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help リーダーに追加 RSS 日常生活におけるうつ病の徴候の発見:義務(仕事)と欲求(趣味)を切り分けるストレス対処

<<   作成日時 : 2005/11/05 17:05   >>

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■日常生活におけるうつ病の徴候
周囲にいて日常生活を共にしている家族や友人などが気付き易いうつ病(気分障害・感情障害)の徴候としては、以下の行動や態度の特徴を挙げることができます。
DSM−Wなどの専門的な精神医学的診断ではありませんが、以下の『行動面・情緒面・思考面での特徴』が顕著な場合には、何らかの気分障害(気分や感情の不安定や落ち込みを特徴とする精神疾患)の可能性が考えられるので、適切なストレス・コーピングや肯定的な認知への転換、リラクゼーション、生活環境の見直しなどの対策が必要になってくるのではないかと思います。



1.それまで元気に学校や会社に行っていたのに、急に行く気力を喪失し、腹痛や頭痛などの身体の不調を訴えるようになった。

2.それまで普通に会話を楽しんでいたのに、急に口数が減って無口になり、表情も暗く沈みがちになった。

3.それまで人並みにおしゃれに興味があった人が、急に服装に気を遣わなくなり、生活態度がだらしなくなり、異性との交際にも無関心になった。

4.今まで見られなかったような、食欲の増進あるいは減退があり、拒食あるいは過食を繰り返す。

5.睡眠障害が目立ってきて、十分な睡眠を全くとる事ができなくなり、疲労が溜まっている。

6.ちょっとしたことにイライラしたり、反発したり、周囲の人にあたりちらしたりする。いつもほとんど不機嫌で感情的に取り乱していて、何となく話しかけ難い。

7.急に物事の判断が遅くなり、何かを選んで決めることができなくなった。

8.何をしてもすぐに疲れてしまい、一日中、疲労感や倦怠感を感じていて精力の欠片も見当たらなくなった。

9.今まで楽しみにしていた読書の時間が苦痛で仕方ない。本を集中して読めず、文章がまったく頭に入ってこない。記憶力が低下して簡単な内容も記憶に残らない。

10.遊び、娯楽、お酒などそれまで家族や友人と楽しんでいたはずの事柄に全く無関心となり、一人きりで面白くなさそうにしている時間が増えた。



上記の簡易な鬱状態の判断基準ですが、『それまでの通常の生活状況との比較』が重要なポイントです。
それまで一人で黙々と何かをするのが好きな人が、相変わらず人づきあいが悪いという性格上の特徴をもっていても、当然、うつ病なわけではありません。
また、いつも短気で怒りやすく、他人に厳しく当たる人の場合の性格的な問題などは除外しなければなりませんし、あまりに極端な感情鈍麻や部屋への閉じこもりによる完全な関係遮断の場合にはうつ病以外の精神疾患である可能性もあります。
社会的活動性と意欲の低下はうつ病の重要なメルクマールの一つですが、それが余りにも極端に強い場合には統合失調症の陰性症状だとか非社会的問題行動に陥り易い人格的な問題であることもあります。

短期間の気分の落ち込みや精神運動抑制による行動力の低下や無気力による無為な状態であれば、深刻なうつ病(気分障害)の心配は要らないでしょうし、数ヶ月にもわたって慢性的に軽度の鬱状態が継続している場合には、うつ病に至らない慢性的な抑うつ感や意欲減退、無力感を特徴とする気分変調障害などの問題があるかもしれません。
日常生活に支障を及ぼす抑うつ感や気力低下を早期発見できて症状が深刻化していない場合には、認知療法的な対処や積極的な心身のコントロールを目標とする介入によって、早期に抑うつ感を軽減させ、再発を予防する効果を得ることができます。

時間があれば、認知療法の理論や実践についても詳しく書いてみたいと思っていますが、認知理論の根幹にあるのは『外部の出来事→認知(思考)→気分・感情→行動→認知……』の相互的作用に基づく循環的なシステムの仮定です。

認知(cognition)とは、外部の出来事や状況の変化、人間関係の内容をどのように認識して受け止めるのかという『内面的な情報処理過程』のことで、認知傾向は固定的で不変なものではなく可塑的で可変なものです。

日常生活の中で自分がどのような自動思考を生起させているのかに気付き、それがどのような気分の変化や感情の出現につながっていくのかをセルフモニタリング(自己観察)して理解することで、『自動思考が生み出す認知の重要性』『感情生活に占める認知の支配的特性』を実感することができます。

また、認知行動療法では行動の変容に重点を置き、来談者中心療法では内面的な人格の成長を重視し、精神分析療法では無意識的欲求(情動)のカタルシスと過去の情動や記憶の徹底操作にポイントを置きます。
このように、カウンセリングを行う場合には『認知・行動・情動(感情)・人格性』のどの部分に働きかけても効果を得られる可能性がありますが、どの側面に積極的にコミットし変容を促していくのかは、クライエントの性格や希望、問題の内容によって変わってきます。

しかし、意識して適応的な変容を引き起こしたいと考え、セルフモニタリング(自己の内面や行動の観察)したり自分の内面を洞察する場合に、最もアプローチしやすいのは言語的把握や概念的分類が比較的容易な『認知機能』であると考えられます。

『情動(感情)機能』は、言語的把握をするだけでは的確に特定して認識することが難しく、怒りや悲しみといった感情を意図的にコントロールして変容させることは現実的ではありません。情動は、無理に言語で特定してコントロールするよりも、抑圧して症状に転換された情動を言語化やロールプレイングで発散して、カタルシス効果を得る方法のほうが適切な対処だと思います。

直接的に『不適応な行動』を変容させて、一定の成功体験や目標達成を得ることができれば憂鬱感や無力感の改善に大きな効果を発揮しますが、いきなり実際の行動を試行するためにはある程度の自我の強度と情緒の安定が必要です。

強迫性障害や単一恐怖症、社会性不安障害(対人恐怖)、パニック障害などに対する行動療法(特にフラッディング法)は確かに劇的な症状の緩和や消去を実現することもありますが、クライアントに苦痛や不安を伴う行動を遂行させるためにはその不安やストレスに打ち勝つだけの心理的レディネスが備わっていなければなりません。

一般的には、認知的技法から行動的技法へとクライアントの心理状態や達成状況に合わせてステップバイステップで用いる技法を変化させ、臨機応変に問題に対処していくほうが治療効率が良いと思います。

以上のことから、さまざまな技法や理論の中でも、最も受理面接(インテーク)後にとっつきやすく、カウンセリング効果の即効性を発揮しやすい技法は、認知的技法を中軸とする認知療法ではないかと思います。
また、認知療法を用いる場合にも、カウンセリング期間や目標を明確化して計画的に進めていく短期療法(ブリーフ・セラピー)などであれば漫然と続くカウンセリングを短縮化できる可能性もあります。
ただ、複数の症状が絡み合っている場合や過去の不快な体験の記憶が深刻で精神分析的な記憶の整理と受容が必要な場合には、短期療法で十分な効果が得られないこともあるかもしれません。


代表的なストレス・コーピング

上のリンクは、過去記事で私が書いた『精神的ストレスに脆弱性を示し易い性格類型や行動パターン』と『簡単にできる効果的なストレス・コーピング』に関する記事ですので、興味のある方は一度読んでみてくださいね。
以下に、ストレス・コーピングの部分だけ、再掲しておきます。


代表的なストレス・コーピングの方法は、大きく分けて3つの視点から考えていくことが出来ます。

1.積極的なストレス対処(現実的な問題解決アプローチ)と消極的なストレス対処(逃避的な問題回避アプローチ)

積極的なストレス対処法とは、実際の人間関係を修復する為の具体的な話し合いの時間を設けたり、自分自身が苦痛や限界を感じている問題を改善する為の対応を「現実的な方法」で行うことである。

消極的なストレス対処法とは、自分が抱えているストレスを感じる問題に真正面から向き合わずに、アルコール・薬物・ギャンブル・過剰消費などに逃避して嗜癖(依存症)の状態にはまり込むような対処法を取ることである。
このストレス・コーピングでは、結局、現状よりも苛酷なストレスや経済的困難、身体疾患を抱え込むことになる。


2.精神安定的な問題解決アプローチと環境調整的な問題解決アプローチ

不安や恐怖、イライラなどの精神症状を安定させるリラクセーション技法を行ったり、仕事が終わった後には興味を持てる趣味や遊びに打ち込んで気晴らしをしたりする方法が『精神安定的な問題解決アプローチ』である。

ストレス状況の原因となっている職場・家庭・学校の人間関係や環境条件を調整して、ストレスの強度や持続時間を減少させるのが『環境調整的な問題解決アプローチ』である。


3.認知療法的アプローチと行動療法的アプローチ

『認知療法的アプローチ』とは、ストレッサーによる悪影響は“ストレスを感じる出来事や状況”そのものにあるのではなく、“そのストレスを情報処理する認知過程(ストレス状況をどのようなものとして受け止めるか)”にあるという前提を立て、自分自身の認知(物事の認識・理解・解釈・判断)をより不安や脅威の少ない適応的なものへと変えていこうとするものである。

『行動療法的アプローチ』とは、現在の心理的苦難や葛藤を乗り越えてストレスによる悪影響を減らすにはどのような行動を具体的に取れば良いのかを考え、その行動を実現する為の様々な方策を取るものである。

行動療法的アプローチには、不安や恐怖を感じる程度の弱い行動から少しずつ不安の強い行動へと段階的に挑戦していく『系統的脱感作』と、いきなり最も脅威や不安を感じている強いストレス事態に曝露させてストレス耐性への実感と自信を強める『フラッディング法』があり、その人の性格類型や技法への適性などによって的確に選択しなければならない。


少し補足しておきますが、『2の精神安定的な問題解決アプローチ』において、『自分は気晴らしやリラックスする為の決まった趣味がないから、仕事や家庭で感じる精神的ストレスが解消できないのではないか?』と思いつめて、突飛な決断を反射的にすることは控えたほうが良いでしょう。
強い意欲の低下を感じているのに、無理していきなりスポーツジムに通ったり、日頃歌わないカラオケに誘われて出かけても、自分が本心からやりたいと思うことや以前から興味をもっていたことでないとストレス対処の効果が出てこないことがあります。

精神的な疲労感が蓄積している人や強い憂鬱感を感じている人が、今までの生活習慣と全く異なる正反対の行動を取ることは、ストレス・コーピングの観点から見て逆効果であることが多いと思います。ですから、日頃、運動しない人であれば、やりなれないスポーツを突然始めるよりも、仲の良い知人や家族と軽いウォーキングを雑談と共に楽しむなどちょっとした生活の変化を行うほうが良いと思います。

また、今まで人間づきあいを楽しみにしていた人、飲み会や旅行など社交的な活動にも積極的に参加していた人が、突然、うつ病の精神症状や意欲低下を発症した場合には、どうやって必要な休養やストレスとなる活動の抑制を取らせていくかが問題となります。
それまで気分の落ち込みややる気のなさなどを殆ど経験した事がない人の場合には、『自分の精神状態は、自分の意志や努力でコントロールすることができる。それが出来ないのは、自分の気力や集中力が足りず、周囲への甘えがあるからだ』という前向きでアグレッシブな信念を持っていることが多いですので、なかなか自分の抑うつ感や意欲低下を認めることが出来ないことがあります。

『陰鬱な気分を晴らす為には、何か趣味や交流をもって明るく楽しく生活しなければならない』といった認知そのものは、ある程度気分が改善してくれば適応的で精力的な考え方なのですが、うつ病の状態にある時には『陰鬱な気分を晴らす為に必要な休養をとってから、自分のやりたい事柄を思いっきり楽しもう』という「休養→回復→行動への認知」に変容したほうが結果として回復を早めます。
特に、『休みの日はゴルフや釣りに行くように決めているから行かなければいけない』というような心理状態や体調を無視した遊びや趣味は、ストレス・コーピングとしての機能をまるで発揮しない恐れがあります。

『義務的な習慣や約束に基づく趣味娯楽』の場合には、休みの日の趣味なのに疲労やストレスを溜め込む仕事としての意味合いを持ってくることがありますから、『やりたい行為・しなければならない行為・一人で楽しみたい行為・家族や友人と楽しみたい行為』を意識的に区別して、その時の意欲や気分に合った行動を選択していくことも大切ではないかと思います。

特に、日常生活で、明るく社交的な人と周囲の人から認識されている人の場合には、家族や知人から一緒に何処かへ遊びに行こうと誘われると相手を気遣って一切断ることが出来ないという人もいます。
自分の欲求や考えをいつも抑圧し続けていると、知らず知らずの内に精神的ストレスが蓄積して、各種の心身症状に転換される場合もありますから、『一人で休養したい時や一人で楽しみたい趣味や行為がある時』には相手の誘いをやんわりと断る練習をしてみると良いと思います。

相手の気分や場の雰囲気を崩さずに、うまく自分の意志や欲求を伝えられるコミュニケーションは難しいように思えますが、毎回断る必要がないのであれば、すぐ嘘だとばれるような下手な言い訳をするより、率直に自分のしたい事柄と一人でゆっくりと休みたい意志などを伝えるのが良いと思います。
その際に、次に遊びに行く時はまた誘ってねという感じの返事をしたり、次は自分のほうから相手を誘ってみたりするのも良いと思います。

とはいえ、社会的な存在である自己のアイデンティティは、周囲の期待や評価に合わせるようにして無意識的に形成されていく部分がありますので、『周囲の認識(イメージによる自己規定)とは異なる自分本来の性格や意志』を相手に開示していくことには勇気や決断が必要になってくると思います。


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