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help リーダーに追加 RSS 『自立』と『依存』を巡るアダルトチルドレンの対人葛藤と『状況の変化』を拒否する心理

<<   作成日時 : 2007/06/16 10:21   >>

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アダルト・チルドレンは、『機能不全家族(非保護的環境・愛情剥奪環境)で育てられて大人になった人』という意味で用いられます。子ども時代に独特な偏った方法で家族関係に適応していたアダルト・チルドレンは、感情認識や感情の言語化が困難になるアレキシシミア(失感情言語症)や過剰適応による精神疾患、ストレス回避的な嗜癖(共依存的な人間関係)を発症するリスクが高くなると考えられています。

アダルト・チルドレンの独特な偏った家族への適応戦略は、家族の自慢の子どもとなる「ヒーロー(英雄)」、家族の協力や平穏のための犠牲となる「スケープゴート(犠牲の山羊)」、家族の緊張や怒りをおどけた言動で静める「クラン(道化)」、子供なのに一家を優しく包み込もうとする「プラケーター(なだめ役)」などの用語を用いて解説されることがありますが、基本的には、家族(親)の表層的な幸福や一時的な安定のために自ら進んで犠牲になる子供像を示したものです。

E.エリクソンの心理社会的発達理論で言えば、幼児期前期(1歳半〜3歳)の自律性の獲得と幼児期後期(4歳〜6歳)の積極性の獲得に失敗したことにより、『自分のために勤勉に努力する・家庭外の人と相互的にコミュニケーションする・アサーティブ(自己開示的)に自分の意見や希望を主張する・客観的に物事や状況の意味を判断する』ということが出来にくくなった状態だと言えます。『私自身がどうしたいのか?』という主体的な意志や自立的な行動が欠如しやすい為に、『他者との相互的な依存・生活環境への自己の束縛・自己と他者の投影的同一視』がなければ、自分の人生をどのように生きたら良いのか分からなくなって混乱することがあるのです。

無意識的に『原家族(育成家族)の再生産』につながる異性関係を取り結びやすいという問題は、人間関係の病的な嗜癖や暴力的なDVの問題を生み出す恐れがあり、自分の幸福と他人の喜びの間に境界線が全くない『退行的な自他融合感』を楽しむ傾向が顕著に見られます。

退行的な自他融合感というのは、マーガレット・マーラーの乳幼児発達理論でいえば『未分化期における共生期の反復』であり、D.W.ウィニコットの発達理論でいえば『絶対的依存期における原初的没頭の反復』のことですが、結局、『幼児的な依存(支配)を伴う愛着(アタッチメント)』を解除することが出来ない為に、自立的な社会生活を営めないという弊害が生まれます。

アダルトチルドレンの「精神発達上の停滞・退行の問題」を考えると、『分離・個体化期』における発達課題のやり直しを経験的に行うことが有意義であり、『保護・依存・安心の対象から離れていられる時間(自分一人の判断・行動で楽しめる時間)』を少しずつ増やしていくことが社会適応性(自己の自立性)の向上に結びつきます。誰か一人だけに特別に強固な愛着を抱いて全面的に依存(保護・干渉)するのではなく、社会環境(学校環境)の中で一定の付き合いの幅を持つこと、喜怒哀楽を伴うバランスの良い対人関係(コミュニケーション)を色々と体験してみることが大切だと思います。

一般的に、社会環境に適応して精神的・経済的自立をするという場合には、『利己主義と利他主義のバランス』が程よくキープされていることを意味しています。青年期の発達課題である『自我同一性(自己アイデンティティ)の確立』とは、「家族内部の依存的な人間関係」から「外部社会における自立的な社会活動」への変化を作り出すことであり、「社会・家庭・職業・学校における自己の肯定的な役割」に自覚的になることです。時には、経済的な事情や家庭内の問題のために自分がしたくない仕事に就職したり、老親(義理の親)の介護をしなければならないといったことはありますが、原則的に「複数の可能な選択肢」がある場合には、「自分の判断・適性能力・可能性」を中心にして肯定的な自己アイデンティティを構築していくべきです。

アダルトチルドレンの人間関係の問題として「幼児的な依存性・排他的な束縛感・個人の自立の否定」に基づいて恋人や友人を選ぶために、自己アイデンティティが慢性的に拡散して「私的な人間関係における特殊な役割」を引き受けやすいということがあります。私的な人間関係における特殊な役割とは、「迫害者・被迫害者」や「支配者・従属者」「保護者・依存者」「命令する者・服従する者」といった上下関係や相互依存性のある固定的な役割であり、社会環境における相互の自立性(固有性)を否定する役割のことです。それらの役割を、閉鎖的な家庭環境(恋人関係)で違和感なく引き受けてしまうと、『他者が踏み込めない私的領域(プライベート)だけで自分達は生きている』といった認識の錯誤(認知の歪曲)を生じるようになり、後になって自分の幸福や楽しみが何なのか分からなくなってしまうことがあります。

『他者が踏み込めない私的領域』の外部にある広大な世界(他者)を全く見ようとしないこと、そこからの新たな展開や成長を希望しようとしないことがアダルトチルドレンの特徴であり、『一度固定された心地よいように思える関係』の変化を必要以上に恐れて『依存的・排他的・幼児的な関係性の静止(あらゆる変化や成長の否定)』が自己目的化していきます。『今の状態や関係が永遠に変わらないこと』が自分の感情や健康(安全)と無関係に目的化すると、暴力や虐待、侮辱などを受けてもそこに留まり続けることを自動的に選んでしまうことがあります。『関係性の静止の目的化』『暴力・懐柔によるマインドコントロール(レスポンデント条件づけ)』が組み合わさると、外部情報や外部からの働きかけが遮断されやすいので、自分の意志や決断によってその場から離れることが事実上不可能になります。

昨日、東京都足立区で元妻と内縁の妻と同居していたNHKの委託集金業者・志賀耕二容疑者によって、元妻が殺害されてバラバラにされるという陰惨な事件が報じられていましたが、過去に何度も暴力を振るわれた経緯(及び余罪)がある夫婦間(恋人間)の事件では、何故その家庭環境から早い段階で逃げ出さなかったのかという話がよくされます。この容疑者男性は、自分自身が元妻と子供のいる自宅に他の女性を引き込んでおきながら、元妻の浮気を疑って逆上したことが暴力の発端になったという身勝手な供述をしていますが、恐らく、住む家と生活費の一部などを支援していることで元妻に対する支配欲求みたいなものは依然として残っていたのでしょう。

内縁の妻とは別に戸籍上の妻である中国人女性もいるということですが、隠そうとする浮気(不倫)とは違って、複数の女性と交際してそれを暗黙の了解として認めさせているようなケースでは、『アダルトチルドレン的な依存心理の利用』『経済的(住居や生活費の提供)・暴力的・母性愛的な心理メカニズムを逆手にとったマインドコントロール』を指摘することが出来ます。


■関連URL
『自分のために生きること』と『誰かのために生きること』のバランスの崩れと機能不全家族の問題

“自己愛性・強迫性・依存性”を特徴とする摂食障害と精神の退行を伴う自己愛障害

青年期危機説と青年期平穏説:学校・企業・家庭の環境への適応と社会的自立の問題

■書籍紹介
アダルトチルドレン・シンドローム―自己発見と回復のためのステップ
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