的な要素(想像・知性・信念・内省)』などには余り高い価値を見出さない。他人が注目してくれない場所や誰からの承認も得られない行動では決して満足感や安心感を得ることが出来ないのが演技性人格障害の特徴であり、B群全体でいうと『一人で過ごす時間を回避する傾向』が強く見られる。A群はB群と比較すると非社交的であり一人の時間を好み、『他人の要求や期待』によって自己アイデンティティが壊されてしまうような恐怖感を抱えているので、何かを求めてくる他人と極力関わらないようにしたいと思っている人が多い。

B群の人たちは行動的次元で『自己の特別化』を図って他人に影響を与えようとするのだが、A群の人たちは想像的次元で『自己の特別化』を図って他人からの影響を一切シャットアウトしようとするのである。どちらも自分の幼児的な全能感に起源を持つ『理想的な世界・他者の姿』を追求している点では同じであるが、B群の人格障害は、現実世界(人間関係)に無理やりに感情的にコミットしながら、自己の利益をアグレッシブに得ようとする。反対に、A群の人格障害は、現実社会や対人関係を無視して独我論的な世界の中で生きようとし、自己の利益を妄想的に獲得しようとするのである。境界性人格障害が強く信頼できる人間を求め、反社会性人格障害がお金や快楽を求めるように、B群はある意味で現実社会の価値体系の中からしか満足感を引きだせない。反対に、A群は現実社会や実際の他人と直接関わらなくても自分固有の妄想的な満足感を感じている可能性がある。

A群の人たちは、他人の意見や助言によって自分の行動パターンや価値観が変化させられることを『従属・劣位・不自由の状態』と考え、他人の意見やアドバイスによって自分が一切変わらないことを『支配・優位・自由の状態』と考えるような傾向がある。妄想性人格障害(paranoid personality disorder)では、特に、そういった物事を『完全に良いもの』と『完全に悪いもの』に二分法的に分けて考える原始的防衛機制の『分裂(splitting)』の影響が強く見られる。

A群の人格障害は精神分析的(対象関係論的)には、幼児的な全能感が見られる自他未分離な『口愛期(oral stage)への固着・退行』と解釈されているが、その病理的な行動パターンの中核にあるのは『他者への徹底した不信感(迫害や欺瞞に対する被害妄想)』であり、『現実社会や対人コミュニケーションを楽しむ能力の欠落(感情反応の鈍磨や無気力・無関心)』である。A群の内的な対象関係には、自分を騙そうとしている他者や自分を罠にはめようとしている他者、自分の悪口を広めている他者などが存在していて、他人を心から深く信頼することが自分の身の破滅につながると確信している。この他者に対する強固な不信感や現実世界に批判的な認知傾向を修正することは容易なことではない。

発達早期の段階で獲得されることが望ましい『他者に対する基本的信頼感・コミュニケーションへの欲求』は、育児放棄(ネグレクト)の体験や情緒的コミュニケーションの欠如した成育環境などによって障害されることがあり、両親(近親者)への不信がそれ以外の他者への不信につながっているケースも見られる。また、児童期から思春期の学校環境への不適応(いじめ・不登校)によっても他人が信じられなくなったり現実的な生活への希望(関心)が弱まったりすることがあるが、一定の年齢にまで成長していれば、性格特徴の根本にある対人欲求や現実認知が病的に減退することは殆どないと考えられる。A群の分裂病質や分裂病型の人格障害では、現実認識能力が低下していて他人と現実状況の認識を共有することが難しくなり、A群の人たちは他人と積極的に関わろうとしないので社会環境・対人関係から孤立しやすくなる。

A群の人格障害の問題に対する心理療法やカウンセリングでは、相互的な信頼感や対人的な自尊心を培うために『支持療法(クライアント中心療法)』を用いて他者に対する不安感や警戒心を和らげていき、『他人と関わることの面白さや楽しさ』を少しでも感じられるような体験を積まなければならない。『現実的な人生やコミュニケーションを楽しむ能力(喜怒哀楽の感情機能・感動を生む感受性・物事への意欲)』をある程度回復させることが出来れば、個別的な人生経験や人間関係を通して『他者に対する基本的信頼感』を再構築できる可能性が高くなるが、妄想的な世界観を一挙に突き崩すような暴露療法(エクスポージャー)は心理臨床家への不信感を強める危険性が高い。

まずは、現実の満足と想像の満足の質的差異を認知できるようにカウンセリングを進め、自分の人生に現実的なレベルの興味や意欲を持てるようになることが重要な課題となってくるだろう。『非社会的な行動パターン・妄想的に創られた世界観』では十分な満足感が得られなくなった時に、具体的な社会活動や人間関係を通して『他者の評価・好意・関心』を得ようとするモチベーション(動機づけ)が高まりやすくなる。最終的には、他人と積極的にコミュニケーションできる『対人スキル・コミュニケーション欲求の向上』や現実的に自分の人生や物事を考えられるようになる『現実吟味能力の改善・妄想的な認知障害の緩和』が求められる。強引に外向的な性格に変えようとしても上手くいかないので、『生得的な内向気質』の部分も大切にして上げながら、その人の適応性や幸福度を高めるパーソナリティを再構成していくことが大切だろう。

その目的を達成するためには、『他者に対する強い不安感・不信感』を緩和させる「肯定的な受容」と「自尊心の尊重」を心がけなければならない。奇妙な妄想や強迫的な信念を治療的に改善する方策としては、『いったん相手の空想や妄想の内容に同意してから、もう一度、具体的な内容の現実性や合理性についてクライアント自身に考えてもらう(心理臨床家のほうからは、出来るだけ間違いや思い込みを指摘したり注意したりしないようにする)』というのが効果的であり、現実的な物事や他人の批判的言動について過度に防衛したり否認しなくても大丈夫だと確信(安心)してもらうことが大きな治療課題となる。心理臨床家は簡単なヒントや解釈を示しながら、クライアント自身に『自分の認知の歪み・妄想的な信念・一方的な思い込み』に気づいてもらうというのが原則であり、指示療法的なスタンスでクライアントの偏った認知や考え方を修正しようとしても強い抵抗に直面してしまうことになる。

『現実的な人生の中で、楽しいことや面白いことを見つけること』『常識的な範囲で、他人を信用できるようになること』がA群の人格障害に対するカウンセリング計画の目標の二本柱であるが、実際には、A群の人格障害の『非社会的な性格行動パターン』を十分に適応的な方向へ変容させるには、『防衛的・妄想的な自己アイデンティティ』を一度解体して再建するというような難しさが伴っている。正常なパーソナリティにも孤独・思索を好む傾向や対人不安の強い傾向、他人から何か攻撃を受けるという被害妄想が見られることはあるが、A群の人格障害の場合にはそれらの『非社会性・妄想性・自閉性』の程度が極端になっていて、他人との通常のコミュニケーションが困難になり被害妄想で他人に迷惑をかけるなど社会生活への適応が困難になってくる。内面的な空想や価値観、信念に対する粘り強いこだわりをどうやって現実社会の対人関係・職業活動の中で調整していけるか、そういった現実と想像の境界線での内的な葛藤を通してのみ、A群の人格構造は段階的に改善してくると考えられる。


■関連URL
分裂病型人格障害(schizotypal personality disorder)

分裂病質人格障害(schizoid personality disorder)

自己愛障害(自己愛性人格障害)に見られる“自己中心性・承認欲求・脱価値化・カリスマ性”

ユングの『外向性・内向性』の区分と精神的危機へ対処しやすい性格類型

認知療法の『認知の歪み(思考の誤り)』とアーロン・ベックの『認知的三角形』


■書籍紹介
パーソナリティ障害―いかに捉え、いかに対応するか (新現代精神医学文庫)
パーソナリティ障害―いかに捉え、いかに対応するか (新現代精神医学文庫)

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