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フロイトを始祖とする精神分析の主要な適応症とされた古典的な精神疾患として神経症(neurosis)があるが、神経症とは単一の病態や特定可能な症候群を指示する病名ではなく、多種多様な複数の心因性疾患が寄せ集められた“総合的な病的状態”を意味する用語である。 同じ神経症患者であっても、ある人は立ち上がれなくなり、ある人は声を発する事ができなくなる。また、ある神経症患者は、異常な興奮を示して神経過敏になり攻撃的な性格を示し、ある人は自己顕示的で虚言癖や操作的な振る舞いを特徴とする演技的な人格を示す、そして、ある人は意識水準が低下して離人症や解離性障害のようなリアリティを喪失した心理状態に陥るのである。 神経症の症例を見ていくとこのような感じで、神経症であるという診断だけではその人がどのような症状や悩みを持っているのかを明確に特定することは出来ない。 その為、最近の精神医学界や臨床心理領域では、症状を特定できない神経症という曖昧な診断名を用いる事が殆どなくなり、DSM−Wで定義され分類された客観的な症状記述に基づいた病名を用いることが増えている。 古典的な神経症を定義すれば、『精神的原因による器質的障害を伴わない心身の機能障害』であり、『ヒステリーと呼ばれた人格特徴の異常や不安・抑うつ・衝動性・依存性などを示す情動障害』として定義される。 そして、かつて、精神病と対比された神経症の特徴として『現実認識能力(現実吟味能力)が障害されておらず、現実と空想の混乱を起こすことがない』というものがある。 精神疾患の病態水準の判断で、現実認識能力が障害された比較的重篤な精神疾患である統合失調症や躁鬱病を“精神病”と呼び、それ以外の不安・恐怖・抑うつ・強迫性・ヒステリー・心気症などの比較的軽度な精神疾患を“神経症”と呼ぶ伝統がある。 一般的に、精神病に分類される精神障害は、内因性二大精神病と呼ばれる統合失調症(精神分裂病)と躁鬱病(双極性障害)である。過去には、内因性三大精神病として前述した二つにてんかんを加えていたが現在ではてんかんは脳の機能障害という見方がなされ精神病に分類されないことのほうが多い。 神経症の発症機序(メカニズム)は、ストレス事態の増大など心理的原因によって末梢神経系の自律神経が障害されたり、知覚・運動・情動の精神機能に障害が起きたりすることで発病するというメカニズムだが、環境要因としての心因以外にも、個人の人格要因や性格・気質・素因なども関与している。 “ストレス・生活状況・家庭環境などの環境要因”と“性格・気質・遺伝などの個人要因”が相互的に作用し、複雑に干渉し合って、神経症の病態が形成されるというのは、他の精神疾患の症状形成機序とほぼ同一のものである。 複数の精神疾患の症状が寄せ集められた神経症を、現代の精神病理学の分類基準の文脈に置き換えると、“不安障害・身体表現性障害・解離性障害・気分障害・適応障害・自己愛性人格障害・演技性人格障害・境界性人格障害”といった精神障害・人格障害などに相当することになる。 不安障害(anxiety disorder)は、更に、その下位分類である“全般性不安障害(GAD)・パニック障害・広場恐怖症(空間恐怖)・単一恐怖症・社会性不安障害(対人恐怖症)・強迫性障害・心的外傷後ストレス障害(PTSD)・急性ストレス障害”などに分類することが出来る。 以下に、神経症概念に基づく疾患名とDSM−Wの精神障害概念に基づく疾患名の対応関係を掲げておく。 神経症の疾病概念とDSMの疾病概念の対応表
このように神経症概念は、実に多種多様で複雑な精神障害を内部に包摂していますが、その精神症状の典型的な特徴を抽出してみると『不安・恐怖・抑圧・強迫・抑うつ・現実感の低下・麻痺など身体症状』に集約されることになります。 かつて、神経症の標準治療法であった力動的心理学に基づく精神分析は、現在では神経症の症状の緩和に際して、実証的根拠に基づいて行われる認知行動療法よりも改善率が低くなっており、人格特性の歪曲や性格の偏りの修正などを目的とする自己理解の深化や過去の心的外傷の克服に役立てるといった意味合いが強くなっているように思います。 |
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“正常圏内の不安”と“病理水準の不安”
フロイトが創始した精神分析療法の主要な適応症とされた神経症(neurosis)は、心因性の精神症状と身体症状を発症する疾患です。 最新の精神病理学のテキストに神経症の表記がなくなり、国際標準の精神障害の診断・統計マニュアルであるDSM−Wからも神経症の分類が消滅しているように、現在では神経症は古典的な名称となってしまった観があります。 ...続きを見る |
カウンセリングルーム:Es Discov... 2005/09/29 08:13 |
リビドー充足と対象関係を欲求する精神分析の普遍的人間観:『ヒステリー研究』に見る時代風潮と基本原則
シグムンド・フロイトが創始した精神分析の治療方略は、『無意識の意識化』による自我の強化にあると言えますが、フロイトが神経症の原因とした無意識の内容とは『過去に抑圧された情動と欲求』であり『幼児期のエディプス・コンプレックスに関連した外傷的記憶』のことです。 ...続きを見る |
カウンセリングルーム:Es Discov... 2006/07/25 09:27 |
ニート(NEET)と発達障害に相関はあるのか?:ニートの定義の曖昧さと発達障害の問題の多様性
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カウンセリングルーム:Es Discov... 2006/08/26 17:28 |
広場恐怖をともなうパニック障害の病理学と過換気症候群の症状との類似性
現実吟味能力が保たれた精神疾患(精神障害)全般に共通する中核的症状として『不安・緊張・抑うつ・恐怖・混乱・強迫性』などがあるが、気分が落ち込み意欲を喪失するうつ病(depression)と並んで発症者数が多いのが不安障害(anxiety disorder)である。うつ病や統合失調症といった精神病と不安障害の不安症状(情緒障害)はオーバーラップ(重複)することが多い。それは、人間の精神の病理性の根本に『未来が現在よりも悪くなるのではないか(未来で何か悪いことが襲いかかってくるのではないか)』... ...続きを見る |
カウンセリングルーム:Es Discov... 2007/04/08 21:47 |
他者の注目と好意を求めるハイテンションな演技性人格障害の特徴と表層的な人間関係
前回の記事では、衝動性・依存性・自己中心性・感情の不安定性などを特徴とするクラスターBの人格障害では『他人から認められたい(愛されたい)という外向的な承認欲求の過剰』があり、内向性・非社交性・妄想性・自閉性などを特徴にするクラスターAの人格障害では『他人と関わりたくないという内向的な不安の過剰』があるという話をしました。クラスターB(B群)には、『境界性・自己愛性・演技性・反社会性』の四つの人格障害が分類されていますが、このうち境界性・自己愛性・反社会性の人格障害については過去記事で詳述し... ...続きを見る |
カウンセリングルーム:Es Discov... 2007/11/04 16:47 |
自己暗示的な神経症症状(自律神経失調)と精神的ストレスへの逃避的適応:古典的神経症における疾病利得
『前回の記事』では、『身体的疲労・精神的ストレス・睡眠不足』によって作業効率や仕事能力が低下する神経衰弱を解説しましたが、19世紀の古典的な精神医学では神経衰弱はノイローゼ(neurosis, 神経症)の下位分類に置かれていました。過去に書いた記事で神経症(neurosis)の定義を、『精神的原因による器質的障害を伴わない心身の機能障害』としましたが、古典的神経症の下位分類で最も代表的なものが多面的な症状・問題を有するヒステリーです。 ...続きを見る |
カウンセリングルーム:Es Discov... 2008/03/24 03:05 |
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