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小泉純一郎首相の構造改革の主軸であった郵政民営化法案が、8月8日に参議院で否決され衆議院は解散することとなった。 小泉首相は、議決前から明言していた郵政解散を躊躇うことなく即座に決断した。私は小泉首相の政策や信条の全てに同意するものではないし、完全に見解を異にする問題も少なくないのだが、小泉首相の良いところとは、良くも悪くも『明言したことを実行に移す有言実行』であるように感じた。 今回の郵政解散に至る一連の政局を見ていて感じた有言実行は、諸刃の剣でもある。森喜朗前首相の懐柔策を毅然とはねつける小泉さんの姿勢に端的に現れている信念の強さは、翻って、彼の民営化路線に反対する党内勢力の結束を固めた。 小泉首相の持つ『情緒的しがらみからの自由』『既得権益(金銭・固定の組織票田)へのこだわりの薄さ』は、政治家、特に与党の政治家としては稀有な気質であるが、その稀有な気質こそが、自民党のもつアンビバレントで曖昧な結束を許さなかったともいえる。 『(構造改革に自民党が抵抗するならば)自民党をぶっ潰す』と勇ましく演説で叫んでいた小泉首相の言葉は、“構造改革の本丸”と位置づけていた郵政民営化の参院本会議での否決により現実のものとなった。 与党内部の対立内紛により衆議院を解散することの是非は別として、自民党内部の対立図式を明瞭にし、政策方針と民営化への信念の違いを鮮明化したことには一定の評価が下されても良いのではないかと思う。 ぶっ壊された自民党は、『本気の構造改革派』と『曖昧な構造改革派』に大きく分断されたわけだが、郵政公社の民営化を阻止したい曖昧な構造改革派といえども、『小さな政府へと向かう大きな流れ』に長く抗し続けることは恐らく不可能ではないだろうか。 民間の事業活動で賄うことのできる業務は、多少、公的な性格をもっているとしても、段階的に官公庁(特殊法人)から民間企業へ移行されることになるだろう。 郵政民営化を行う究極的な目的は、いうまでもなく、国家財政の再建であり健全化を現実のものとすることである。 郵政公社を民営化することには、これからはどのような公共部門の事業であっても、歳出の抑制と事業の効率化のために民間委譲されることが有り得ることを周知するという意味合いがある。 つまり、『官から民への事業委譲』による歳出が小さく市場経済への介入が少ない『小さな政府』の実現が、小泉首相や竹中平蔵大臣が考える財政健全化の構造改革の骨子ということができる。 もちろん、自民党の構造改革の骨子である『政府(官)から市場(民)へ雇用と事業活動の場を移す新自由主義』へは賛否両論があって然るべきである。 公的性格が強く国民に平等に提供されなければならない教育・医療・福祉・行政などのサービスは、公共サービスや公的制度によって維持される必要があるという考えももっともである。 国民生活に必要ではあるが、市場経済のメカニズムに耐えられない不採算事業の幾つかも、行政(公共機関)によって担っていかなければならないだろう。 現在、公務員としての地位が保障されている者は、その安定した地位を失うような改革にはなかなか賛成できないだろうし、既得権益は有している者にとっては当然の権利と受け取られ、持っていない者にとっては不正な利益であると受け取られやすいことにも注意が必要である。 私たちが成熟した市民社会をつくりあげていくためには、国政選挙にせよ政治運営にせよ公的な意志決定の場において『私的利害を離れた国家・地方という公的な枠組みにおける解』を求めていかなければならないことは多くの国民が理解している。 しかし、ここでもまた環境問題の記事に書いたような『公共財に関する功利的判断の誘惑』の問題が首をもたげてくる。
環境保護と同様に、『財政構造改革に取り組まないことで得られる利益が自分(家族)で独占できるのに対して、財政再建に取り組む事で得られる利益が国家という抽象的全体に分散されてしまう』という認知が多くの既得権益を得ている人たちにはある。 しかし、地球環境が人間が生存不可能なくらいに破壊されることよりも、日本の国家財政が破綻して国民の生活が困窮することのほうがより現実的な危険であるともいえる。 国債残高の上昇は留まるところを知らず、財政赤字の拡大がこのまま続けば、日本は遠くない将来において財政破綻を来たす恐れが現実のものとしてある。 日本の経済そのものが壊滅状態となれば、現在の既得権益層と見られている人々も、今まで通り安泰というわけにはいかなくなる。経済が破綻すれば、失業者が街に溢れ、国内の治安は相当に悪化して、市民が担う文化的な社会環境を維持することは困難になるだろう。 それらのことから、構造改革に対する様々な見解はあるが、『国家財政の破綻の回避』だけは、国民全てに共通する政策課題ということが出来るだろう。 今回の郵政解散の話に戻るが、政権与党である自民党が、マニフェストとして国民に『構造改革の最重要課題』として公約した民営化路線で、党内が分裂しており、首相のリーダーシップも貫徹しないというのは大きな問題である。 現在のまとまりのない自民党では、マニフェストを幾ら出しても実際の政治運営に反映されない懸念が強く、マニフェストは空理空論の建前として提示されるに過ぎないということになる。 また、まとまりのなさでは自民党に引けを取らない民主党も、結党当初からリーダーの求心力の弱さという欠点を抱えていて、民主党の政権担当能力やマニフェスト実行能力にも大きな疑念があるだろう。 しかし、現在の日本の政治状況で国民に開かれた選択肢は、事実上、自民党か民主党しかない。公明党も確かに政局において重要な役割を担う政党で、創価学会という強力な支持基盤を有してはいるが、その役割は飽くまでキャスティング・ボートに留まるだろう。 つまり、公明党はその政策や改革案によって単独で政権を取れるような政党へと躍進することは今後も望みにくいが、自民党と組み続けるのか、民主党に乗り換えるのか、はたまた自民党から分離した政党に与するのかを選択することによってある程度の影響力を振るうことはできるだろうという事である。 しかし、公明党の政策内容をそのまま全て政権与党に承認させることは難しいので、日本国憲法20条と89条との整合性の問題を除けば、必要以上に公明党の政教一致を憂慮する必要はないだろう。 (公明党と共産党については、finalventさんが『公明党と共産党に関連して』を上げていますが、公明党がイデオロギー的に無色な『地方から都会に流れた人たちの互助組織という見方』は妥当なもののように思えます。) 来月の総選挙は、郵政改革の是非を国民に問う選挙であると同時に、国家財政の規律回復と再建に伴う負担増大を問う選挙になるだろう。 財政健全化に伴う苦痛は延期したり緩和することは出来るが、それを完全に無かったものとすることは恐らくできない。 問題は、その苦痛と負担を伴う本格的な財政の構造改革にいつ、どのような手段で取り組むのかという一点に尽きる。 私は、経済格差の拡大を前提とした一方的な弱者切捨て(新自由主義的な市場原理)や、ある所得階層の人が生活不能になるような痛みを伴う構造改革には賛同できないが、各個人が負担可能な範囲内で、『相応の社会的責任としての負担』を負うことは必要であると考える。 ■参考文献 道路公団改革で著名な猪瀬直樹氏が、郵政民営化に関連する政治家などに対するインタビュー形式をとって郵政民営化の本質を鋭く摘出しようとする好著である。 賛成・反対・保留それぞれの立場に立つ政治家や財界人の見解を聴いているので、(猪瀬氏本人は賛成派なのだろうが)一定のバランス感覚のとれた郵政民営化の概説書となっているように思える。 郵政民営化に興味をもって、今回の総選挙に投票しようと考えている人には一読の価値がある。 決戦・郵政民営化
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郵政民営化・郵政解散・構造改革に関連するURLと雑感
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カウンセリング・ルーム:Es Disco... 2005/08/12 00:17 |
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「いい」加減でいこう 2005/08/14 22:07 |
2005年衆院総選挙を振り返っての雑感:自公と民主の明暗を分けた前進的革新のイメージの強度
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カウンセリング・ルーム:Es Disco... 2005/09/13 01:17 |
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