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help リーダーに追加 RSS 『恋愛(結婚)の対象を獲得するまでの問題』と『恋愛(結婚)の関係を維持することの困難』

<<   作成日時 : 2005/11/06 22:52   >>

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異性の愛情や興味を惹きつける対人魅力の詳細については過去の記事で書きましたが、性愛の絡む恋愛関係で生じる問題には、大きく分けて『恋愛の対象を獲得できない問題』『恋愛の関係を維持できない問題』とがあります。

結婚して以降の夫婦関係でも『相手の性的魅力の低減による倦怠感の増進や不倫関係への誘惑』などの問題がありますが、この場合には結婚生活における新鮮味やお互いの関心を惹きつける刺激をどのように維持するのかということが課題になってきます。

一般に異性と生活時間を共有する期間が長くなってくると、視覚刺激の鋭敏性が鈍麻して、相手への好奇心の強度が弱まってくる傾向があります。
その結果、個人差はありますが、恋愛関係に特有の『新奇性・独占欲・観念的な理想化』といった特性が顕著には見られなくなり、よく言えば安定した平穏な日々を過ごせるようになり、悪く言えば相手への関心が弱まって習慣化した日々に埋没するようになります。

衰退する恋愛の特性の中でも、特に『観念的な理想化』といった非日常性によって醸成される要素は、同棲や結婚という共同生活の中では維持することが困難になってきます。
日常生活の空間を別にして、週末のデートや稀な宿泊・旅行の時だけに会って親密な時間を過ごすような恋愛期には、お互いに『自分の最も理想的な外観と内面のペルソナ』を相手に示すことが出来ます。

ペルソナの原義はラテン語で『人格・個性』といった意味ですが、ここでは、ユングの元型論(アーキタイプ)に従ってペルソナ(仮面)といった意味で使っています。つまり、単一の本質的な人格といった意味ではなく、環境適応的な『仮面』としての多面的な人格特性のことを指してペルソナと言っています。

ペルソナというと『本心を表出した真実の自己』ではない『本心を隠蔽した偽りの自己』といった印象を受ける方もあるかもしれません。しかし、社会生活の中で余ほど演技的なペルソナを使いこなしている人でない限り、無理してペルソナを作り上げているという意識はあまりありません。
多くの人は、ペルソナと真実の自己との区別をあまり意識することなく、適度なペルソナを使って周囲の人間関係や環境にうまく溶け込んでいます。
社会生活における最低限の規範やマナーを守ろうとする場合にもペルソナが働きますし、対人関係において無用な対立を避ける為にとる好意的な態度もペルソナによって生み出されると考えることが出来ます。

ペルソナを被って恋愛相手の前に現れることによって、『観念的な理想化』を生み出し相互的な欲求を高い水準で保つことができます。
特に、恋愛の初期においては、相手の生活行動や性格特性について未知の部分が多いですから、相手の色々な事柄について「より良くより深く知りたいという意欲的な想像力や好奇心」が掻き立てられやすくなります。
自分の長所や利点を強調したペルソナとお互いの豊かな想像力によって形成された『観念的な理想化』は、交際期間の長期化や生活時間の共有によって低下し、それと合わせて『現実的な安心感や長期的な安定感』といった心理へと移行していきます。

『排他的な独占欲求から協力的な親和欲求への移行』『刺激的な非日常性から安定的な日常生活への遷移』『個別的な対人魅力の評価から総合的な人格性(存在そのもの)の相互承認への進展』を円滑に行えるか否かという課題が、長期的な交際や結婚生活においては中心になってきます。

ペルソナによる理想化といった話をしてきましたが、ここからは冒頭で述べた『恋愛の対象を獲得できない問題』と『恋愛の関係を維持できない問題』について考えてみたいと思います。

恋愛の対象を獲得できないという問題では、対人魅力を高める事とコミュニケーション・スキルを工夫する事、異性との接触機会と新規な出会いの頻度を増加させる事などが問題解決のポイントとなってきます。
(ここでは、自分と相手の持つ魅力や特性のバーター(交換)によって恋愛・結婚がなりたつという公平理論を前提として考えますので、自分の魅力や特性に一切の関心を寄せてくれない異性との関係については触れません。)


対人魅力の構成要因


  1. 環境的要因……住居・学校・職場が近いなど、実際に出会う機会の頻度が高かったり、言葉を交わす会話の場面が多かったりすると相手への好意が生まれやすくなり対人魅力が高まる。

  2. 外観的要因……美しくて整った容姿とスタイル、愛嬌のある可愛らしい表情、恰好よくて端整な容姿とスタイルなど優れた外見は、相手の肯定的な注意関心を引き付けやすく対人魅力が高まる。

  3. 生理的要因……強い不安感を感じて落ち着かない時や恐怖を感じて誰かを頼りにしたい時、見知らぬ場所や困難な状況で孤独感を感じている時などには、誰かと一緒にいて不安を緩和したいという心理状態になり、一緒にいてくれる人の対人魅力が高まる。気分の悪い時よりも、気分の良い時のほうが、相手に対する好意が高まる傾向がある。

  4. 性格的要因……趣味や価値観が共通していたり、自分に対する行動や発言が共感的で支持的である場合などには、相手の性格に対する好意が起きやすくなり対人魅力が高まる。



コミュニケーション・スキルには、こういった意思疎通や話題の選択、アプローチの仕方さえ取ればどんな異性にも通用するという黄金則はありませんから、相手の性格・趣味・価値観・感情表現などに合わせて臨機応変にコミュニケーションのとり方を工夫していく必要があります。

いずれにしてもコミュニケーションは、自分の側からの言語や表情、雰囲気の伝達だけで終わる単方向の行為ではなく双方向的な相互作用によって展開する行為なので、相手の反応や表情、言葉に対応した言動をその都度とっていく必要があります。

また、コミュニケーションの成否に関わらず、外観的な魅力や全体的な雰囲気といった感覚的あるいは感性的な要素によって、自然な流れで恋愛関係へと進展することも多いので、一概に言語的コミュニケーションに秀でた社交的な性格の人が恋愛関係で有利だと断言できるものでもありません。


対人魅力を高める典型的なコミュニケーション・スキル


  1. 相手の功利主義的な欲求に応えるコミュニケーション……自分の実力・長所・環境的優位などに関する自己顕示欲求をストレートに表現することによって、自分と付き合うことによって何らかの功利(結果としての利益)を得られることを示すコミュニケーション。自己顕示や自信過剰な言動に対しての評価は、相手の価値観によって好き嫌いが分かれるが、所得・地位など経済条件や家柄・財産など環境要因を重視する異性には効果があるだろう。また、それらを明示しなくても、そういった功利主義的欲求を満たすことの出来る条件的背景を有することが相手に伝わっていれば、何らかの好意や関心を呼び起こす可能性はある。

  2. 相手の倫理的純愛性に誠実に応えるコミュニケーション……ロマンティック・ラブイデオロギーのような唯一の相手と情熱的な恋愛をして結婚に向かいたいという異性に効果の高いコミュニケーションで、「排他的な純愛感情」や「裏切らない誠実さ」を全面に出したコミュニケーションである。失恋による悲哀感情が十分に癒えきらない状態にある人や性的道徳意識の強い人、恋愛の倫理性に対するこだわりの強い相手などには効果的なコミュニケーションである。それと同時に、全ての恋愛において多かれ少なかれ要求される意志表示の形でもあるが、相手に一切の好意がない状態で自分の側の一途な純愛性を強調し過ぎると執念深い印象を与えて逆効果のこともあるかもしれない。

  3. 相手との心理的距離を操作するコミュニケーション……ある程度の親近感が生まれてきた相手に対して意図的に自分から心理的距離を開くことで障壁をつくり、相手の恋愛感情を強めるようなコミュニケーションである。自分の独占欲求を弱くみせることで、付き合って以降の「束縛の弱さ」や「相手の自由の尊重」の念を伝えることができる。その一方で、相手の側に対して強い興味や好意がない場合には、殆ど有効性がなくそのまま二人の距離は開くだけである。また、相手の性格傾向が、相互に束縛し合う濃密な恋愛関係を望むような性格や依存性・没頭性の強い性格である場合には、自分の恋愛相手としては冷淡過ぎてあまりふさわしくないと捉えられることもある。

  4. 相手の性的同一性に関係した自尊心を満たすコミュニケーション……相手の性的魅力を猥褻さや低俗さを強調することなく自然に承認して、相手の異性関係に対する自信を高めるようなコミュニケーション。女性らしくあることや男性らしくあることといった社会的ジェンダーに対してその人がどういった価値観を抱いているかによっても変わってくるので、一概に典型的な女性的魅力や男性的魅力を称賛する言動を取れば好印象を与えられるというわけでもない。しかし、一般に自分のヘアスタイル、ファッション、身体のスタイル、容姿の造形などについて高い評価をして貰うことで、相手への好意や関心は高まる傾向があるとはいえるだろう。余りに見え透いたお世辞やご追従の場合には、軽薄でいい加減な人物という印象を与えて逆効果の場合もあるかもしれない。

  5. 相手の人格的価値を無条件に承認するコミュニケーション……相手の全体的な人間性や価値観を無条件で受け容れて同意してあげることで、そういった人格的な価値の承認を求めている相手に好感や支持の気持ちを伝えることが出来る。一般的に、心理学で『好意の返報性』というように、相手の良い部分を見つけて褒めてあげたり評価してあげるほうが、相手から好意や愛情を返してもらい易い。その意味では、天邪鬼になってわざと相手のコンプレックスや欠点を指摘して揶揄するような子供っぽい好意の表現は、あまり異性に対して良い印象は与えないだろう。特に、髪型が似合わないとか、洋服のセンスが悪いとか、性格がネガティブだから変えたほうがいいとかいった『相手の今ある状態や性格』を否定してから入る『アドバイス型のコミュニケーション』は、基本的に自分に対する評価や信頼を失う方向の結果に傾きやすい。アドバイスするのであれば一定以上の信頼関係を築いてからか、まず相手の現状をしっかりと肯定してから行うというのがいいだろう。

  6. 相手の知的趣味に対応するウィットを効かせたコミュニケーション……多種多様な趣味や娯楽のある現代社会ではどういった知識や教養が相手の求める話題や面白さにつながるかの予測は難しいが、相手と自分の知的好奇心や基本的趣味がオーバーラップする場合には自分の持っている知識をうまく応用した面白い会話を展開することで相手の好意や敬意を獲得することが出来るかもしれない。しかし、理性的な対話や教養趣味の薀蓄を好まない人も多くいるので、一概に自分の知的趣味を無際限に展開すれば相手の関心を引き寄せられるわけではない。自分の趣味を押し付けるのではなく、相手の趣味嗜好に対して自分も興味を持ち、その感性や価値観を尊重することで親近感を高め距離感を縮めることができる。



また、コミュニケーション・スキルの巧拙以前の問題として、『過度の自己批判的認知・異性に対する羞恥心・過剰な欲求と行動の自制』などがあるが、そういった積極性や能動性の不足の問題を乗り越える為には話しやすい相手(異性)とロールプレイの練習を繰り返してみたり、自信の欠如を補うような認知の転換や長所の発見をするように意識すると良いでしょう。

異性との人間関係を構築する前段階としての『内向性や内気さ、シャイネス(恥ずかしがりや)』の問題は意識せずに自然に克服できることも多くあります。自分の魅力を認めてくれる人との偶然の出会いや出会いの多い環境などから良い影響を受けたり、自然な加齢現象によって他者への敏感さの低下や自意識過剰の抑制が起こり異性とのコミュニケーションを楽しめるようになったりします。

ここまで、『恋愛の対象を獲得できない問題』についての話をしてきましたが、恋愛の関係を維持することや結婚生活を順調に営み続けることは、ある意味で恋愛の対象を獲得することよりも難しい面があります。
恋愛関係の初期には陶酔的な幸福感や独占的な欲求を強く感じやすいので、相手の感情に対する配慮や考えに対する共感が働きやすくなります。

しかし、交際期間がある程度長くなってきたり、結婚して生活時間を共有しだすと、程度の差はあれ相手に対する興味や欲求が弱くなったり、新鮮味が薄れて二人の関係に倦怠感を感じやすくなったりします。
勿論、愛情欲求の強度や関係性の新鮮度の低下には大きな個人差があり、何十年経っても相手との親密で深い愛情でつながり続けられるカップルや夫婦も数多くいます。

『夫婦関係は恋愛関係とは異なり、経済生活の設計と家族関係の維持に本領があるのだから、恋愛感情を相手に伝える必要はない』という価値観を持っている夫婦は少なからずいます。その価値観を夫と妻の双方が共有できていれば問題ないケースが多いのですが、双方の夫婦生活への期待や価値観が食い違っている場合には知らず知らず関係が冷え込み、お互いへの愛情や関心を結婚生活の長さに比例して失っていくケースがあります。

日本の場合には、特に、結婚する前までは女性関係に積極的でロマンティックな口説き文句を盛んに囁いていた男性でも、結婚してしまうと急に奥さんに対する積極的な関心や対話欲求を失ってしまう人が目立ちます。
奥さんへの愛情を伝える行動に異常なシャイネス(恥ずかしさ・気後れ)を感じているだけという場合もありますが、『自分たちは以心伝心のコミュニケーションが成り立っているので、わざわざ言葉にして相手への愛情や感謝の気持ちを伝える必要はない』ということを一方的に盲信している場合もあります。

夫婦間、恋人間のコミュニケーション頻度が下がり、無口な心地良くない沈黙の時間が多くなってきてるように感じられる時には、愛情の確認や感謝の伝達を積極的に行う会話をしてみるといいかもしれません。
年齢や交際期間に関係なく、好きな相手に自分の感情や考えを理解して受け容れて欲しいという欲求は必ず(潜在的にであるにせよ)存在しますし、夫婦や恋人の間では『自分の弱さや欲求や淋しさ』といった社会環境で出し難い感情を積極的に言葉に出来る関係であるほうが望ましいといえます。

時に、激しい気分の落ち込みや強度の不安を感じていても、配偶者や恋人にその気持ちや感情を伝えることが出来ないという人がいます。
強い抑うつ感や億劫感をはっきり相手に伝えてしまうと理解してもらえずに嫌われてしまうのではないか、いつまでもうじうじとしていたら初めは優しくしてくれてもいずれ見捨てられてしまうのではないかという心配を抱く人も多いと思いますが、長期的な信頼関係や安定した家庭生活を維持するためには『明るく楽しい話題だけでなく暗く悲しい話題も共有できる関係』を築いていかなければならないと思います。

『自分の価値観に対する共感的な理解・苦しみを共有してくれる慈愛・相手にとって特別であるという存在意義・外部で見せられない自己の開示』などを結婚生活や恋愛関係の中で実践していければ、『恋愛(結婚)の関係を維持することの困難や離婚の危機につながるリスク』を未然に回避していけるのではないかと思いますが、『日常生活の習慣化や倦怠感』をうまく潜り抜けていくのはなかなか難しいものです。

家庭生活に空虚さを感じ、夫婦関係の維持への無気力を感じ出すと、違う異性に惹かれる不倫の問題だけでなく、ギャンブルやアルコール、過剰な買い物など特定の行為にのめり込んで自滅的な状況に落ち込む「嗜癖(依存症)」やそれに付随した「機能不全家族」の問題が生じてくることもあるので、家族のメンバーに対する愛情や関心を持ち続け、その肯定的な感情を言葉で伝えるというのはとても大切なことです。

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女と男のだましあい―ヒトの性行動の進化
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