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help リーダーに追加 RSS 摂食障害や睡眠障害を誘発する生活習慣と感情生活の乱れ:ストレス解消と摂食行動の条件付けの弊害

<<   作成日時 : 2006/03/10 05:33   >>

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不快な心理的ストレスやフラストレーション(欲求不満)による葛藤の影響がダイレクトに反映されやすいのが、睡眠・食欲といった生物学的本能の領域です。

精神的な苦悩を意識していない健康な人であっても、職場でのリストラ不安や上司・部下との対人関係の困難、取引先との契約ノルマの重圧、職場と家庭でのサービス意識の過剰などによって睡眠リズムは容易に乱され、軽度の睡眠障害に陥ることがあります。

恋愛関係の破綻の不安や恋人との喧嘩、離婚の危機などによっても睡眠や食欲のバランスは崩れやすくなりますし、結婚生活や子どもの育児にまつわる不快感やイライラによっても睡眠周期や食欲の強度と頻度はさまざまな形で変化してきます。

精神的ストレスが最も表れやすい行動の一つが食欲に基づく飲食行為ですが、ストレス反応で抑うつ感(気分の落ち込み)を抱きやすい人は拒食傾向が見られやすくなります。反対に、ストレス反応で情緒不安定や焦燥感を抱きやすい人は過食傾向が起きやすいと言われます。

しかし、重篤なストレスやトラウマによって受ける食行動の変化は、予測困難な部分も大きいので、抑うつ的な反応と共に過食行動を起こしたり、攻撃的な反応と共に拒食行動を起こしたりすることもあります。

一般的に、食物や飲み物を摂取して満腹中枢を満たす行為そのものに心理的充足感が伴っていますので、適度な飲食にはストレスを緩和する効果や不快な感情を鎮静する作用があります。
嫌な出来事や不愉快な人間関係がある度に、ヤケ食いをして気分を紛らす人がいますが、その程度が行き過ぎて健康に支障を来たさないのであれば、摂食行為で無意識的なストレス・コーピングを行っていると考えることが出来ます。

しかし、不快な出来事があったり、苦痛なコミュニケーションがあったりするたびに、反射的にヤケ食いや気晴らし食い(ビンジ・イーティング)を行い続けると、容易に食行動とストレス解消が条件付けされて習慣化します。

悲しくて泣きたい時や苦しくて耐えられない時に、取り合えず食事を大量に取れば気分が安定して感情が穏やかになるという経験を繰り返すと、自分自身の食欲の有無とは無関係に食事を摂取して情緒安定を図ろうとする条件付けが形成されます。

その結果として、強い自己嫌悪や罪悪感を伴う神経性過食症(ブリミア・ネルヴォーザ)などの精神疾患の発症リスクを高めますし、将来の生活習慣病(糖尿病や高血圧症、高脂血症、循環器疾患、血管障害)を誘発する恐れが出てきますので食行為のみでストレス解消するのは避けたほうがいいでしょう。

食行為には結果として、満腹感や気分改善といった『快の報酬』が伴いますから、不安や葛藤を和らげるストレス解消手段として食行為を利用すると、オペラント条件付けの原理に基づいて『快の報酬』を得る為の食事行動は頻度を増していきます。

摂食障害の基本原理をその『食行為の依存性・食行為への耽溺』と見る場合には、摂食障害は嗜癖問題(依存症)の一つに分類されます。
その場合には、嗜癖問題を解決する為に、食事で代理的満足を得ている精神的葛藤を緩和して、『食行為とストレス解消の条件付け』を消去するような支持的カウンセリングを認知行動の変容と合わせて行っていくことになります。

医学や栄養学の知見を参考にした生活習慣改善プログラムでは、『カロリー制限法』の有効性が確認されています。カロリー制限法は、生活習慣病の発症を予防するだけではなく、メンタルヘルスの向上睡眠周期や食行動の乱れの改善にもつながることが検証されています。

特別な効果が期待されるサプリメント(栄養補助食品)や栄養学に基づく正確なカロリー計算法を意識してカロリー制限を行う方法が、正統的な食事改善のやり方なのかもしれませんが、私は、摂食障害の履歴がある人や食事内容にあまり興味がもてない人は、詳細なカロリー数や栄養素の理解よりも、『学校の給食のようなバランスの良い食事メニューと分量』を大まかに意識するほうが効果的だと思います。

元々、『太ってしまうから食べ過ぎてはいけない。健康の為にもっと食べなくてはいけない。身体的な美を維持する為には食の自制が最も重要だ』といった食行為へのコントロール欲求が強い人のほうが、摂食障害への悪循環に嵌りこみ易いのですが、『食事とカロリー量の比較計算』に執着し過ぎない程度にカロリーを調節していくことが大切です。

理想のカロリー量から外れてはいけないという完全主義が強くなりすぎたり、食事量や健康メニューへの異常なこだわりが出てくるのは、逆に、食行動のコントロールや精神状態の安定を困難にします。
一度、目安となるカロリー量(年齢差はありますが、激しい運動をしない人は2,000kcal前後(3,000kcalを超えない)が一応の目安)と食事量を認識したら、それを基準として過剰に食べ過ぎたり、食事を拒否しないようにすれば良いのだと考えるようにしたほうがいいでしょう。

まずは、『規則正しく時間を決めて食べて、眠る直前には食べないこと(これは簡単に見えて非常に困難な課題です)』『動物性蛋白質や炭水化物の過剰摂取を控えること(普段よりご飯の量を軽めにするとか肉より魚のメニューを増やすとかしてみましょう)』『野菜やフルーツ、魚介類で、ビタミン・ミネラルの不足を補うこと(必須ミネラルやビタミンを摂取する為に、野菜・海藻・魚介類・果物をメニューの中に複数品目取り込みましょう)』といった簡単なところから、心身の健康を食事のバランスによって整えていきましょう。



年代別の必須カロリー量

生活活動強度によっても変わってきますが、一日に2時間程度の歩行をし、1時間程度の運動をする平均的な生活行動をしている人は、以下のカロリー数を目安にしてください。

厚生労働省が出している生活活動強度U〜Vに必要なカロリー量を示しておきます。

15〜17歳……1950kcal〜2200kcal

18〜29歳……1800kcal〜2050kcal
.
30〜49歳……1750kcal〜2000kcal

50〜69歳……1650kcal〜1900kcal

70歳以上……1500kcal〜1700kcal



生存と健康の維持に必要な食欲のコントロールを完全に喪失して、極端な食欲の低下による食事の拒絶が起こった場合には神経性食思不振症(アノレクシア・ネルヴォーザ)の診断を受ける可能性があります。

反対に、ストレス解消の為の食行為の分量と頻度が多くなり、精神状態の安定を図る為の衝動的な無茶食いが過剰になった場合には、神経性大食症(ブリミア・ネルヴォーザ)である可能性があります。


DSM-Wによる摂食障害の分類診断基準

神経性食欲不振症(Anorexia Nervosa)


A:年齢と身長に対する正常体重の最低限、またはそれ以上を維持することの拒否(例:期待される正常体重の85%以下の体重が続くような体重減少がある。または、成長期間中に期待される正常な体重の増加がなく、期待される体重の85%以下になる)

B:体重が不足している場合でも、体重が増えること、または肥満することに対する強い恐怖がある。

C:自分の体重または体型を感じる感じ方・認知の障害:自己評価に対する体重や体型の過剰な影響、または現在の低体重の重大さの否認。

D:初潮後の女性の場合は、無月経、つまり、月経周期が連続して少なくとも3回欠如する(エストロゲンなどのホルモン剤投与後にのみ月経が起きている場合、その女性は無月経とみなされる)

病型について

食事制限型(Restricting Type):現在の神経性食欲不振症のエピソード期間中、その人は規則的に無茶食い、または排出行動(つまり、自己誘発性嘔吐または下剤、利尿剤、または浣腸の誤った使用及び乱用)を行ったことがない。

無茶食い(ビンジ・イーティング・気晴らし食い,Binge-Eating Type)/排出・浄化型(Purging Type):現在の神経性食欲不振症のエピソード期間中、その人は規則的に無茶食いまたは排出行動(つまり、自己誘発性嘔吐または下剤、利尿剤、浣腸の誤った使用)を行ったことがある。

神経性過食症(Blimia Nervosa)

A:無茶食いのエピソードの繰り返し、無茶食いのエピソードは以下の2つによって特徴づけられる。

1.他と明確に区別される時間の間に(1日の何時間でも2時間以内の間)、ほとんどの人が同じように食べる量よりも明らかに多い食物を食べること。

2.そのエピソードの間は、食べる行動を制御できないという感覚がある。
(食べることをやめることができない。また、どんな食物をどれほど多く食べているかを正しく認知できず、その食欲や食行動をコントロールできない感じがある)

B:体重の増加を防ぐために不適切な代償行為を繰り返す。例えば、自己誘発性嘔吐や下剤、利尿剤、浣腸の乱用による食物の排出行為、または、その他の薬剤の間違った使用をする。過食の後に、極端な絶食、または、過剰な運動をする。

C:無茶食いおよび不適切な代償行為は共に、平均して、少なくとも3ヶ月間にわたって週2回起こっている。

D:自己評価は、体型および体重の影響を過剰に受けている。

E:障害は、神経性食欲不振症のエピソード期間中にのみ起こるものではない。

病型について

排出型(Purging Type):現在の神経性過食症のエピソードの期間中、その人は定期的に自己誘発性嘔吐をする。または、下剤、利尿剤、浣腸の誤った使用・乱用をする。

非排出型(Nonpurging Type):現在の神経性過食症のエピソードの期間中、その人は、絶食または過剰な運動などの他の不適切な代償行為を行ったことがあるが、定期的に自己誘発性嘔吐、または、下剤、利尿剤、または浣腸の誤った使用・乱用はしたことがない。


また、過食症と拒食症は、どちらか一方だけのエピソードを反復して繰り返す症例よりも、過食期と拒食期の双方を周期的に繰り返す症例のほうが多く、摂食障害の基本は、精神状態の不安定(対人関係における愛情飢渇・承認不全・心的外傷・攻撃衝動も含む)やストレスの過剰による食行動のコントロール不能にあるといえます。

一般的に、拒食症と呼ばれるこの精神疾患は、思春期やせ症と言われることもあるように、『自分の理想的なボディイメージ』『体型と関係づけられた自己の存在価値』に執着しやすい思春期に好発する疾患です。

摂食障害は、文明水準の高い地域にしか見られない現代病の一つであり、産業経済が十分に発達していない18〜19世紀頃のイギリスやフランスでは、貴族階級の子女にしか見られない極めて稀な疾患で豊かな経済生活を背景にした精神疾患とされていました。

現代で、『美の強迫観念』に特色を持つ心因性の神経性拒食症には、『痩せている身体は美しく、少しでも太っている身体は醜い』という極端な美意識が原因になっているものや、『本能的欲求である食欲を自己コントロールできない自分は、自堕落でダメな人間だから他人に愛されない』という痩せなければ他人から愛されないという独自の価値観を持っているものがあります。

しかし、この『美の強迫観念』は、摂食障害者固有のものというわけではなくて、多くの場合、その人が生活している社会の中心的で平均的な美意識を反映しています。

エステによって痩せれば理想的な美しい身体を手に入れられるというマスメディアの宣伝やダイエットによってスリムな体型を手に入れることで多くの人から注意関心を向けられて自尊心を高められるという時代の価値観によって、程度の差はあれ、『肥満体型よりも、痩せている体型のほうが美しい』という価値観を多くの人は共有しています。

しかし、『痩せていなければ、美しくなれないし、他者から自分の価値を認めてもらえない』という単一の価値観に耽溺してしまい、体重と食事に意識が縛られてしまうと病的な痩せ願望になってしまいます。
具体的には、体重のコントロール手段としてのダイエットに毎日の生活を支配されたり、食事の内容や分量にしか自分の興味関心が向かなくなってしまうと、過食や拒食の摂食障害に陥るリスクが高くなるという事です。

また、過食症と拒食症を反復して繰り返す思春期の人(年代が上がると多少、痩せ欲求の対象や目的が変化します)の殆どに、『強烈な痩せ願望によって美しくならなければならないという強迫観念』が見られますが、この痩せ願望が『ナルシスティックな自己陶酔』に結びついている場合と『異性・家族・友人に自分の存在価値を認めてもらいたい捨て身の承認欲求』に結びついている場合とがあります。

精神的ストレスが、人間の生存に関係する基本的欲求(マズローの欲求階層説で最も低次な生存欲求)に与えるマイナスの欲求について言及しようと思いましたが、摂食障害の話が長くなったので睡眠欲求の障害について書けませんでした。
精神的な問題として最も発生頻度の高い睡眠障害サーカディアン・リズム(概日リズム・体内時計)についても、また時間のある時に書こうと思います。

うつ病など気分障害では睡眠障害が必発し、統合失調症の急性期にも一切の睡眠をとらない不眠症状などが出てくるのですが、一般的な睡眠障害はそういった精神障害とは無関係なもので誰にでも比較的頻繁に起こってくるものです。

特別な心の悩みや問題を意識していなくても、生活環境や対人関係によって受ける微細なストレスの蓄積、夜更かしや深夜の飲食をしやすい現代人の生活習慣の乱れによって軽度の睡眠障害は容易に起こってきますが、催眠導入剤の薬物を用いない睡眠障害の治療としては、朝の自然光を受けて、夜の光照射を減らす生活習慣づくりがポイントとなってきます。

『光療法(医学的治療に限らず午前中に自然光を受ける)によるサーカディアン・リズムの矯正』『サーカディアン・リズムの矯正に伴う脳の松果体のメラトニン分泌の正常化』というのが、薬物やカウンセリングを用いない自然な自己療法として無理なく実行できるものです。
しかし、重篤なうつ病による不眠やPTSDよる悪夢を伴う睡眠障害の場合には、サーカディアン・リズムの可塑性が失われている場合もあり、自然光による体内時計のリセットや夜間のメラトニン(睡眠誘発作用のあるホルモン)分泌が起こらない事もあります。

松果体から分泌される各種の好ましい心身作用を持つメラトニンは、うつ病やパニック障害(不安障害)などの生理学的機序と深く関与していると言われるセロトニンからの代謝物質です。

原料はどちらも必須アミノ酸であるトリプトファン(トリプトファン→セロトニン→メラトニン)ですから、サーカディアン・リズムを正常化させて睡眠障害を治癒することには、うつ病をはじめとするセロトニン系神経の伝達障害が関係している精神疾患の改善に役立つかもしれません。

メラトニン自体は、アメリカでは栄養補助食品のサプリメントとして販売され、薬物ではなく天然由来の栄養成分に分類されていますが、日本では、メラトニンは薬効作用のある薬物に分類されており薬事法による規制を受けています。
メラトニンは個人輸入したり海外で購入することは可能ですが、一部の医学研究者は大規模で長期間の治験が実施されていない事を根拠にして、十分な安全性と有効性が保障されていないという意見を述べているようです。

ラットなどを利用した動物実験の段階では、メラトニンの大量投与による警告が必要な副作用や健康被害は見られなかったとされていて、アメリカ人の間では、睡眠改善や時差ボケ解消、リラックスの鎮静効果を得る為に一般的に服用されているサプリメントの一つです。
しかし、メラトニンは日本国内では未承認のサプリメントであり、欧州の一部や日本では健康食品ではなくニューロホルモンや医薬品として取り扱われています。

アメリカでメラトニンの販売開始から10年以上が経過していますが、現在までに重篤な副作用や健康被害は報告されておらず、アメリカでは一般的に、メラトニンは安全性と有効性が高く、副作用・依存性・耐性の少ないサプリメントだと言う評価を得ています。

しかし、狂牛病などとの兼ね合いもありますから、メラトニンの抽出過程が化学合成なのか動物の脳など生体由来なのかは一応調べてから購入したほうがいいでしょう。また、国内未承認のサプリメントを個人輸入や海外購入によって服用する際には、自己責任が伴うという認識も必要だと思われます。

メラトニンを、サプリメントで取るのは不安だから自然な食品で取りたいという人には、以下の食品にメラトニンの成分が多く含有されているそうです。日本人の場合には、米の摂取量は多いですから、意識せずにバランスの良い食事を心がけていてもある程度はメラトニンは取れているでしょう。

また、若い世代の人ほどメラトニンの分泌量は多く、特に子どもには自然に大量のメラトニンが分泌されているので、意識的にメラトニンを大量摂取することは必要ありません。昼間の眠気や倦怠感を強めて逆効果である場合もあるようです。


メラトニンの含有量が多い食物

小麦・米・オート麦・とうもろこし・コーンフレーク・ショウガ・トマト・バナナ・カイワレ大根・春菊など。
日本で販売されている朝食用のコーンフレークはかなり多くの種類がありますが、麦芽・コーン・果物・ナッツ類などのバランスが良く、糖分が少ないもののほうが、睡眠促進に限らず健康維持の効果はあると思います。


性欲も繁殖行動に関係する生理学的本能ですが、睡眠欲や食欲と比較すると心理的ストレスによる心因反応の影響に個人差が生じやすい欲求です。
性欲は、確かに、長時間労働などの過労の継続や職場での人間関係の悪化、仕事内容への不適応によって低下する傾向はありますが、反対に、危機的状況や生理学的緊張が高まった状態で性欲が亢進するケースもあるので、一概に、ストレス反応によって必ず性欲低下や性機能不全(ED:Erectile Dysfunction)が起きるとは言えません。


■関連URL

摂食障害(拒食症・過食症)

催眠導入薬

■書籍紹介
もちきれない荷物をかかえたあなたへ―アダルト・チャイルド、そして摂食障害・依存症・性的虐待…いくつもの課題をのりこえる生き方の秘訣
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