|
人間の自己主張や自己表現の方法には、『攻撃的な自己表現(自分の意見を主張し他者の意見を否定する方法)』『非主張的な自己表現(自分の意見を抑圧し他者の意見を受け容れる方法)』『アサーティブな自己表現(自分の意見を主張し他者の意見も考慮する方法)』があり、この中で最も良い結果を引き出しやすい最善の方法は『アサーティブな自己表現』であると考えられます。 特別な力関係や立場の強弱がある場合には、『攻撃的な自己表現』のほうが効率よく目的を達成できる場合もありますが、その場合には相手の恨みや反発を買いやすいという問題が生じてきます。 また、『非主張的な自己表現』で相手の立場や意見を尊重していれば、相手との直接的な対立や諍いを回避することが出来ますが、自分の意見や要求を押し殺し続けることで精神的ストレスが蓄積します。『非主張的な自己表現』を続けて相手に対する不満や怒りが鬱屈し過ぎると、転換性障害や身体表現化障害などの精神疾患が発症する恐れがあるだけでなく、自尊心が低下して自信がなくなり物事に対する無力感や無能感が強まってきます。 『アサーティブな自己表現』とは、自分の意見や要求を押し通すだけではなく、相手の意見や要求にしっかりと耳を傾けて、お互いが納得できる率直なコミュニケーションをするということです。 相手の主張に安易に妥協して自分の意見を抑圧すれば『非主張的な自己表現』になってしまい、自分の要求を強引に相手に押し付けて屈服させれば『攻撃的な自己主張』になってしまうので、爽やかで後腐れのないアサーティブなコミュニケーションを実践する為には『お互いに相手を尊重する気持ちと率直に意見を出し合う姿勢』が必要になってきます。 『お互いが共有できる客観的事実』を前提として、お互いが了承できる結果を模索する『共感的なコミュニケーション』を進めていくのですが、爽快感と納得感のあるアサーションを実現するには『お互いが何処まで譲歩できるのかのライン』を明確化していく作業がポイントとなります。 相互的な納得感と信頼感を形成するアサーションを成立させる為の技法として、認知心理学関連で功績のあるバウアーが考案したDESC法とLADDER法がよく知られていますが、DESCやLADDERは相互的な感情交流の技法であると同時に、一種の交渉術として用いられている状況があります。特に、LADDERのR(Reinforcement)は、行動主義心理学者のスキナーが発見したオペラント条件付けの理論を用いて、相手に自分の要求や意見を受諾させようとする典型的な交渉のテクニックで、多くの人がビジネスや対人関係でこういった交渉や取引を行っています。
DESC法で重要になるのは、相手と話し合いが成立する為の『共通の土俵』をD(Describe)で作り、相手がある程度譲歩しても十分に納得のいく結果が得られるという『妥協可能な条件』をS(Specify)とC(Choose, Consequence)で詰めていくということです。
対人コミュニケーションによって生じる感情や気持ちによってコミュニケーションの種類を分類すると、以下のようなものがあると考えられますが、『個人対個人の関係・個人対集団の関係・集団対集団の関係』によって必要とされるコミュニケーション・スキルや問題解決アプローチが異なってくる為、『マニュアル的な対処』では限界があり『状況適応的な機知と個別対応的な判断』が要請されてきます。
アサーションの対人関係を継続的に作り上げていく為の条件は、人間性心理学(humanistic psychology)に分類されるカール・ロジャースが考案したクライエント中心療法のカウンセラーの基本的条件とオーバーラップする部分が多くあります。 カール・ロジャーズ(C.R.Rogers, 1902-1987)のクライエント中心療法で示されたカウンセラーの基本的態度と日常生活で実現可能なアサーティブな態度とを結びつけて考えると、『“自己一致”が成立する深い水準での自己理解』『ありのままの自分を晒して相手と対等に交流できる“真実性”』『“徹底的傾聴”による相手の話をしっかりと聴く態度』『相手のありのままの感情や苦悩を相手の立場に立って感受しようとする“共感的理解”』『“無条件の肯定的尊重”を実現する為の自己受容と他者尊重』などの要素がアサーションに必要になってくると考えられます。 アサーティブなコミュニケーションを円滑に推し進めていく為にポイントとなるのは、相手の異質性や価値判断の多様性をどれだけ柔軟に受容できるかであり、相手との利害対立を調整する為に、どこまで譲歩できてどこからは妥協できないかを相手の主張を聴きながら判断するところにあります。 『コミュニケーション・スキルを強力に補完する対人評価・対人魅力』を高める為の技術やポイントについて、また機会があればまとめてみようと思います。 アブラハム・マズローの欲求階層説などをもとにして、『相手が自分に何を求めているのか?どういった性格行動パターンを魅力的に感じるのか?』などを考えていくと、人間の一般的な対人魅力の構成要素や対人評価につながる性格類型(行動特性)が浮かび上がってくるのではないかと考えています。 ■関連URL 対人コミュニケーションのストレスとアサーティブな人間関係:1 人間性心理学とアブラハム・マズローの欲求階層説 信頼関係を築くコミュニケーションTips! ■書籍紹介 増補版 アサーティブ
|
| << 前記事(2006/09/03) | トップへ | 後記事(2006/09/06)>> |
| タイトル (本文) | ブログ名/日時 |
|---|---|
コミュニケーションで満たされる“4つの対人欲求”と対人評価を高める“5つの性格行動特性”
他者と良好な人間関係を維持して、自分の意志や感情を正確に伝達するコミュニケーション・スキルには、対人魅力を高める外観や対人評価を良くする技術が含まれます。他者と意思疎通したり他者に何らかの印象や効果を与えたりするコミュニケーションには、言葉を用いて行われる『言語的コミュニケーション』と表情や態度、ジェスチュア、外見(容姿・ファッション・色彩・視線)、社会的属性(地位・職業・資格・役割・財力)などを用いて行われる『非言語的コミュニケーション』があります。 ...続きを見る |
カウンセリングルーム:Es Discov... 2006/09/09 09:52 |
“電話を使った顧客対応のカスタマーサポート”に必要なスキルと“電話営業(アウトバウンド)”への適性
商品・サービスを販売する企業のカスタマーサポートの中心は「電話対応」と「メール対応」ですが、電話と電子メールというコミュニケーション・メディアの特性の違いによって、カスタマーサポートに必要とされる「技術・経験・能力」は自ずと異なってきます。電話やメールを利用したコールセンターのカスタマーサポートに専従する人をコミュニケーターと呼びますが、コミュニケーターは企業への第一印象を大きく左右する「企業の顔」であると同時に、口コミや営業実績に関係する「顧客対応(営業販売・アフターサービス・疑問点のサ... ...続きを見る |
カウンセリングルーム:Es Discov... 2007/07/27 02:20 |
精神的ストレスとフラストレーションに対応する自我防衛機制の働き:環境適応の視点から見る人間
前回の記事では、『外部環境への適応』と『内的欲求への適応』のバランスについて書きましたが、適応には、自我が余り関与しない物理的充足(生存・摂食・睡眠)のための適応と自我の関与が強い精神的充足(承認・自尊心・自己愛)のための適応とがあります。近代以降にはパノプティコン(一望監視施設)を説いたM.フーコーや反精神医学を標榜したR.D.レイン、普遍的無意識を重視したC.G.ユングなど、『所与の環境への適応に内在する問題』を指摘する人物が多く現れましたが、依然として精神医学や臨床心理学(一般的なカ... ...続きを見る |
カウンセリングルーム:Es Discov... 2008/01/17 21:37 |
太田雄三『英語と日本人』の書評2:“教養・知識としての英語”と“実用・道具としての英語”
『英語と日本人』の中で一番読み応えがあるのが第四章『これからの英語と日本人』であり、この本は1981年に刊行されたものにも関わらず、『英語の勉強法・日本人の語学力』について現代にも通用する本質を見事突いている。『なぜ、日本人は英語が苦手なのか?』という質問をする人は、日本人は学校の英語の勉強が得意な人でも英語の語学力が低いと思っているが、これは半分正しくて半分間違っている。日本の受験レベルの英語をマスターして英語の一般書籍を読みこなせるという人はかなりの数いるはずだが、これらの人は『英会話... ...続きを見る |
カウンセリングルーム:Es Discov... 2008/02/12 15:01 |
| << 前記事(2006/09/03) | トップへ | 後記事(2006/09/06)>> |