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人格障害(personality disorder)は、社会環境に適応可能な『平均的な性格特性』から過度に偏った性格行動パターンのことであり、社会環境や対人関係に上手く適応できないために『主観的な苦悩』や『社会的(経済的)な不利益』が生じてくる。人格障害は厳密には精神病理ではなく精神疾患との連続性(スペクトラム)や近縁性を示しながらも、『正常圏における性格の偏り・歪み』と考えられている。 人格障害の形成によって起こる問題点は『主観的な悩みや不利益』と『他人に対する迷惑や加害』の二点に絞られるが、他人に実際的な被害をもたらす人格障害の多くは、情動の不安定性と衝動性・攻撃性の制御困難を特徴とする『B群(クラスターB)の人格障害』に分類されている。B群の人格障害には、『自己愛性人格障害・境界性人格障害・演技性人格障害・反社会性人格障害』という分類があるが、これらの特徴を簡潔にまとめれば、『他人に何らかの影響を与えなければ気が済まない強力な外向性性格』であり『自己顕示的な自己愛と承認欲求の過剰』である。 B群の人格障害が最も恐れるのは何かというと、他人が自分に関心や好意を示さない『孤独状況』であり、その孤独状況に対する恐怖は発達早期に見られる分離不安が遷延した『見捨てられ不安』に根ざしている。社会規範や法規範を無視して自己の欲求を満たす反社会性人格障害の場合には、他人から嫌われるので『他人の関心や好意』を得られないではないかという意見もあるかもしれないが、反社会性人格障害の人は『他人が破れない法律や倫理』を豪快かつ無慈悲に破れる自己に陶酔しており、社会(他者)に打撃を与える無軌道なパワーを自己顕示的に他者に見せ付けることに快の興奮を見出している。 反社会性人格障害の本質を突き詰めれば、『徹底した自己の特別視』と『他人の権利(感情)の否定』であり、自分を特別な価値のある人間と思い込む点では自己愛性人格障害の心理特性と非常に似ているのである。 反社会性人格障害の人は『他者の恐怖や軽蔑の眼差し』を、特別(特殊)な自己への感情的対価として受け取るのだが、それは、自分以外の全ての人が遵守している社会のルールが自分には無効であるという『幼児的な万能感』に由来している。反社会性人格障害の無意識には『勤勉性・責任感・遵法精神などに支えられた平均的な日常生活を送れないという劣等性コンプレックス』があるが、反社会性人格障害の人は『不法行為(他害行為)による瞬間的な快楽』で劣等性コンプレックスを補償しようとする。善良な人たちが自制している『暴力性・残虐性・無慈悲性・知的計略などの反社会的行動』によって、平穏な社会生活を送っている他人を瞬間的なパワーで制圧したり屈辱や恐怖を味わわせようとする。 反社会性人格障害の多くの人たちにとって、『他人を傷つける不法行為』は直接的な物理的利益や身体的快楽を手に入れる手段というよりは、今までの人生で感じた劣等感や不幸感を補償(埋め合わせ)するための代償的なカタルシス(感情浄化)である。『自分が適応できない平穏な社会秩序(日常生活)』を無価値化したい欲求が、他人を傷害したり搾取(強奪)しようとする危険な衝動性を生み出すと同時にそれを正当化している。同じB群に属する自己愛性人格障害でも、『他人への共感性の欠如』と『思い通りに動かない他人の切り捨て(脱価値化)』といった受動的な自己中心性が顕著である。 反社会性人格障害と自己愛性人格障害の大きな違いは、反社会性人格障害は『既存の社会的な評価軸』を破壊する不法行為によって自己を特別化しようとするが、自己愛性人格障害は『既存の社会的な評価軸(地位・名声・財力・権力・教養)』の中で賞賛や肯定を求めて自分を特別な人間と思い込もうとするところである。どちらも『一般人とはかけ離れた特別な能力や属性を持つ凄い人間』と思われたい強い自己愛では共通しているが、反社会性人格障害の場合は自己愛性人格障害のように『他人の尊敬・憧れ』を得たいとは思っておらず、相手の生活や社会の治安に致命的な影響を与え得る『恐れ知らずで計算高い自分のパワー』を顕示的に見せ付けたいという破壊衝動を抑えきれずにいる。 自己愛性人格障害の人は、社会一般で認められている『地位・権力・財産・名誉・美貌・魅力』などを際限なく求め続けるので、反社会性人格障害のように社会通念や法規範を逸脱することによって『自己のパワー』を顕示しようとするモチベーションは殆どない。どちらも『並外れた強烈な個性』をアピールしたい動機づけはあるのだが、自己愛性人格障害のほうは『地位も財産もあって見た目も美しいあの人が羨ましくてたまらない』というように賞賛や羨望の的になることが目的なのであって、直接的に相手の生活や幸福に打撃を与えるような犯罪行為では自己愛性人格障害の人の欲望は満たされないのである。 自己愛性は受動的・間接的に『他人の賞賛・承認・羨望』を待っているという印象が見られるが、反社会性は能動的・直接的に『無力感・恐怖感・屈辱感』などを他人(社会)に率先して与えにいくという印象があり、「他人への被害の大きさ」や「社会への脅威度」では圧倒的に反社会性人格障害のほうが高い。 ここまで、B群(クラスターB)の人格障害について見てきたが、奇妙な考え方や風変わりな行動を特徴とするA群(クラスターA)の人格障害は、B群とは正反対の性格・行動の偏りを持つものである。A群には『妄想性人格障害(paranoid personality disorder)・分裂病質人格障害(schizoid personality disorder)・分裂病型人格障害(schizotypal personality disorder)』の3つの人格障害が分類されている。現実社会や他者との関わり合いを断ち切って、妄想的な内面世界に閉じこもろうとする『A群の人格障害の特徴と対処』についてはもう少し補足記事を書こうと思います。 ■関連URL 自己愛性人格障害(Narcissistic Personality Disorder) 自己愛障害(自己愛性人格障害)に見られる“自己中心性・承認欲求・脱価値化・カリスマ性” 『脱価値化』が緩和する嫉妬感情と『共感性の欠如(他者の利用)』に根ざす自己愛の反社会性 反社会性人格障害の診断と社会防衛的な精神医学の視点の問題 ■書籍紹介 パーソナリティ障害(人格障害)のことがよくわかる本
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他者(社会)からの影響を拒絶するA群(クラスターA)の人格障害:現実と想像の境界線で孤立しやすい人
過去の記事でクラスターBの人格障害について解説したが、クラスターAの妄想性・分裂病質・分裂病型の人格障害に共通する精神力動は『自己の主観的かつ妄想的な世界像』を懸命に維持するために、現実社会や対人関係を無視して拒絶することである。自分の都合のいい現実解釈や世界認識に執着してその妄想を修正することが困難であり、『自己の内面世界のイメージ及び悲観的な物語』を絶えず外界に投影しようとする特徴を持つ。何故、このように自分の想像力や無意識的欲求が作り上げた『非現実的な世界像』にこだわるのかというと、... ...続きを見る |
カウンセリングルーム:Es Discov... 2007/11/02 20:56 |
“他者の注目”を求める演技性人格障害と“社会的な価値(他者の好意)”を拒絶する反社会性人格障害
ウェブサイトで演技性人格障害と反社会性人格障害の特徴と概略についてまとめましたので、興味のある方は読んでみて下さい。クラスターB(B群)の人格障害に分類される『境界性人格障害・自己愛性人格障害・演技性人格障害・反社会性人格障害』に共通する特徴は不安定な対人関係(感情機能)と抑制困難な衝動性であり、その根本には自己と他者の境界線が曖昧になるという『自己愛と対象関係の調節障害』が横たわっています。自分で自分のことを尊重して大切にする自己愛(self-love)は適度なレベルで働けば、自分の能力... ...続きを見る |
カウンセリングルーム:Es Discov... 2007/12/30 10:30 |
日本社会の良好な治安を示す統計データと“治安悪化・将来不安・他者不信”を感じる主観的な心
『平成19年(2007)の殺人発生数は戦後最低』という記事によると、去年2007年は戦後で最も殺人発生数(1199件)が少ない年だったようで、日本は一億人を超える人口数から考えると世界的に見ても極めて安全な治安状況を実現していると言える。凶悪な少年犯罪や子どもに対する犯罪も昭和40年代前半をピークに実際には減り続けていて、昭和60年代頃からは大方横ばいになっている。あらゆる犯罪を完全にゼロにすることが出来ない以上、過去と比較して改善傾向にある現在の治安水準が危機的な状況であるとは言えないが... ...続きを見る |
カウンセリングルーム:Es Discov... 2008/02/12 17:34 |
古典的なヒステリー性格の特徴と自己愛性人格障害:他者への信頼感と共感性の視点
神経症(neurosis)は心理的原因による心身の機能障害と位置づけられますが、無意識的願望や二次的疾病利得が反映されるヒステリーの自己暗示的な側面について過去の記事で説明しました。ヒステリーの身体症状(麻痺・けいれん・感覚‐運動障害)を発症させる自己暗示は何らかの疾病利得と関係していることが多いですが、クラスターBの人格障害へと推移したヒステリー性格は『他者の注目・関心・評価』を求める外向型性格の過剰に由来しています。 ...続きを見る |
カウンセリングルーム:Es Discov... 2008/05/31 05:42 |
境界性人格障害の特徴としての『衝動性・依存性・空虚感・不安定さ』と対人関係のトラブル
境界性人格障害(境界性パーソナリティ障害)は、『衝動性・依存性・攻撃性・空虚感』を特徴とするクラスターBの人格障害で、『対人関係のトラブル・コミュニケーションの緊張』を引き起こしやすくなります。境界性パーソナリティ障害を抱える人の『人格構造』は極めて脆弱でストレスに弱く、『相手の反応・環境の変化・悲観的な推測』などによって感情や気分が急速に不安定になります。 ...続きを見る |
カウンセリングルーム:Es Discov... 2009/08/07 15:45 |
"人格障害(personality disorder)は、社会環境に適応可能な『平均的な性格特性』か...
人格障害(personality disorder)は、社会環境に適応可能な『平均的な性格特性』から過度に偏った性格行動パターンのことであり、社会環境や対人関係に上手く適応できないために『主観的な苦悩』や『社会的(経済的)な不利益』が生じてくる。人格障害は厳密には精神病理ではなく精神疾患との連続性(スペクトラム)や近縁性を示しながらも、『正常圏における性格の偏り・歪み』と考えられている。 ...続きを見る |
Dust of the rhymes 2009/11/17 00:18 |
境界性パーソナリティ障害(BPD)の“発達的な原因論”と“対象恒常性の形成‐欠如の考え方”
前回の記事の続きですが、思春期の学校生活における友達関係への馴染みにくさや孤立感・疎外感の長期の継続、いじめられるトラウマ体験なども、『自己愛・承認欲求・自己防衛・人間不信の過剰』を伴う人格構造の変化に影響を与えると考えられています。しかし、物事・過去の受け止め方としての『認知』には大きな個人差があるので、同じような体験をしたからといって同じ人格構造の変化が見られるわけではなく、『性格・人格の長期的な形成過程』には一般的理論の枠組みだけでは解明しきれない要素や特性が沢山あるというのも事実で... ...続きを見る |
カウンセリングルーム:Es Discov... 2011/12/25 11:36 |
境界性・自己愛性のパーソナリティ障害と自己愛の発達1:S.フロイトの二次的ナルシシズム論
精神分析におけるクラスターB(B群)のパーソナリティ障害(人格障害)の研究は、オットー・カーンバーグの境界性パーソナリティ構造(BPO)の研究が中心になっていますが、BPO(Borderline Personality Organization)の最大の特徴は『傷つきやすさ・精神発達の未熟・対象喪失の不安・気分と対人関係の不安定性・自己否定性』です。 ...続きを見る |
カウンセリングルーム:Es Discov... 2012/01/22 12:18 |
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