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help リーダーに追加 RSS 私たちの健康に悪影響を与えるストレスの種類と強度について

<<   作成日時 : 2005/07/28 00:15   >>

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ストレッサーとは、人間の身体や精神に影響を与える外部環境からの刺激であり、大切な相手の喪失や生活環境の急変、人間関係の対立などストレスの原因を意味します。
代表的なストレッサーの種類には、温熱、寒冷、痛覚、圧力、光、騒音といった“物理的ストレス”、薬剤、有害化学物質、環境ホルモン、化学合成物といった“化学的ストレッサー”、細菌、ウイルス、カビなどの“生物学的ストレッサー”、人間関係の葛藤や社会的行動に伴う責任や重圧、将来に対する不安、大切な人の喪失体験、経済的困窮などの“精神的ストレッサー”があります。

ストレスとは、ストレッサーの刺激を受けた結果として引き起こされる非特異的な心身の変化であり反応ですから、外部環境(社会生活・家庭生活・学校生活・人間関係)から何らかの刺激を受けなければならない人間がストレスから完全に自由になることは出来ません。
また、適度な強さと持続時間のストレスを絶えず受けることで、私たちは現実認識や感覚機能の正常性を維持していることが特殊な機械を利用した“感覚遮断実験(sensory deprivation experiment)”からわかっています。

その為、全てのストレスを排除した世界では、私たちの精神は現実世界を正確に知覚したり認識することが出来なくなります。
あらゆるストレスを感じないように外部刺激から遮断された環境では、現実感覚が曖昧となって、聞こえないはずの声が聴こえてくる幻聴や実際には見えないはずの光や物体が見える幻覚(幻視)などの症状が出てきます。人によっては誰かに監視されているとか生命を狙われているといった妄想と共に抑えがたい恐怖が湧き上がってくることもあります。

人工的に準備した感覚遮断の状況下に長時間、人間を曝露した実験としてはヘロン(Heron W,1952)が行った感覚遮断実験が有名です。
遮音設計の部屋の中で、被験者にゴーグルをかけて視覚を奪い、手足にも円筒形のカバーをつけて触覚を奪い、室内の温度も体温と同程度に設定すると、ほぼ全ての被験者は何らかの感覚機能鈍麻・知覚機能異常といった症状を呈して緊張・不安・恐怖といった病的な心理状態への変化が見られます。
その精神症状が進行すると、さきほど書いた幻覚や妄想といった精神病に類似した現実吟味能力の障害が見られるようになり、論理的思考能力や計算能力を主体とする知能指数も一時的に低下して、時間感覚や方向感覚の異常といった現象も起きてきます。

但し、そういった精神病症状に似た現実認識能力の著しい低下や幻覚症状が現れるのは、相当に長い時間、感覚を遮断され続けた場合です。
ですから、ごく短時間(1時間程度)の感覚遮断をアイソレーション・タンクなどの実験装置を用いて行うことには、意識や筋肉のリラクゼーションやストレス解消といった好ましい効果も期待できます。

アイソレーション・タンクとは、外部からの光・音・触覚・匂いなどを極力排除するために作られた装置で、フタの着いた水槽のような形状をもったタンク型の装置のことです。
アイソレーション装置の中に、服を脱いで全裸で入り内部に満たされた浮力の高い水の中でぽっかりと浮かんで漂っていることによって、簡単に感覚遮断の状況を体験することが出来るようになっています。
アイソレーション・タンクの短時間の利用であれば、精神的なリラクゼーションや身体疲労の回復効果が実感できたり、気分のリフレッシュ効果や集中力・意欲の増進などの心理効果が期待できます。
また、周辺環境からの刺激による雑念を取り払うという意味での擬似的な瞑想法あるいは内観法として使用することもでき、心理的な弛緩と集中の混合した変性意識状態や無意識領域への接近を比較的容易に引き起こすことが出来ます。


ストレッサーの強度によって、ストレスの状態は変化するのですが、一般にストレッサーの強度がそれほど強くなければ『適度な緊張や覚醒』を生み出し、『注意や興味を惹きつける刺激』となって『意欲や活力の増進』につながる良い影響もあります。
問題は、ストレッサーの性質が有害であって、その強度が過度に強く、その継続時間が長い場合に起こってくる苦痛な緊張や不快な不安を伴う心理反応(感情体験)です。
その緊張や不安が高まりすぎると、不安障害や気分障害(うつ病)をはじめとする種々の苦痛な自律神経失調症を基盤に持つ精神疾患を発症することとなります。

精神的ストレスが介在しない精神障害や心理的問題は存在しませんから、過度なストレスを受け続けることは、摂食障害、家庭内暴力、児童虐待、ギャンブルや薬物に対する依存症、自傷行為といった心理的な障害発症のリスク・ファクター(危険因子)ということが出来ます。

精神障害によって自分自身が苦しみ悶えるだけでなく、情動の不安定や攻撃性の亢進によって他人に迷惑をかけたり、生活環境への不適応によって日常生活を送ることが困難になって社会的経済的な問題が起こってくることもありますから、私たちは絶えず生活環境や対人関係から受ける有害な性質を持つストレスに効果的に対処して健康な心理状態を維持していく必要があります。
人間の身体にはストレスに対抗するための先天的なメカニズムとして、汎適応症候群(GAS)と呼ばれる内分泌や神経活動による全身反応が備わっていますが、それは、物理的ストレスや外敵に対する対処療法的な短期間の防衛反応なので、認知過程と社会活動などが深く関与する精神的ストレスには余り役に立ちません。

(汎適応症候群:脳の視床下部と副腎皮質などの内分泌腺のホルモン分泌や自律神経系の神経伝達活動によって誰にでも起こる一般的な反応で、これによって生物はホメオスタシスを維持し、ストレス刺激に耐えています)

ストレスによる心身への有害な悪影響をどのようにして緩和して対応すれば良いのかというストレス・コーピングについては、また機会を改めて述べてみたいと思います。
ここでは、まず『私たちに不快な緊張や不安を与えるストレス事態にはどんなものがあるのか?そのストレス事態の一般的な悪影響の強度はどれくらいなのか?』という事について説明しようと思います。

孫子の兵法のように『敵を知り己を知れば百戦危うからず』とまではいきませんが、どのような生活状況や対人関係が私たちを悩ませる精神的ストレスとなるのかを理解しておくことは私たちの精神衛生の維持のために必要なことです。
また、どのようなライフイベントや社会活動が私たちに憂鬱や落胆、怒り、悲哀といった不適応な心理反応をもたらすのかを知っていれば、事前にそのストレスに備えて様々な心理的対処や物理的解決の準備をして、心身の自己管理を進めることができます。

ストレスと精神疾患の関係、ストレスと不適応の関連を調査した研究には、アメリカの心理学者ホームズとレイの研究があり、その研究成果は『ホームズ(レイ)の社会適応尺度表』としてまとめられている。



ホームズとレイの社会適応尺度

ライフ・イベントや生活行動や出来事に付けられている点数が大きいほど、一般的に、人間は不快で有害なストレスの影響を受けている。


  • 愛している配偶者の死亡:100

  • 愛情のある配偶者との離婚:73

  • 愛情のある配偶者との別居:65

  • 刑務所に収監・懲役への服務:63

  • 家族の成員の死亡:63

  • 怪我もしくは病気をする:53

  • 結婚:50

  • 失業・解雇:47

  • 不本意な配偶者との関係(より)を戻す:45

  • 退職:45

  • 家族の一員の健康上の変化:44

  • 妊娠:40

  • 性生活上の問題:39

  • 家族の数の増加:39

  • 職業上の変化(職場の異動・配置換え):39

  • 経済上の変化(大金の出費など):38

  • 親友の死亡:37

  • 転職:36

  • 夫婦げんかの頻度の変化:35

  • 1万ドル(100万円)以上の借金:31

  • 物件の抵当流れ:30

  • 職責の変化:29

  • 子どもの自立による孤独:29

  • 配偶者の家族の人とのトラブル:29

  • 目だった業績や表彰:28

  • 配偶者の就職・失業:26

  • 子どもの入学・卒業:26

  • 生活環境の変化:25

  • 嗜癖・習慣の変化(酒・タバコをやめるなど):24

  • 上司とのトラブル:23

  • 勤務時間・条件の変化:20

  • 転居・転校:20

  • レクリエーションの習慣の変化・宗教活動の変化:19

  • 社会生活の変化:18

  • 1万ドル以下の借金:17

  • 睡眠のパターンの変化:16

  • 家族の集会の頻度の変化・食習慣の変化:15

  • 休暇:13

  • クリスマスや正月の季節:12

  • 法律の軽微な違反:11



日本とアメリカの文化的特性や社会慣習、経済構造を考慮する必要があるため、この社会適応尺度を完全にそのまま日本人に適用することは難しいですが、そのストレス状況の内容そのものは誰にでも多かれ少なかれ有害な精神的ストレスとなるものです。

過去一年間に自分に起きた出来事を振り返って、その点数の合計得点が300点以上ならば約80%の確率でその年あるいは翌年に比較的重症の精神症状が出たり、生活環境への不適応の問題が起こったりするとホームズは予期しています。
同様に、200〜299点で50%の確率で心理的問題が起き、150〜199点で37%の確率で心理的問題が起きるという予測が立てられているので、上記されたストレス状況がここ1年の間に立てつづけに起こっている場合などには、適切なストレス・コーピングを行ったり、信頼できる相手との親密なふれあいや気分をリフレッシュする趣味や活動などを通してストレスの悪影響を緩和すると良いでしょう。



■参考文献

生理学的な根拠を持つストレスとその反応としての適応症候群の概念を提示したハンス・セリエの邦訳書を紹介しておきます。
かなり専門的な内容で、心理学領野を超えた医学・生理学に関する研究成果や考察も数多く含まれた専門書ですから、心理臨床に携わる方だけでなく、精神科医や心療内科医などの医師の方にもお薦めできる書籍です。

ストレッサーが生み出す生理学的な影響とそれが持続した結果としての身体疾患や精神障害について興味がある方で、知的好奇心が旺盛な方は一度、目を通して見られると良いと思います。
身体と精神の相互的な関係というのは実に巧妙な適応的なものであると同時に、実に厄介なものであるという思いを深くしました。
人間の心理的問題を解明し克服していくためには、私たちは精神世界を内省するだけでなく身体的メカニズムについても十分に知らなければならないのです。
現代社会とストレス
現代社会とストレス (叢書・ウニベルシタス)

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『ユングの類型的な性格理論』の思考形態と『価値判断のスキーマの複層化』の心理的効果
うつ病など精神運動の抑制を伴う気分障害、不安・恐怖・強迫観念など情緒の制御不能を生じる情緒障害、これらを未然に予防するような認知的技法として、私は『価値判断のスキーマの複層化』を考えています。 『価値判断のスキーマの複層化』というと少し難しい感じがしますが、簡潔な表現に直せば『生きる意欲の根源を一つではなく複数持つこと』ということが出来ます。 ...続きを見る
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