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前回の記事の続きになりますが、パーソナライズド(個人化)されたポータルサイトの可能性でも、Googleは「iGoogle(旧:Google パーソナライズドホーム)」という新基軸を打ち出してきていて、MSNよりもパーソナライズ性(カスタマイズ性)とユーザビリティで優れていますね。特に、Gmailやカレンダー、(Googleデスクトップの)ガジェットを利用している人であれば、iGoogleを自分のホームページ(ブラウザを立ち上げた時に初めに表示されるページ)に指定しておくと「ウェブ上の作業」を同時並行的に進められるので便利です。自分の関心のある分野のニュースを読みたい場合にも、「ウェブ」の項目に検索キーワードを打ち込んでおけば自動的にその分野の最新ニュースを集めてきてくれます。 GoogleとMicrosoftの検索エンジンのシェア争いの話をしていて、ECサイト最大手であるAmazonのポジションの重要性について言及できませんでしたが、GoogleもMicrosoftも、「快適なオンラインショッピング」を実現するサイト運営の技術とノウハウ、顧客の各種データを蓄積しているAmazonと提携することは将来の大きな利益につながると思います。リアルの店舗を持たないウェブに特化したECサイトで、実際に商品やサービスを販売しながら長期的に存続している企業は少ないので、知名度と売上高を長期にわたって維持しているAmazonのブランド力と販売戦略上のノウハウ、アフィリエイト(Amazon アソシエイト)を活用した自生的なSEO(検索エンジン最適化)は、GoogleやMicrosoftのウェブビジネスの拡張との親和性があるのではないでしょうか。 Amazonの販売戦略上のノウハウとしては、ユーザの購買意欲を高めるリコメンデーション(関連商品の推薦機能)、書籍やDVDの豊富な品揃え、Amazonのブランディング(知名度向上)とニッチな商品の売上増に貢献するアフィリエイト、顧客満足度を高めるためのユーザサポート、顧客中心主義で設計されたアーキテクチャ、1,500円以上の商品の配送料の無料化などがありますが、どれも一朝一夕に他のECサイトが真似できないサービスです。ウェブ上の書籍販売に限って言えば、Amazonがマーケットプレイスで古本屋(古書店)としての機能も併せ持ってきたことを考えると、これから出店する新規のウェブ書店(商品が重複するECサイト)がAmazonに迫るのは至難であると言わざるを得ないでしょう。 ウェブビジネスのうち「広告宣伝ビジネス(検索エンジン)」の分野を疾走するGoogleと「オンラインショップ(ECサイト)」の分野を独走するAmazonが、今後どういった経営判断とサービス展開をしていくのか、それに対抗できるような企業勢力が何処かの時点で現れるのかが気になります。Microsoftの立場からすると、既存のビジネスモデルの消費期限が残っているうちに新たなウェブビジネスの収益源を見つけないと、現在のポジションが維持できないという転換期に立たされているのかもしれません。 「貨幣の一般的な交換価値」と「検索エンジンのビジネスモデル」には何処か似た部分があるのですが、それは恐らく貨幣単独では「特別な利用価値」を一切持たないということに関係しているような気がします。貨幣(お金)の普遍性は、それそのものには何の価値もないところに由来しています。金や銀のような希少金属でもそれ単独では利用方法が乏しいことで、「商品・サービスの交換媒体」としての普遍性を持つことが出来るのです。 「お金がたくさん欲しい」という人は無数にいますが、資本主義的な商品経済に位置づけられない「物としてのお金(貨幣)」が欲しいという人はまずいません。預金通帳に記録されて日々増減する「数字としてのお金」が現代人の欲するお金(貨幣)であって、「モノとしてのお金そのもの」を使う予定もなくフェティッシュに溜め込みたいという人は殆どいないのです。お金(貨幣)は「物理的なモノ」ではなく「将来への価値の蓄積(交換可能性の留保)」ですから、モノとしてのお金を持ち歩かずにクレジットカードで決済することが可能です。 特に、政府機関が発行する紙幣は端的には単なる「紙切れ」であり、資本主義の貨幣システムとして公的(社会的)に位置づけられなければ実質的な交換媒体になり得ません。しかし、お金(貨幣)とは端的には「将来の交換可能性(欲求充足の可能性)」を担保する「数量的な概念」に過ぎず、その典型的な現れが最近増えている「電子マネー」でしょう。 かつてサラリーマンの給料の支払が現金の手渡しではなく銀行振込みになったときに、「お金のありがたみがなくなった」という意見がよく聞かれたといいますが、お金の本質は「数量化された交換価値」ですから、「モノとしての現金」よりも「増減する数字」のほうがその本質に最も近いと言えます。デジタルに管理される電子マネーとは、お金に期待される役割の純粋なエッセンスを抽出したものと言えます。兌換紙幣と不換紙幣の違いにこだわる人もいるかもしれませんが、政府が発行するお金(貨幣)は、景気動向やインフレ(デフレ)、生産能力に配慮して供給量を調節しているだけで、基本的に「お金の物理的根拠(希少金属との兌換性)」を意識してお金を印刷(鋳造)しているわけではありません。 貨幣(お金)に実体的な価値の根拠がないことは誰でも知っていますが、語弊を怖れずに言えば「モノとしてのお金そのものを本気で欲望する人間」がいないからこそ、現代社会においてお金はどんな商品やサービスとも交換できる「特権的な地位」に立てるわけなのです。直接的に人間の欲望の対象になる物、人間にとって利用価値がある物は、決して「貨幣(お金)の地位」には就けないようになっています。人間がそれそのものを欲しいという場合には、その対象はすべて「商品」の地位へと転化(変質)してしまいます。 商品と貨幣(お金)の地位は明確であり、商品はそれが人間から欲望されるからこそ、その主観的な価値を査定されます。反対に、お金そのものは直接的に欲望されないからこそ、お金の主観的な価値を品定めして査定するような人はいません。綺麗な一万円札もぐしゃぐしゃの一万円札も、どちらも同じ一万円分の購買能力(交換機能)を持っていますが、商品の場合にはパッケージが薄汚れていたり生鮮商品が古くなっていればその価値が大きく目減りするということです。 私達はお金を出して欲しい商品を買いますが、「新品の商品」は買った瞬間に商品経済の中での優位的立場を失い「中古の商品」に変質する価値変動リスクを内在しています。いずれにしても、「私にとって最高の商品」であるからといって「他者にとって良い商品」とは限らないので、商品を手元に持っていてもそれを他の欲しい商品と交換できる可能性は極めて低く、お金と比べると「商品の交換機能」には全く期待できません。貨幣もインフレのリスクがありますが、経年劣化する商品と比較すれば価値を保存できる確率が高く、あらゆる商品との交換能力を持っています。 オールマイティの普遍的な交換媒体である貨幣(お金)は、それそのものが無価値であればあるほど、時間による質的変化の影響を受けなければ受けないほど、より理想的な交換媒体として洗練されていくことになります。ですから、希少金属で作られた「貨幣」よりも紙で作られた「紙幣」のほうがよりお金として本質的であり、モノである「紙幣」よりも紙に書かれた数字である「銀行通帳」のほうがよりお金の本性をよく表しています。ただ銀行通帳の数字はいずれお金を引き出すときに「モノとしての紙幣」になりますから、銀行通帳の数字とモノとしてのお金にはそれほど本質的な差異はないのですが。 更には、紙に書かれた数字である「銀行通帳」よりも、コンピュータ画面(携帯画面)や電磁気カードに表示(記録)される数字の「ネットバンク・クレジットカード・電子マネー・Felica(Suica,PASMO)」のほうがお金としての本質性や洗練度(純度)は高いように思われます。お金の機能の最たるものは、商品やサービスとの交換(決済)ですから、出来るだけ迅速にミスのない決済をするためには「(お金を落としたりする)物理的な行為・(計算間違いをする)人間の計算・(持ち歩ける量に制限がある)モノとしてのお金」といった条件を無くしていくことが好ましいわけです。決済や出金のセキュリティにも万全を期そうとすれば、生体認証などによって「一時的な個人専用のお金」を仮想的に作り出すことが最も望ましいといえますが、現時点でも次々に変化するパスワードシステムとか指紋の生体認証などである程度はそういったセキュリティが充実してきていますね。 前置きが長くなりましたが、検索エンジンと貨幣(お金)の類似性や連想性について考えてみたいと思います。Googleの検索エンジンでもYahoo!の検索エンジンでも、それ単独では利用価値がないことをまず挙げることが出来ます。検索エンジンが検索エンジンとしての役割を果たすためには、商品経済で「商品」の位置づけとなる他者が作成した「コンテンツ」が必要です。検索エンジンを運営する企業は、そのコンテンツ(商品)を集める為にクローラー(スパイダー)をウェブに走らせて、ユーザの検索要求に的確に答える「インデックス化(目録化)」を毎日24時間体制で推し進めていきます。 GoogleやYahoo!は「クエリ(キーワードによる要求)」に応じて検索結果を表示する検索エンジンを開発していますが、検索エンジンに打ち込むクエリを「お金(貨幣)」、クエリによって得られる検索結果を「商品」とすると、ウェブ上の膨大な数のコンテンツをインデックスしている「検索エンジン」とは正に、ありとあらゆるものが売っているバーチャルモール(巨大な仮想商店)です。検索エンジンに打ち込むクエリが、検索広告のクリックにつながればお金が検索エンジン企業に流れますが、「ユーザ(消費者)」と「コンテンツ(商品)」を必然的に結びつけるという意味では「検索エンジン」の仕組み自体が貨幣(お金)のような普遍的媒介機能を持っていると解釈できます。 検索エンジンが普及する以前のウェブ世界では、Yahoo!のディレクトリ検索(リンク集)や同好の士の相互リンクなどで「物々交換(口コミ経済)」が行われていましたが、Googleのロボット検索はウェブ世界に「貨幣経済(商品経済)」をもたらしたと言えます。口コミ経済というと現在のWeb2.0の潮流やSNSの利点などでよく話題になりますが、口コミは基本的に「生身の人間を媒介して伝えられる情報」ですから、AさんとBさんの欲望(興味関心)が重なり合う地点でやっと成立する「物々交換」に近いものです。幾ら有益で希少な情報をAさんが持っていても、BさんがAさんの持っている情報のジャンルや内容にまるで興味がなければ「物々交換(口コミ経済)」は成立しません。つまり、人から人への口コミ経済や人手を介して整理するリンク集では、「売れない商品(使えないリンク・欲求しない情報)」が必然的に生まれてしまうのです。物々交換のウェブ経済では、複数の人々の「二重の欲望」が偶然に重なり合わなければ、「売れる商品(クリックされるリンク)」が生み出されないのです。 ウェブ世界における「物々交換」は人為を介して情報を整理して伝達しようとする行為ですが、ウェブ世界における「貨幣経済(商品経済)」はあらゆる情報(商品)を収集してインデックスし、ユーザ(消費者)のクエリ(要求内容)を待つ行為です。GoogleやYahoo!の検索エンジンは「売れない商品(使えないリンク・欲求しない情報)」が殆どない理想的な「貨幣経済(商品経済)」をウェブ空間に仮想的に構築したと言えます。厳密には、余り有益ではない検索結果や思い通りにいかない検索結果も表示されるので「売れない商品」がゼロなわけではありませんが、ユーザが、検索エンジンに向けて検索クエリ(キーワード)を打ち込む限りにおいて「売れる商品(クリックされるリンク)」が提示され続けます。 現実世界の経済は、合理的な経済人(ホモ・エコノミクス)のモノやサービスに対する欲求によって駆動されますが、ウェブ世界の経済を担う人間には、理性的な智恵ある人(ホモ・サピエンス)、非合理的な遊ぶ人(ホモ・ルーデンス)、行動的な道具を制作する人(ホモ・ファーベル)など多様な人たちがいるので、ウェブ経済の原動力には「知識・情報・遊び・コミュニケーション・表現・創造などへの複層的な欲求」を想定することが出来ます。現実世界の経済とウェブ世界の経済の最大の違いは、リアルの経済は生存維持のための欲求(食品・住宅などへの欲求)と不可分に結びついている為、全ての人間が強制参加させられるということです。 ウェブ世界の経済は基本的に自由参加であり、ウェブでの行動を形成するモチベーションは主に「知的好奇心・コミュニケーション欲求・情報検索の必要性・自己表現欲求」によって成り立っています。GoogleやYahoo!の検索ビジネスの優位性は、リアル社会でモノの商品を取り扱う多くのビジネスと比べて「売れない商品・在庫リスク・価値の目減り(クリックされないリンク)」の心配をする必要がないということであり、検索エンジンそのものが「直接的な欲求(検索)の対象」ではないということです。 検索エンジンを貨幣(お金)のアナロジーと見るならば、貨幣がリアルのあらゆる商品と交換可能なように、検索エンジンはウェブのあらゆる情報のURIを指示することが可能なのです。既存の検索エンジンが、最大公約数的なユーザの「情報検索の目的」や「知的好奇心」を満たし続ける限り、検索エンジンとそのクエリは、ウェブ世界における「確率論的なマネー」としての機能を果たし続けるのでしょう。何故なら、リアル経済を循環させる物理的欲求(物欲・食欲・対人欲求)が人類にとって普遍的で継続的であるのと同じように、ウェブ経済を循環させる何かを知りたいと思う知的好奇心(情報探索欲求・知識習得欲求)も人類にとって普遍的で継続的なものだからです。 ■関連URL ジョン・バッテル『ザ・サーチ グーグルが世界を変えた』の書評 Googleの進歩とWEBの変化が現実世界とネット世界に与える影響:1 Googleの進歩とWEBの変化が現実世界とネット世界に与える影響:2 “働かなくても食べていける社会”と“働けば生活と老後に困らない社会” ■書籍紹介 貨幣・欲望・資本主義
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Amazonが開始した年会費3,900円の“Amazon プライム”とリアルの書店との使い勝手の違い
ECサイト最大手のAmazon.co.jpが、『Amazon プライム』という無料配送サービスを新しく開始しました。インターネットを使った買い物では配送料の高低が購入の決め手になることも多いのでなかなかいいサービスだと思いますが、Amazon プライムの年間利用料が3,900円なので、利用回数の多いヘビーユーザ向けのサービスになります。 ...続きを見る |
カウンセリングルーム:Es Discov... 2007/06/10 22:29 |
ひろゆき(西村博之)『2ちゃんねるはなぜ潰れないのか?』の書評:2
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カウンセリングルーム:Es Discov... 2007/07/11 14:32 |
なぜ、資本主義社会では労働者のスローライフが実現しないのか?2:持続的成長を義務付けられた経済機構
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カウンセリングルーム:Es Discov... 2007/09/17 16:38 |
情報革命がもたらした“紙の新聞”の需要減少と“情報コンテンツ”のビジネスの困難:1
前回の記事で、RSSリーダによる情報収集や情報処理に費やす一日の時間配分について書きました。私は紙の日刊新聞をほとんど読まなくなって二年以上が経つのですが、『日々のニュースの概略』を理解するという目的に絞るのであれば、『ウェブ上の新聞のRSS』をざっと見て興味を惹かれた項目だけをクリックするほうが効率的だと感じています。実際問題として、全国紙の新聞を丁寧に隅々まで読んでいないと世間の話題についていけないとか政治経済の流れが分からなくなるということがないので、『読まないなら読まないで済むニュ... ...続きを見る |
カウンセリングルーム:Es Discov... 2007/09/22 23:35 |
勝間和代『お金は銀行に預けるな 金融リテラシーの基本と実践』の書評:2
前回の書評の続きになりますが、第2章『金融商品別の視点』ではその他にも外債投資・外貨預金の特徴や利率についての説明があり、金融資産としての住宅・REIT(不動産投資信託)についても解説されています。勝間氏は各金融商品の特徴を比較した上で、投資の初心者が最も安定的に資産を増やせる可能性が高い金融商品として『ノーロード(売買手数料無料)の投資信託』を上げています。一方、銀行の最大の収益源でありリテール(個人顧客)部門のゴールである『住宅ローン』については、『他の金融資産に投資できなくなること』... ...続きを見る |
カウンセリングルーム:Es Discov... 2008/01/14 02:32 |
セス・ゴーディン『ダメなら、さっさとやめなさい!』の書評:仕事や勉強で価値を生み出す努力の方向性
『勝間和代のインディペンデントな生き方』の書評で、経済活動としての仕事(職業)では『努力の方向性』が重要になるという話をしました。セス・ゴーディンの『ダメなら、さっさとやめなさい!』は、何に時間や労力のリソースを振り向けるべきなのかという問題意識に絞って書かれたコンパクトな本です。冒頭の『古くからの格言は間違っている』という前書きの中に、『この目標は、本当に骨を折るだけの価値があるのか?』という言葉がありますが、私たち一人一人に与えられた人生の時間と能力は有限ですから、限られた時間を何に重... ...続きを見る |
カウンセリングルーム:Es Discov... 2008/04/16 01:09 |
マイケル・J・モーブッシン『投資の科学』の書評1:投資行動における確率と期待利益のバランス
マイケル・J・モーブッシンの『投資の科学』は、マーケットにおける最適な投資行動について各種の科学的知見を集めたオムニバス形式の書籍である。本書の内容は、株式市場や金融市場で利益(利回り)を得るための『投資行動の分析・予測・アドバイス』だけに留まるものではなく、より良い人生を生きるための効果的な意思決定と最善の問題解決法について多くの示唆を与えてくれる。結果を予測することが不可能な市場や事業に資金を投入する『投資(investment)』は、リスクのある『ギャンブル(gamble)』とは似て... ...続きを見る |
カウンセリングルーム:Es Discov... 2008/07/07 08:50 |
鈴木みそ『銭 壱巻』(コミック)の感想:“漫画雑誌・アニメ・コンビニの値段”のテーマ
“金銭”をテーマにして経済社会の仕組みを説明する漫画コミックには、『ミナミの帝王』『闇金ウシジマくん』『ナニワ金融道』などいろいろなものがあると思いますが、それらはどちらかというと“借金(負債)・法律の抜け道”と絡んだアンダーグラウンドな社会の厳しさに焦点を当てています。 ...続きを見る |
カウンセリングルーム:Es Discov... 2009/10/31 16:37 |
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