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help リーダーに追加 RSS “自己愛性・強迫性・依存性”を特徴とする摂食障害と精神の退行を伴う自己愛障害

<<   作成日時 : 2007/04/24 11:24   >>

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摂食障害の病態には『特別な自己アイデンティティの獲得』を目指す自己愛性と『見捨てられ不安の退行的な補償』を求める依存性の特徴が見られるが、『摂食障害の病理学と家族療法的アプローチ』では拒食と過食・嘔吐によって家族関係をコントロールしようとする強迫性についても取り上げてみた。

自己愛の障害とは、自己と他者の境界線を越えて幼児的な全能感を満たせる『場の力学』を操作的に構成しようとするところにある。『場の力学』とは簡潔に言えば、自己の発言や行動、症状、振る舞いによって、他者との間に『自分に有利な相互作用』を働かせることである。

顕示的な自己愛障害では『支配的・威圧的・利己的』に強気の姿勢で他者をコントロールしようとするが、この場合には、相手が自分よりも不利な立場で能力的に劣っている状況にないと上手くコントロールできない。自信過剰でパワフルな顕示型では『他者の自己不信・不安感・利己心・依存心(被保護欲求)』を巧みに利用することで、他者を自分に従わせる『場の力学』を働かせる。他者の依存心を上手く引き出す場の力学は、権威主義的な宗教の指導者や集団のリーダーの周囲に働くものと近似したものであるが、自己愛障害の場合には『他者の長所・利点・魅力』を上手く引き出して自分も協力しようという視点や共感性が欠如している。

潜在的な自己愛障害では『自虐的・誘惑的・依存的』に弱気な態度で他者をコントロールしようとするが、この場合には、相手が自分よりも有利な立場にいて弱者に対する共感性が強いほどコントロールしやすい。悲観的で脆弱な潜在型では『他者の良心・罪悪感・共感性・自尊心(優越感)』を巧みにくすぐることで、他者の援助や愛情を受け取りやすい『場の力学』を働かせる。他者の情愛や保護欲求を上手く引き出す力学の原型は、生まれたばかりの無力で可愛い赤ちゃんの微笑と泣きにあるが、精神的な退行と幼児的な欲求を相互に甘えて満たしあう恋愛関係でも一時的にそういった力学が働くことがある。自己愛障害の場合には、相手に何も与えず自分だけが一方的に受け取り続けることに罪悪感や疑念を一切抱かないところに特徴がある。

自己愛性人格障害(NPD)は自己評価の調節障害であるが、自我心理学に分類される女性分析家カレン・ホーナイは病的な自己評価として『具体的根拠のない自己礼賛・際限のない愛と承認の欲求・自己の影響力や名声を想像的に拡大する自己膨張・思い通りにならない対人関係における憎悪と怒り』を上げた。

病的な自己評価や価値の引き下げにこだわっている人は、現実的な根拠のない自己愛的な自己膨張によって、発達早期の子ども時代に受けた心的外傷の不安や自己評価の低下を補償しようとしているのである。価値の引き下げというのは、自分の成功や承認の妨害となっている他者の価値を引き下げ、自分が求めても得られない対象を脱価値化することである。また、ホーナイは空想的な自己膨張によって自閉的な自己中心性が強化されると語り、自己膨張は他者への関心と愛情を弱めるので結果として、対人関係が悪化して承認欲求(自尊心)が満たされなくなってしまうと指摘した。

自己愛性人格障害など自己愛障害を抱えた人は、自他未分離な発達早期の段階(口愛期・肛門期)へ退行を起こしているので、依存対象である『自己対象(母親など保護者)』に対する甘えの感情や幼児的な態度を他人に投影することが多い。冒頭で挙げた摂食障害も精神分析的な発達論や性格論を踏まえると、肛門期(あるいは口愛期)へのリビドーの固着や退行として解釈することができる。自他未分離な一次的ナルシシズムを否定した独立学派のD.W.ウィニコットは、発達早期の共感的な母子関係が健康な精神発達を促進すると考え、育児をする際に、乳幼児(赤ちゃん)の生理的・情緒的欲求に適度に応答する『ほど良い母親(good-enough mother)』であることを重視した。

D.W.ウィニコットは、赤ちゃんの幼児的な全能感を適度に満たすことができる『ほど良い母親』によって、赤ちゃんの自己愛の適度な調整能力が強まり『真の自己』へと成長すると述べた。反対に、母親の子どもに対する応答性や情緒性が乏しく、子どもの生理的・情緒的な欲求不満が長期間続くと、子どもの側が母親の愛情や保護を得る為に、母親の気分(感情)に合わせて自分の感情を押さえ込むようになってしまう。ウィニコットは母親が子供の要求や気分に自分の情動を適切に合わせていく無意識的な行為を『情動調律』と呼び、子供の健康な精神発達には情動調律の成否が大きく関わっていると考えた。

乳幼児期の段階にある子どもが母親の顔色や機嫌を伺って、自分の本当の気持ちを抑圧したり歪曲したりしてしまうと病理性のある『偽りの自己』が発展してしまうとウィニコットは考えたのである。精神的にまだ未熟な子どもが『偽りの自己(年齢不相応にしっかりとした自分)』を発展させることで、家族間の対立や葛藤を何とか調整しようとしている家族が機能不全家族である。

子ども時代に、自分の依存欲求や愛情欲求を過度に押し殺して親の自己愛的な振る舞いに翻弄され続けた子どもは、自己評価の調整能力に障害が起きやすくなり、アダルトチルドレンと呼ばれるような一群の精神的脆弱性(社会・異性・家庭への不適応性)を示しやすくなる。アダルトチルドレンの考え方には家族因性の精神疾患を強調し過ぎるという問題点があるが、発達早期の母子関係を過度に重視するD.W.ウィニコットの理論にも母原病の病因説に傾きやすい欠点がある。

現在のカウンセリングでは、過去の家族関係に問題があると推測される場合でも、母親の愛情不足やネグレクト(育児放棄)、甘やかしだけでなく、父親の不在や家族への関心の薄さ、母親への攻撃性などを加味する必要があるし、家族因以外の本人の認知的な歪みや心理社会的ストレスを考えていかなければならない。

自己愛の障害全般に共通する性格行動パターンや認知・思考の傾向をまとめると以下のようになる。


尊大さと誇大性に関する認知・行動パターン

1.無条件の賞賛や無批判な肯定への飽くなき欲求。

2.他者の行動をコントロールしようとする自己中心性。

3.他者の注目・関心を集めようとする露出症的・自己顕示的なショーマンシップ(演技性)。
4.平凡ではない特別な存在であることを望み、平均ではない偉大な存在であることを幻想すること。


社会的活動に関する認知・行動パターン

1.現実の能力や実績に見合わない高い理想や自尊心を持っているので、実際の仕事では望み通りの自己評価や承認を得られないことが多く、慢性的な不遇感や空虚感を抱きやすい。

2.生産的かつ創造的な仕事に熱心に取り組むことは少なく、他者の尊敬や注目を集める職業や社会活動に表面的に派手に参加しようとする。

3.一時的に優秀な成績を残したり瞬間的に高いポテンシャルを示すこともあるが、長期的な成果を見ると多くは平凡な結果しか出せない。

4.自分自身が本当にやりたい仕事や好きな活動が何か特定することが難しい。


人間関係に関する認知・行動パターン

1.他者への共感能力の欠如と愛情を注ぐ動機づけの低さ。

2.『理想化(褒め殺し)・こきおろし(脱価値化)』の両極端な対人評価をするので、対人関係が不安定になり良い関係は長続きしない。

3.自己陶酔的な特権意識を持っており他者に自分を特別扱いしたり厚遇するように要求するが、その一方で、他者の感情や権利に対して配慮や共感をすることがない。

4.他者の成功や幸福を認めることができない嫉妬深さと攻撃性。

5.他者に期待を裏切られたり、自尊心を傷つけられる軽蔑を受けた場合の激烈な自己愛的憤怒と復讐感情。


潜在型の自己愛障害の道徳感情・気分の変化に関する認知・行動パターン

1.自滅的で自己破壊的な無謀な行動。

2.表層的な自信過剰と余裕の背後で、本当の自分が無能で臆病であることが露見することへの不安。

3.恥辱感や屈辱感を回避する為に抑圧されている自己主張と自己顕示性。

4.他人への優越欲求を持ちながらも、苦労や努力を嫌って不正な行為で自己評価を上げようとする謀略。

5.気分がハイになる高揚感と気分が落ち込む抑うつ感を繰り返し経験する『気分の不安定性(易変性)』


クーパー(Cooper)ロニングスタム(Ronningstam)による顕在型(overt)の自己愛性人格障害の特徴には、『外向的・活動的・高揚した誇大性・見栄っ張りな承認欲求の強さ・共感性の欠如・他者を利用する対人関係・不特定多数を誘惑する性的逸脱・自己の特別視と他人の軽蔑・鈍感さと優越感・衒学趣味・権威主義』などがある。顕在型をウィンク(Wink)が提唱したように『誇大‐自己顕示型』『鈍感型(oblivious)』と呼ぶこともある。

一方、社会性不安障害(対人恐怖症)と類縁性のある潜在型(covert)の自己愛性人格障害の特徴としては、『内向的・抑制的な謙遜・萎縮したシャイネス(恥ずかしがりや)・恥を恐れる自己防衛の強さ・見せ掛けだけの共感性・対人関係の虚無感・自己を優位に置く虚言癖・他人の成功や能力への慢性的な嫉妬・傷つきやすさと劣等感・流行志向・相対主義』がある。ウィンクは潜在型を『脆弱‐敏感型』『過敏型(hypervigilant)』と呼んだ。


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■書籍紹介
摂食障害の精神分析的アプローチ―病理の理解と心理療法の実際
摂食障害の精神分析的アプローチ―病理の理解と心理療法の実際 (精神分析臨床シリーズ)

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