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help リーダーに追加 RSS 多彩な症状を呈する神経症(neurosis)とは何なのか?

<<   作成日時 : 2005/06/11 00:26   >>

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フロイトを始祖とする精神分析の主要な適応症とされた古典的な精神疾患として神経症(neurosis)があるが、神経症とは単一の病態や特定可能な症候群を指示する病名ではなく、多種多様な複数の心因性疾患が寄せ集められた“総合的な病的状態”を意味する用語である。
同じ神経症患者であっても、ある人は立ち上がれなくなり、ある人は声を発する事ができなくなる。また、ある神経症患者は、異常な興奮を示して神経過敏になり攻撃的な性格を示し、ある人は自己顕示的で虚言癖や操作的な振る舞いを特徴とする演技的な人格を示す、そして、ある人は意識水準が低下して離人症や解離性障害のようなリアリティを喪失した心理状態に陥るのである。

神経症の症例を見ていくとこのような感じで、神経症であるという診断だけではその人がどのような症状や悩みを持っているのかを明確に特定することは出来ない。
その為、最近の精神医学界や臨床心理領域では、症状を特定できない神経症という曖昧な診断名を用いる事が殆どなくなり、DSM−Wで定義され分類された客観的な症状記述に基づいた病名を用いることが増えている。

古典的な神経症を定義すれば、『精神的原因による器質的障害を伴わない心身の機能障害』であり、『ヒステリーと呼ばれた人格特徴の異常や不安・抑うつ・衝動性・依存性などを示す情動障害』として定義される。
そして、かつて、精神病と対比された神経症の特徴として『現実認識能力(現実吟味能力)が障害されておらず、現実と空想の混乱を起こすことがない』というものがある。

精神疾患の病態水準の判断で、現実認識能力が障害された比較的重篤な精神疾患である統合失調症や躁鬱病を“精神病”と呼び、それ以外の不安・恐怖・抑うつ・強迫性・ヒステリー・心気症などの比較的軽度な精神疾患を“神経症”と呼ぶ伝統がある。
一般的に、精神病に分類される精神障害は、内因性二大精神病と呼ばれる統合失調症(精神分裂病)と躁鬱病(双極性障害)である。過去には、内因性三大精神病として前述した二つにてんかんを加えていたが現在ではてんかんは脳の機能障害という見方がなされ精神病に分類されないことのほうが多い。

神経症の発症機序(メカニズム)は、ストレス事態の増大など心理的原因によって末梢神経系の自律神経が障害されたり、知覚・運動・情動の精神機能に障害が起きたりすることで発病するというメカニズムだが、環境要因としての心因以外にも、個人の人格要因や性格・気質・素因なども関与している。
“ストレス・生活状況・家庭環境などの環境要因”“性格・気質・遺伝などの個人要因”が相互的に作用し、複雑に干渉し合って、神経症の病態が形成されるというのは、他の精神疾患の症状形成機序とほぼ同一のものである。

複数の精神疾患の症状が寄せ集められた神経症を、現代の精神病理学の分類基準の文脈に置き換えると、“不安障害・身体表現性障害・解離性障害・気分障害・適応障害・自己愛性人格障害・演技性人格障害・境界性人格障害”といった精神障害・人格障害などに相当することになる。
不安障害(anxiety disorder)は、更に、その下位分類である“全般性不安障害(GAD)・パニック障害・広場恐怖症(空間恐怖)・単一恐怖症・社会性不安障害(対人恐怖症)・強迫性障害・心的外傷後ストレス障害(PTSD)・急性ストレス障害”などに分類することが出来る。


以下に、神経症概念に基づく疾患名とDSM−Wの精神障害概念に基づく疾患名の対応関係を掲げておく。


神経症の疾病概念とDSMの疾病概念の対応表











神経症概念に基づく病名DSM−Wに基づく病名
不安神経症全般性不安障害(GAD)
パニック障害
強迫神経症強迫性障害(OCD)
トラウマ関連の精神疾患心的外傷後ストレス障害(PTSD)
急性ストレス障害
恐怖症空間恐怖(広場恐怖)
単一恐怖
社会性不安障害(SAD)
心気症身体表現性障害の下位分類としての心気症
ヒステリー・転換症状
転換ヒステリー
身体表現性障害の下位分類としての転換性障害
ヒステリー・解離症状
解離性ヒステリー
解離性障害(解離性健忘・解離性同一性障害(DID)・解離性遁走)
離人症
離人神経症
解離性障害の下位分類としての離人症性障害
抑うつ神経症うつ病・大うつ病性障害
気分障害



このように神経症概念は、実に多種多様で複雑な精神障害を内部に包摂していますが、その精神症状の典型的な特徴を抽出してみると『不安・恐怖・抑圧・強迫・抑うつ・現実感の低下・麻痺など身体症状』に集約されることになります。
かつて、神経症の標準治療法であった力動的心理学に基づく精神分析は、現在では神経症の症状の緩和に際して、実証的根拠に基づいて行われる認知行動療法よりも改善率が低くなっており、人格特性の歪曲や性格の偏りの修正などを目的とする自己理解の深化や過去の心的外傷の克服に役立てるといった意味合いが強くなっているように思います。

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“正常圏内の不安”と“病理水準の不安”
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