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塩野七生『三つの都の物語』の書評・3:孤高と連帯……自己の帰属する場所と価値を求める人
自由な経済活動によって自国の優雅な繁栄を導いたヴェネツィアは、カトリックのイタリア各国やヨーロッパ諸国とも交易していたし、イスラム教のトルコ帝国とも貿易をしていたが、迫り来るハプスブルク家の君主カルロス5世の猛威の前にどのような方略で自国防衛をすべきかという窮迫した状況下にあった。 ...続きを見る

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2005/05/30 00:43
斎藤昭彦さんの死から考えさせられた事:SOLとQOLから見る人生の重要な選択の倫理判断
イラクでイスラム武装勢力のアンサール・スンナ軍に襲撃され拘束されていた斎藤昭彦さんの死亡がほぼ断定されつつあるというマスメディアの報道を受け、昨日あたりから『斎藤昭彦 イラク』といった検索ワードでのアクセスが増えていますが、私のブログでは斎藤昭彦さんに関する直接的な言及や最新情報を記しているわけではないので、検索エンジンから来た人は、探している情報を得ることは出来なかったのではないかと思います。 また、マスメディア関係者や斎藤昭彦さんと直接関係のある親族や知人でもない限りは、一次情報は得ようが... ...続きを見る

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2005/05/29 11:38
塩野七生『三つの都の物語』の書評・2:16世紀ヴェネツィアと現代日本のデジャヴュ
オスマン・トルコがヨーロッパ世界への浸透を始め、ヴェネツィアの隆盛が頂点から衰退に向かおうとする時代の転換期を舞台にして、『緋色のヴェネツィア』というヴェネツィア貴族の宿命と試練を描いた悲劇が語られる。 生まれながらに対照的な境遇にある美しい二人の貴公子マルコ・ダンドロとアルヴィーゼ・グリッティは、陰謀と政略が渦巻く国際政治の渦中に身を投じる。ダンドロ家の嫡子であるマルコは、名門貴族のエリート路線を順当に歩んで元老院(セナート)議員となり、グリッツィ家の庶子であったアルヴィーゼはトルコに渡って... ...続きを見る

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2005/05/29 08:11
塩野七生『三つの都の物語』の書評・1:独立の岐路に立つ海の都ヴェネツィア共和国
歴史的事実と創作的ロマンスが絶妙な配分で織り込まれた“塩野七生『三つの都の物語』朝日新聞社”を読み、私の精神は暫しの間、人文と芸術の隆盛が頂点に達したルネサンスの余韻を残す16世紀初頭のイタリアを浮遊しました。 『三つの都の物語』は、非常に長大で重厚な大作(547P)であり、文庫本では3冊に分冊されていますが、ハードカバーの単行本では『緋色のヴェネツィア』『銀色のフィレンツェ』『黄金のローマ』という三章に大きく分けられています。 ...続きを見る

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2005/05/25 21:46
うつ病の意欲の減退と動機付けの低下を促す“学習性無力感”の関係:2
意欲や気力、興味関心、爽快感、リラックス感といった好ましい気分と密接な関係にある神経伝達物質として知られているものには、セロトニン(5−HT)やγアミノ酪酸(GABA)、ドーパミン、ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)などがあるが、これらの物質が精神状態と関係しているとする仮説を“脳内モノアミン仮説”といい、向精神薬の薬理作用機序や症状の変化などの経験的事実から帰納推測された仮説である。 その為、脳内モノアミン仮説が客観的な正当性を間違いなく備えたものであるか否かを断定することは出来ないが、薬... ...続きを見る

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2005/05/24 18:49
うつ病の意欲の減退と動機付けの低下を促す“学習性無力感”の関係:1
“心の風邪”とも呼ばれる精神疾患であるうつ病(気分障害)は、確かにその生涯有病率が先進国で概ね10%前後であり、風邪のように比較的ありふれた病気、言い換えれば、誰がいつ罹ってもおかしくない発症頻度の高い精神疾患である。 しかし、精神の風邪の症状の苦痛と疲弊は、身体の風邪の症状の苦痛を遥かに凌駕し、時に、重症化すれば人間の生きる意志そのものを希死念慮の暴威によって根こそぎ奪い取ろうとすることさえある。 ...続きを見る

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2005/05/22 08:16
カウンセリングの有効性に関する効果研究について
科学的な実証性や客観性を重視する心理カウンセラーや臨床心理士であれば、自らの心理療法や理論に関する知識、助言や励ましの効果の多くの部分が自分の行動や実力以外の要素にあることを知っているので、過度な救世主コンプレックスや自己否定感に基づく無力感に悩まされることはないだろう。 心理臨床家は、自信ある態度と寛容な雰囲気を持っていなければならないが、必要以上の誇大妄想的な全能感に捉われてはならないし、権威的な態度と操作的な技法の濫用によって自己満足的なカウンセリングを行うことを回避しなければならない。... ...続きを見る

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2005/05/20 09:34
森博嗣『朽ちる散る落ちる』の書評
森博嗣の小説『朽ちる散る落ちる――Rot off and Drop away』を読んだが、この小説は前作の『六人の超音波科学者』の事件の経緯や人間関係と連続しているミステリーなので、前作を読まずに偶然手にした本書を読んだ事を私は些か後悔したが、本書だけでも物語の大略と事件の顛末を掴む事は出来る。 ...続きを見る

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2005/05/19 01:17
精神疾患と精神障害の概念の移行と精神保健福祉行政:DSM-Wの功罪
医学には、身体の疾患と異常を対象とする“身体医学”、精神の疾患と異常を対象とする“精神医学”があり、その両者を架橋する医療分野として“心身医学”があります。 精神医学では、伝統的に“心の病”の事を総称して“精神疾患(mental disease)”と呼んできましたが、精神疾患の標準的な診断基準マニュアルとして認知されてきているDSM−Wで“精神障害(mental disorder)”の呼称が用いられたこともあって、現在では精神疾患という呼称よりも精神障害という言い方が一般的になってきています。... ...続きを見る

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2005/05/18 01:03
近代における国家主権の変遷:“核の抑止力”への信仰を超えて
イラク戦争の戦後処理とアラブの歴史に関する記事を書いたが、そこから国家主権と軍事力によるパワーバランスについての話を展開してみたい。 民主国家ではない独裁者が専制支配する独裁国家であっても、対外的には不可侵の国家主権を主張でき、国民・領土を他国の攻撃や侵略から防衛する当然の権利があるとするのが、ウェストファリア条約締結(1648年)以後の近代国際社会の前提である。 ...続きを見る

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2005/05/17 17:31
唯一の客観的真理を前提とする“論理実証主義”と現実の多様性の生成を前提とする“社会構成主義”
『臨床心理学の統合的な発展』という記事で、臨床心理学の基本的な3つの研究方法である実験法、調査法、臨床法を挙げて、それぞれの研究法の概説を施した。 理想的な心理カウンセラーやサイコセラピストは、クライアントの心理的な苦悩や症状を緩和し援助する実践家であると同時に、基礎理論を検証する科学者であることが望まれるわけだが、日本では科学的な理論仮説の提示と検証があまり精力的には行われてこなかったという経緯がある。 また、実証的な自然科学を模範とする基礎心理学と実践的な有効性の発揮を目的とする臨床心理... ...続きを見る

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2005/05/16 00:40
臨床心理学の統合的な発展:科学的実証性と臨床的実践性のバランス
欧米の臨床心理学の教育プログラムである『科学者―実践家モデル(scientist-practitioner model)』の流れに影響されて、日本の臨床心理学を『生物―心理―社会(bio-psycho-social)』領域を幅広く網羅する総合的な体系を持つ科学的学問として再構築したいという流れが急速に高まっている。 日本の臨床心理学の発展の歴史を振り返ると、科学的な研究による実証主義の学問というよりは、各学派学閥の理論を臨床活動に応用する心理療法の学問として発展してきたといえる。 ...続きを見る

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2005/05/15 01:16
重松 清『流星ワゴン』の書評:3
しかし、この物語の主人公はやはり飽くまでもカズオであり、カズオと美代子の揺れ動く夫婦関係と理性の制御を打ち崩す性愛感情の悲劇、カズオと広樹の擦れ違う親子関係と広樹の回避的な性格と悲観的な生き方の問題、カズオと父親忠雄の積み重なった誤解と対立の解消こそが『流星ワゴン』の物語のメインストリートである。 ...続きを見る

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2005/05/14 00:13
斉藤昭彦さんの拉致事件:イラク戦争の戦後処理とアラブ民族の紆余曲折の歴史
イラクで再び邦人の斉藤昭彦さんが拉致拘束されて、重症を負って安否が不明という事件報道を受けて、イラク戦争の戦後処理とアラブ民族主義の歴史、国民国家の主権問題などについて簡単に概略をまとめ、幾つかの私見を述べてみようと思う。 ...続きを見る

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2005/05/13 22:36
重松 清『流星ワゴン』の書評:2
どうして――。 予兆など、なにもなかった。我が家はどこにでもある当たり前の家族だったはずだ。平凡で穏やかな日々を続けていたはずだ。僕は美代子を愛していて、美代子も僕を愛していて、それはもちろん新婚時代のような熱く燃え上がるものではなくなっていても、だからこそ織火(おきび)のように、いつまでも我が家の暮らしを温めてくれるのだと思い込んで、信じ込んでいた。 『教えてよ、お父さん』声が震えた。『知ってるんだったら教えてよ。美代子は、なんでこんなところにいるんだ……わからないんだよ……なにも』 ... ...続きを見る

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2005/05/12 06:04
重松 清『流星ワゴン』の書評:1
現代社会における不安定な家族関係と父性の衰退、男女の複雑な感情が取り交わされる恋愛の歓喜と悲哀、過去に戻ってやりなおす事が適わない運命論的な人生のあり方といった様々なテーマが散りばめられた重松清の小説『流星ワゴン』を読みました。 この小説は、信頼していた妻の不倫、優秀だった子どものひきこもりと家庭内暴力、そして、予期せぬリストラに遭って、人生に絶望し死を覚悟した主人公が、死者の親子が運転するワゴンに乗って現在と過去を往還するという幻想的な物語です。 主人公のナガタカズオが、何度も途中で挫折し... ...続きを見る

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2005/05/11 00:10
『男らしさと女らしさ』を巡る論争…ジェンダー問題は何故アポリア(困難)に陥るのか?
“人間の社会的性差(gender)”に基づく精神機能や性格傾向の差異について語る場合には、喧々囂々の議論は沸き起こり難いが、“生物学的性差(sex)”に基づく精神機能や性格傾向の差異について語る場合にはラディカル・フェミニストやジェンダーフリー論者から強い反発や抵抗を受ける恐れがある。 ...続きを見る

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2005/05/10 07:01
『溢れる余剰としてのエロス』を消尽する生の歓喜と充溢:純粋な快楽と贈与の祝祭
エロスとしての愛とは、主体である私が対象であるあなたを求める事であり、愛の充足として対象であるあなたと融合し、愛の関係として対象であるあなたと愛着や興奮を伴う時間を共有する事です。 エロス(異性への愛と憧憬)は、一般に利己的な欲求の充足を含むものですが、真のエロスは、ジョルジュ・バタイユが語る非経済的な享楽的消費の概念“消尽(consumation)”によって特徴付けられます。 ...続きを見る

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2005/05/09 00:15
西洋文明圏の“愛”と東洋文明圏の“慈悲・仁”の差異と統合
過去に、『6種類に分類される恋愛の形態と実質』という記事を書きましたが、人間は文化の変遷や文明の発達に合わせて多種多様な愛の形態を作り上げてきました。 心理学的な分類として典型的なものの原型は、既に古代ギリシア世界において形成されていました。 ...続きを見る

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2005/05/08 00:28
愛情の代理表象としての食物(ミルク)の快楽:魔術的思考や幼児的全能感を超えて現実へ
母親や養育者から与えられる“ミルク(母乳)”は単純に食欲を満たす食物ではなく、ミルクは愛情や保護といった精神的肯定感を象徴するものとして赤ちゃんに受け取られます。 人間の新生児は、他の動物の赤ちゃんと比較しても非常に無力で脆弱な存在であり、養育者の手厚い保護や世話がなければこの世界で生きていくことが不可能な状態にあります。 その為、赤ちゃんにとっての養育者や養育環境は、この世界そのものを代表的に象徴するものであり、この時期に十分なスキンシップや授乳を行い、温かい微笑みや優しい言葉をかけてやる... ...続きを見る

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2005/05/07 06:19
脳の解剖学的構造と生理学的機能:脳と心の相関関係
人間の神経系は、“中枢神経系(脳・脊髄)”と“末梢神経系(自律神経系・体性神経系)”の二つの系によって成り立っていて、脳・脊髄と身体各部は相互的に化学的・電気的な情報伝達をしています。 人間の複雑な精神機能と精妙な生命維持を司る脳器官は、大きく分類して以下の3つの部分から構成されています。 ...続きを見る

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2005/05/06 01:01
リビドー発達論と自己アイデンティティを確立する性格形成の過程
前述した、精神分析のリビドー発達論(性的心理的発達論)の詳細について下に記しておきます。 ...続きを見る

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2005/05/05 10:39
愛する者を獲得する事と愛する者を喪失する事:生理心理学的恋愛論序説
異性に対するロマンティックで情熱的な“エロス”や他者に対する無償の博愛主義に根ざした“アガペー”は、過去の記事で略述したように、『生きる意味と等価にも成り得る無上の幸福や歓喜』を人間にもたらすものとして伝説や詩文、小説で讃美されてきました。 ...続きを見る

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2005/05/03 06:30
リビドーの発達論と性格論:他者との相互的な受容と承認を求める心
精神分析の精神発達理論は、心のエネルギーの仮想的概念である“リビドー”の発達を用いた発達理論であると同時に、リビドーの固着と退行によって性格類型を説明する理論でもあります。精神分析に限らず心理療法理論を提起する目的は、クライアントの人格や行動をより適切に理解して、心理的問題や精神障害の解決を支援することにあります。 ...続きを見る

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2005/05/01 04:58

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