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異性の愛情や興味を惹きつける対人魅力の詳細については過去の記事で書きましたが、性愛の絡む恋愛関係で生じる問題には、大きく分けて『恋愛の対象を獲得できない問題』と『恋愛の関係を維持できない問題』とがあります。 結婚して以降の夫婦関係でも『相手の性的魅力の低減による倦怠感の増進や不倫関係への誘惑』などの問題がありますが、この場合には結婚生活における新鮮味やお互いの関心を惹きつける刺激をどのように維持するのかということが課題になってきます。 一般に異性と生活時間を共有する期間が長くなってくると、視覚刺激の鋭敏性が鈍麻して、相手への好奇心の強度が弱まってくる傾向があります。 その結果、個人差はありますが、恋愛関係に特有の『新奇性・独占欲・観念的な理想化』といった特性が顕著には見られなくなり、よく言えば安定した平穏な日々を過ごせるようになり、悪く言えば相手への関心が弱まって習慣化した日々に埋没するようになります。 衰退する恋愛の特性の中でも、特に『観念的な理想化』といった非日常性によって醸成される要素は、同棲や結婚という共同生活の中では維持することが困難になってきます。 日常生活の空間を別にして、週末のデートや稀な宿泊・旅行の時だけに会って親密な時間を過ごすような恋愛期には、お互いに『自分の最も理想的な外観と内面のペルソナ』を相手に示すことが出来ます。 ペルソナの原義はラテン語で『人格・個性』といった意味ですが、ここでは、ユングの元型論(アーキタイプ)に従ってペルソナ(仮面)といった意味で使っています。つまり、単一の本質的な人格といった意味ではなく、環境適応的な『仮面』としての多面的な人格特性のことを指してペルソナと言っています。 ペルソナというと『本心を表出した真実の自己』ではない『本心を隠蔽した偽りの自己』といった印象を受ける方もあるかもしれません。しかし、社会生活の中で余ほど演技的なペルソナを使いこなしている人でない限り、無理してペルソナを作り上げているという意識はあまりありません。 多くの人は、ペルソナと真実の自己との区別をあまり意識することなく、適度なペルソナを使って周囲の人間関係や環境にうまく溶け込んでいます。 社会生活における最低限の規範やマナーを守ろうとする場合にもペルソナが働きますし、対人関係において無用な対立を避ける為にとる好意的な態度もペルソナによって生み出されると考えることが出来ます。 ペルソナを被って恋愛相手の前に現れることによって、『観念的な理想化』を生み出し相互的な欲求を高い水準で保つことができます。 特に、恋愛の初期においては、相手の生活行動や性格特性について未知の部分が多いですから、相手の色々な事柄について「より良くより深く知りたいという意欲的な想像力や好奇心」が掻き立てられやすくなります。 自分の長所や利点を強調したペルソナとお互いの豊かな想像力によって形成された『観念的な理想化』は、交際期間の長期化や生活時間の共有によって低下し、それと合わせて『現実的な安心感や長期的な安定感』といった心理へと移行していきます。 『排他的な独占欲求から協力的な親和欲求への移行』『刺激的な非日常性から安定的な日常生活への遷移』『個別的な対人魅力の評価から総合的な人格性(存在そのもの)の相互承認への進展』を円滑に行えるか否かという課題が、長期的な交際や結婚生活においては中心になってきます。 ペルソナによる理想化といった話をしてきましたが、ここからは冒頭で述べた『恋愛の対象を獲得できない問題』と『恋愛の関係を維持できない問題』について考えてみたいと思います。 恋愛の対象を獲得できないという問題では、対人魅力を高める事とコミュニケーション・スキルを工夫する事、異性との接触機会と新規な出会いの頻度を増加させる事などが問題解決のポイントとなってきます。 (ここでは、自分と相手の持つ魅力や特性のバーター(交換)によって恋愛・結婚がなりたつという公平理論を前提として考えますので、自分の魅力や特性に一切の関心を寄せてくれない異性との関係については触れません。)
コミュニケーション・スキルには、こういった意思疎通や話題の選択、アプローチの仕方さえ取ればどんな異性にも通用するという黄金則はありませんから、相手の性格・趣味・価値観・感情表現などに合わせて臨機応変にコミュニケーションのとり方を工夫していく必要があります。 いずれにしてもコミュニケーションは、自分の側からの言語や表情、雰囲気の伝達だけで終わる単方向の行為ではなく双方向的な相互作用によって展開する行為なので、相手の反応や表情、言葉に対応した言動をその都度とっていく必要があります。 また、コミュニケーションの成否に関わらず、外観的な魅力や全体的な雰囲気といった感覚的あるいは感性的な要素によって、自然な流れで恋愛関係へと進展することも多いので、一概に言語的コミュニケーションに秀でた社交的な性格の人が恋愛関係で有利だと断言できるものでもありません。
また、コミュニケーション・スキルの巧拙以前の問題として、『過度の自己批判的認知・異性に対する羞恥心・過剰な欲求と行動の自制』などがあるが、そういった積極性や能動性の不足の問題を乗り越える為には話しやすい相手(異性)とロールプレイの練習を繰り返してみたり、自信の欠如を補うような認知の転換や長所の発見をするように意識すると良いでしょう。 異性との人間関係を構築する前段階としての『内向性や内気さ、シャイネス(恥ずかしがりや)』の問題は意識せずに自然に克服できることも多くあります。自分の魅力を認めてくれる人との偶然の出会いや出会いの多い環境などから良い影響を受けたり、自然な加齢現象によって他者への敏感さの低下や自意識過剰の抑制が起こり異性とのコミュニケーションを楽しめるようになったりします。 ここまで、『恋愛の対象を獲得できない問題』についての話をしてきましたが、恋愛の関係を維持することや結婚生活を順調に営み続けることは、ある意味で恋愛の対象を獲得することよりも難しい面があります。 恋愛関係の初期には陶酔的な幸福感や独占的な欲求を強く感じやすいので、相手の感情に対する配慮や考えに対する共感が働きやすくなります。 しかし、交際期間がある程度長くなってきたり、結婚して生活時間を共有しだすと、程度の差はあれ相手に対する興味や欲求が弱くなったり、新鮮味が薄れて二人の関係に倦怠感を感じやすくなったりします。 勿論、愛情欲求の強度や関係性の新鮮度の低下には大きな個人差があり、何十年経っても相手との親密で深い愛情でつながり続けられるカップルや夫婦も数多くいます。 『夫婦関係は恋愛関係とは異なり、経済生活の設計と家族関係の維持に本領があるのだから、恋愛感情を相手に伝える必要はない』という価値観を持っている夫婦は少なからずいます。その価値観を夫と妻の双方が共有できていれば問題ないケースが多いのですが、双方の夫婦生活への期待や価値観が食い違っている場合には知らず知らず関係が冷え込み、お互いへの愛情や関心を結婚生活の長さに比例して失っていくケースがあります。 日本の場合には、特に、結婚する前までは女性関係に積極的でロマンティックな口説き文句を盛んに囁いていた男性でも、結婚してしまうと急に奥さんに対する積極的な関心や対話欲求を失ってしまう人が目立ちます。 奥さんへの愛情を伝える行動に異常なシャイネス(恥ずかしさ・気後れ)を感じているだけという場合もありますが、『自分たちは以心伝心のコミュニケーションが成り立っているので、わざわざ言葉にして相手への愛情や感謝の気持ちを伝える必要はない』ということを一方的に盲信している場合もあります。 夫婦間、恋人間のコミュニケーション頻度が下がり、無口な心地良くない沈黙の時間が多くなってきてるように感じられる時には、愛情の確認や感謝の伝達を積極的に行う会話をしてみるといいかもしれません。 年齢や交際期間に関係なく、好きな相手に自分の感情や考えを理解して受け容れて欲しいという欲求は必ず(潜在的にであるにせよ)存在しますし、夫婦や恋人の間では『自分の弱さや欲求や淋しさ』といった社会環境で出し難い感情を積極的に言葉に出来る関係であるほうが望ましいといえます。 時に、激しい気分の落ち込みや強度の不安を感じていても、配偶者や恋人にその気持ちや感情を伝えることが出来ないという人がいます。 強い抑うつ感や億劫感をはっきり相手に伝えてしまうと理解してもらえずに嫌われてしまうのではないか、いつまでもうじうじとしていたら初めは優しくしてくれてもいずれ見捨てられてしまうのではないかという心配を抱く人も多いと思いますが、長期的な信頼関係や安定した家庭生活を維持するためには『明るく楽しい話題だけでなく暗く悲しい話題も共有できる関係』を築いていかなければならないと思います。 『自分の価値観に対する共感的な理解・苦しみを共有してくれる慈愛・相手にとって特別であるという存在意義・外部で見せられない自己の開示』などを結婚生活や恋愛関係の中で実践していければ、『恋愛(結婚)の関係を維持することの困難や離婚の危機につながるリスク』を未然に回避していけるのではないかと思いますが、『日常生活の習慣化や倦怠感』をうまく潜り抜けていくのはなかなか難しいものです。 家庭生活に空虚さを感じ、夫婦関係の維持への無気力を感じ出すと、違う異性に惹かれる不倫の問題だけでなく、ギャンブルやアルコール、過剰な買い物など特定の行為にのめり込んで自滅的な状況に落ち込む「嗜癖(依存症)」やそれに付随した「機能不全家族」の問題が生じてくることもあるので、家族のメンバーに対する愛情や関心を持ち続け、その肯定的な感情を言葉で伝えるというのはとても大切なことです。 ■書籍紹介 女と男のだましあい―ヒトの性行動の進化
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恋愛(結婚)関係を破綻させない適切な距離感と情的コミュニケーションの必要性
今回は、前に書いた『恋愛関係の維持の話題』に関係した補足記事を少し書いてみようかと思います。 ...続きを見る |
カウンセリングルーム:Es Discov... 2005/11/14 11:09 |
恋愛ツールとして“ブログ”を活用することの難しさとウェブの情緒的な対人コミュニケーションの特性
アルファブロガーになったからってモテるわけじゃない!『モテる100ワザ ブログ入門』という『絵文録ことのは』の記事を読んで、ブログを恋愛ツールとして使う事の困難とウェブを活用した出会いの特徴について考えたので、少し備忘録的に書き残しておこうと思う。 ...続きを見る |
カウンセリングルーム:Es Discov... 2006/09/15 07:18 |
平野啓一郎『顔のない裸体たち』の書評2:複数のアイデンティティを模索する現代のシゾイド人間
エロスの欲求は、二人だけに閉ざされた空間における非社会的で刹那的な関係性においてエクスタシー(脱自己)を迎えることがある。その一方で、社会的な他者の承認を得た継続的な結婚関係(公然の恋人関係)では、社会道徳を嘲弄する行為から生まれる忘我のエクスタシーを得ることは難しい。日常から隔絶した性愛の快楽とは、『日常から隠蔽されたものを暴くこと(非日常性)』であり『性に特化した承認を得ること(性的な自尊心)』であり『道徳規範に偽悪的に違背すること(社会常識からの逸脱)』である。 ...続きを見る |
カウンセリングルーム:Es Discov... 2006/12/08 01:32 |
恋愛関係における嫉妬感情などネガティブな感情の考察:『相手を愛する事』と『相手から愛される事』
はてな匿名ダイアリーで、『他人に対するネガティブな感情や嫉妬を抱けないという話題』が取り上げられていましたが、『他人に対するネガティブな感情』と『恋人(配偶者)に対するネガティブな感情』とには質的な違いがあり、前者には『他人に対する競争意識』があり後者には『恋人に対する独占欲求(依存欲求)』があります。 ...続きを見る |
カウンセリングルーム:Es Discov... 2007/06/11 02:53 |
ジェフリー・F・ミラー『恋人選びの心 T 性淘汰と人間性の進化』の書評:1
生得的な遺伝要因によって発現する生物学的性差をセックス(sex)といい、後天的な社会文化要因によって発現する社会的性差をジェンダー(gender)というが、本書は、進化生物学の性淘汰(sexual selection, 性選択)の観点からセックスの性分化と繁殖適応度について学術的に考察した本である。20世紀初頭まで多くの生物学者や動物行動学者は『人間の性行動』と『動物の性行動』を区別して考えてきたが、それは人間の性行動(恋愛)には、本能的(反射的)な動物とは違う道徳的判断や理性的価値が宿る... ...続きを見る |
カウンセリングルーム:Es Discov... 2007/10/04 17:16 |
ジェフリー・F・ミラー『恋人選びの心 T 性淘汰と人間性の進化』の書評:2
本書『恋人選びの心 T』の第3章『脳のランナウェイ進化』では、ロナルド・フィッシャーのランナウェイ過程を脳進化の原動力として多面的に考察していく。男性が『政治的地位(集団内での優位)・経済的豊かさ・創造的知性・芸術的感性』を女性に誇示してディスプレイしやすい脳の形質が、性淘汰のランナウェイ過程を通して発現してきたという話であり、10代後半〜30代の男性がもっとも強くこういった性的形質(行動特性)を女性に顕示するというのは生活実感としてもよく理解できることである。少し可笑しな事例として、本書... ...続きを見る |
カウンセリングルーム:Es Discov... 2007/10/06 09:00 |
好きな相手との関係を終わらせないために『相手から欲望される』ということ:双方向の“贈与”の反復
前回の記事で書いたように、『相手からの贈与を受け取らないこと・相手についての詳細な情報を得ないこと・相手のプライバシーに踏み込まないこと』によって、応答の必要のある『他人』は応答の必要のない『他者』へと変質していきますが、これは自分に働きかけてくるすべての『他者』を『他人』として処遇することが物理的に不可能である以上、半ば自衛的で必然的なものであるとも言えます。贈与の最もありふれた形態は『パロール(話し言葉)』ですが、都会の雑踏で出会うナンパやキャッチセールス、夜間飲食店のスカウトの贈与(... ...続きを見る |
カウンセリングルーム:Es Discov... 2008/05/08 07:07 |
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